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第5章~創造とエデンと2つの力

66 巨大ガレオン船

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♢♦♢

~海上ギルド~

 まさかのリヴァイアサンオチに至った数時間前。

 図らずも、僕の素っ頓狂な叫びによって起きた皆でそのまま朝ご飯を済ませ、海上ギルドなどという凄い偉業を成し遂げたトビオさん達とはここで一旦別れる事になった。

「――トビオさん。それから他の皆さんも……本当にありがとうございました!」
「いいって事よ!」
「また飲もうぜ!」
「ねぇジル、お金稼いでもっと色々建ててもらおうよ。ギルドこ~んな大きくしちゃおう!」

 また何を言い出しているんだ君は。

「ハハハハ。またその時は何時でも声を掛けてくれ。何か困った事があったら直ぐに言ってくれよ、ジル君」
「ありがとうございます!」

 そう言って、トビオさん達は船に乗って帰って行った。

 トビオさん達には本当にお礼しかない。とても言葉だけじゃ言い表せないよ。

 それに、本当はまだまだゆっくりギルドを眺めていたいけど、僕も動かなくちゃな……。海上ギルドは建てて終わりじゃない。寧ろここからが本番なんだから――。

「ねぇ皆……どうしようか?」

 僕の突然の言葉に、誰もピンときていなかった。

「ギルドを建てたら次は当然クエストだと思うんだけど……。その為には新しくギルド申請が必要。つまり、この海上ギルドの“名前”を決めなくちゃ!」

 そう。

 ちゃんとした正式なギルドに認定してもらうにはまず申請が必要だ。ギルドの場所や名前を記載しなくちゃいけないから、兎にも角にも名前を決めなければいきない。

 僕達の大事な家にもなるギルドだからね――。

「そういう事か」
「名前ケロね……」
「はいはーい! “みんな仲良しギルド”っていうのはどう? それか“やるからには勝つぞギルド”!」

 恐ろしいネーミングセンス。

 有無を言わさず満場一致で却下ですティファーナさん。

「この数ヶ月ずっとバタバタしていたもんだから、1番大事なギルドの名前を考えるの忘れていたよ……。それに此処はもう皆のギルドになるから、僕は名前を皆で決めたいんだ。何か案はないかな?」

 単純に忘れていたというのもあるけど、ここが皆のギルドというのは本心だ。僕はその大事な名前を皆で決めたいな。

「いきなりそんな事言われてもな……。皆で決めたいとか言って、ただ決まってねぇだけだろ?俺は別に何でもいいぜ。あ、勿論ティファーナのは有り得ねぇからな」
「ちょっと、なんで私のがダメなのよディオルド!凄い格好いいと思うけど」
「いくらティファーナでも、今のを本気で言ってたとなると恐ろしいゲロよ」
「え~?ねぇジル、バレンまで私の悪口言ってる!」

 それは仕方ない。

「君達はギルドの名前も決めていなかったのか」
「ハハハハ……。ホントですよね。お恥ずかしい」
「素敵な名前が決まるといいですね」
「何言ってるのよ。ここはもうロセリーヌのギルドでもあるんだから案出してよ!イェルメスも!」
「え、ええ……。ん~そうですねぇ……」

 ティファーナの強引な巻き込みによって、ロセリーヌとイェルメスさんも困っている様子。そんな時、僕はある事をふと思った。

「――あ、そういえばロセリーヌさんって……冒険者登録してるんですか?」

 当たり前過ぎて逆に確かめていなかったなそう言えば。

「ううん。実はまだしていなくて……」
「そうだったんですね」
「よし、決めた!」

 ティファーナ、君は取り敢えず静かにしておこうか。

「ギルドの名前決めながら、皆で“王都”に買い物に行こう!」
「「……は?」」

 “決めた”って……名前じゃなくてそっち?

