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第5章~創造とエデンと2つの力
68 造船所②
しおりを挟む驚愕の値段を耳にした僕は、予想通りフリーズした――。
「1隻5億か。10隻で50億だな」
「凄い金額……。ジル君達お金持ちですね」
いやいやいやいやいや!
何を冷静に計算しているんだイェルメスさん!そして何を天然発言しているんだロセリーヌさん!
また可笑しな人達が仲間になったもんだ!……って、いけないいけない。今のは失礼極まりない失言だ。とてつもない金額に思わず取り乱してしまった。すいませんロセリーヌさん、イェルメスさん。そんな事決して思っていないです。
それにしても、先の海上ギルドが原因かな?
5億なんて本当にとんでもない金額だけど、ギルドの建設で既に2億以上使っているからか、今まで僕よりフリーズ時間がグッと短縮されたぞ。
しかも自分でなんとか意識を正常に戻せた……。僕も少しばかり成長出来ているみたいだ。
「……よし。ガレオン船は諦めるよう3人を説得しよう」
これがまともな判断だ。5億の船なんて別に必要ないよね。結果お兄さんには冷やかしになってしまって申し訳ないけど、ガレオン船はキッパリ諦めなくちゃ!
「ほう、やはり買うのは諦めたか。だがあの3人が素直に聞くとは思えぬが……?」
「いくらティファーナ達の言い分でもコレは無理です。 ギルドでさえ2億以上掛かっているのに、船1隻でその倍以上なんてとてもとても……。今回ばかりは無理だと、あの3人に今から伝えに行きます!」
何時もは勢いに押されちゃうけど、今回はそうはいかない。僕がはっきりと言うし、幾らティファーナ達だってガレオン船のこの値段を聞けば諦める筈さ。
「お兄さん。申し訳ないけど、ガレオン船の値段をあの3人にも教えてあげてくれないですか?冷やかしの様で悪いですけど、やはりガレオン船は買えそうにありません……。ですが代わりに手頃な値段の船があれば買いたいと思いますので……。ごめんなさい」
「いえいえ、とんでもございません。ではあちらにいるお連れの方達にも、もう1度私からお話しますね。そしてもし宜しければ、我が造船所にはガレオン船以外にも素敵な船がありますので、そのままそちらの案内を致しますよ」
「本当にすいません。ありがとうございます」
全くもう。こんな親切でいい人にまで迷惑を掛けてあの3人は……。
前から好き勝手やり過ぎだと思っていたんだ。お兄さんを冷やかしてしまった分まで、今日は僕がガツンと言ってるからな――!
「それでは、こちらの“契約書”にサインをお願い致します――」
そう言って係りのお兄さんに渡される紙とペン。
僕の目の前に置かれたその紙には、はっきりと“ガレオン船購入契約書”と書かれている――。
「よ~し! 手あたり次第スマイル・ベット受けちゃうんだから!」
「久しぶりにテンション上がるだろうがよコレは。ガレオン船の装備も色々決めねぇとよ」
「さっき係りのお兄さんにカタログ貰ったぞ。 ティファーナとディオルドにも渡しておくゲロ!」
「おお! こんなカタログがあるのかよ。……おい、見ろコレ。オプションで大砲増やせるしマストの本数やデザインもこんな格好良く出来るらしいぜ!」
「ほんとだ! 私いっぱい大砲装備したい!」
「俺はこっちのお洒落なデザインにしたいゲロ!」
――何故だ……??
「そっちも確かにいいな。でも俺はやっぱこっちが好きだ」
「悩むよね!私はこれとこれとこれを組み合わせたのが好きかも」
「へぇ~。船の中にこんなのも造れるゲロか!」
――どうして“こう”なった……??
「船首や帆のデザインは勿論の事、大きさや船の中のインテリアまでオーダーメイド可能です。ご必要とあれば船に使用する木材から、皆様のお好みにカスタマイズ出来ますよ」
「凄ぇな。船の木材から選べるのかよ」
「木材だけでも何種類かあるみたいだけど、何が違うんだケロ?」
「それはですね――」
……一体何故こうなってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ……!!!
♢♦♢
話しは遡る10分前――。
……全くもう。こんな親切でいい人にまで迷惑を掛けてあの3人は……。
前から好き勝手やり過ぎだと思っていたんだ。お兄さんを冷やかしてしまった分まで、今日は僕がガツンと言ってるからな――!
僕がそう決意したこの瞬間から……大どんでん返しという名の物語が始まっていた。
「――おい!ティファーナ、バレン!こっち来てみろよ」
「なになに~?」
「大き過ぎて見切れないケロ」
まるでもう自分の物の様にガレオン船に乗り込んでいたティファーナ、ディオルド、バレンの3人。流石ガレオン船というだけあって物凄く大きい。これは圧巻だ。一般的な船の何十倍もデカい。
こりゃ確かに実物を見てしまったらはしゃぎたくもなる。その気持ちは分かるよ。分かるけどさ……。
「おーい!3人共直ぐに降りてきてよッ!」
「ん?お頭じゃねぇか」
「ジルも早く乗ってみなよ!凄い楽しいよ!」
「そんな事言ってないだろ!いいから先ずこっちに来るんだ3人共!」
珍しく僕は声を張って言い切った。そりゃそうだよ。君達の自由奔放さに、僕は遂に痺れを切らしたんだからね!
「何かジルの様子が可笑しいケロ」
「変な物でも食って腹痛いんじゃねぇか?」
「それでご機嫌斜めなのね」
「無駄話をしない!」
僕がそう言うと、ティファーナ達はきょとんとした表情を浮かべながら下に降りて来た。
「ねぇ、お腹痛いの?ジル」
「また何を訳の分からない事を言い出すんだよティファーナ……。いい?単刀直入に言うけど、ガレオン船は諦めるからね!」
「「……⁉⁉」」
僕の言葉に驚いた3人は、当然の如く直ぐに反論してきた。
「おいおい、何言ってんだよお頭」
「ひょっとして怒ってるケロか……?」
「そうよジル。急にどうしたの?いつもより難しい顔してるし。お腹痛いなら少し休んだ方がいいよ」
「違う!君達に言いたい事は色々あるけど、僕よりもこのお兄さんが今から言う事をよ~~く聞く様に!分かったね!」
「「……」」
全くピンときていない様子のティファーナ達。僕が勢いよく言い切ると、3人は取り敢えず頷きながら、お兄さんの話を聞く事にした。
「お願いしますお兄さん!」
「は、はい……それでは――」
僕のお願いでお兄さんは改めてティファーナ達にガレオン船の話をした。ガレオン船についての簡単な説明は勿論、1番の問題である値段の事までしっかりとね。お兄さんの話を聞けば聞く程、ガレオン船なんて買えない事が分かる。
値段は当然のことながら、そもそもこんなデカい船を管理出来るスペースもなければ、船に何かあった時の為に定期的なメンテナンスや修理が必要にもなる。買って終わりじゃなくてそこから維持費等が更に掛かると言う事だ。小型の船ならまだしも、ガレオン船なんてそれこそ専門の職人さんをギルドで雇わないといけないよ。それぐらい大変だと思うんだきっと。管理や維持をするのにね。
どう?
お兄さんの丁寧な説明で流石に分かったでしょ3人共……。
そこまで無理してする買い物じゃない。
第一、何よりもガレオン船の値段聞いたよね? そもそも根本的にお金が足りないんだかッ……「――で? 結局ジルは何が言いたいの?」
「は……??」
あー、神様。
いるならどうかまた僕を助けて下さい――。
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