「だって色々必要なもの揃えないといけないし、ロセリーヌの冒険者登録もしなくちゃいけないでしょ?」
「それはそうだけど……」
「でしょ?じゃあ皆で王都にしゅっぱーつ!」

 そう言うと、今までずっと海面から頭を出していたティファーナが勢いよく海から飛び出て来た。勿論プロトイズで人型となってね。

「何回見ても凄いね。ティファーナちゃんのそのプロトイズ」
「確かにな。プロトイズがここまで出来るのも、バースの力ゆえか」

 すっかり見慣れた僕達とは違い、ロセリーヌさんとイェルメスさんはまだティファーナのプロトイズがもの珍しい様子だ。ロセリーヌは勿論だが、イェルメスさんも関心を持つという事は、やはり珍しいものなのだろう。

「ほら。早く行くよ皆!」
「本当に行くのかよ……ったく、しょうがねぇな。まぁどうせ王都まで買い物に行くなら、いっそ“船”でも買うか」
「おお!それはいい考えだなディオルド。折角の海上ギルドなんだから、やっぱ船がないと格好良くないゲロ」
「船……?2人共何言ってるの?船ならあそこにもう何隻かあるじゃないか」

 ここは当たり前に海の上。基本的に本土へ上陸移動手段は船だ。これまた当たり前だが、既にトビオさん達が作業で使っていた3~4人乗りの小型の船が何隻か用意されている。

「またせこい事言ってやがるぜ。お頭はよ……」
「全くだ。これは“そういう問題”じゃないゲロよジル」

 何だ……? 何が言いたい……?

 僕は何か可笑しい事を言っているのか?珍しくディオルドとバレンの息が合っているのだけれど……。

「いいかお頭。正確には、こんな小さい船は船じゃねぇ。お遊びボートだ。俺とバレンが思い描いているのはもっとデカい……男のロマンが詰まった“ガレオン船”さ――!」
「そうゲロ!」

 おいおいおい、ちょっと待て。

 また突拍子もない事を言い始めたぞ。

「ガレオン船って……あのガレオン船だよね?」
「他に何があるんだよ」

 ガレオン船て、貿易やら海賊やらが使っているあの馬鹿デカい船の事だよね⁉ 嬉しそうな顔して何を言い出すかと思えば、君達そんなもの買おうとしてるのか本気で。

 どういう発想なんだ……。

「ガレオン船って何?」
「男のロマンがふんだんに詰まった格好いい巨大な船の事だ」
「え、ちょっと待って。それって人間の人が一杯荷物を運んでいたり、大砲で撃ち合ったりするあの大きな船の事?」
「何だよティファーナ、知ってるじゃねぇか。まさにそれがガレオン船だ」
「凄ーい!私それ海でよく見掛けていたの!絶対私も欲しい!」
「お、話が分かるじゃねぇかよ」

 基本ティファーナは何でもポジティブ思考なんだ。ディオルドの話が分かっているかは別だぞ……。

「元の世界では夢の様な話だったけど、この世界なら現実味しかないゲロ。俺もスコッチ村から何度かデカいガレオン船を見た事があって、絶対に何時かは乗ってみたいと思ってケロよ!」

 いや確かにその気持ちは分からないでもないけどさ……。ガレオン船なんて滅多に乗れないし。

「よーし、じゃあ“1人1隻ずつ”買おうぜ!勿論お頭とロセリーヌとイェルメスの分もな」
「そうしようそうしよう!お金一杯稼いだし」
「ワクワクしてきた。ガレオン船っていくらぐらいなんだろうケロな」
「そんなもん見てから決めりゃいいだろうがよ。兎に角行くぞ野郎共!」
「「おおー!!」」

 一致団結した後、ティファーナ、ディオルド、バレンの3人は電光石火の如きスピードで表へと出て行った――。

「お~い……。ガレオン船なんて本当に買う気なんですか~……?」

 零れる様に出た僕の魂の囁きは、当然あの3人に届いていなかった。

「なにか凄い話になってきましたね」
「ハハハ。若者の武器は勢いだ。出来る事は出来るうちにやっておいた方がいい。何でも経験が大事さ。まぁ、ガレオン船なんて安くても“億”はするがな確か――」


 億……。

 これはまたとんでもない買い物になりそうだ……。



 こうして、僕達は必要(?)な買い物と、ロセリーヌさんの冒険者登録をするべく1度王都へと向かった――。

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