【魔力商人】の僕は異世界を商売繫盛で成り上がる~追放で海に捨てられた為、海上ギルド建てたら実力も売上も波に乗って異世界最強に~

きょろ

文字の大きさ
上 下
67 / 70
第5章~創造とエデンと2つの力

65 歴史は繰り返す(オチ)

しおりを挟む
♢♦♢

~海上ギルド~

 昨夜は大いに盛り上がった。

 海上ギルドが完成した事は勿論、ずっと知りたかったこの力の事も知れたし、何よりロセリーヌさんやイェルメスさんまでもが覚醒するとは誰も思わなかったからね。

 昨日の今日でまだギルド自体をしっかり見ていないけど、一般的なギルドの何十倍と言う広さだ。3階建てで高さもあるが、ここからでもスコッチ村や海を一望できる様に更に高い見張り台まである。

 朝焼けに照らされ海面がキラキラと反射し、心地よい潮風と静かな波の音が聞こえる。

「ぐがぁー……ごがぁー……!」
「……もう飲めないって!……むにゃむにゃ」

 それと、あちこちで寝ている皆の寝言やいびきもね。

 色々と興奮してアドレナリンが出ていたのか、朝早く目覚めた僕は皆を起こさない様静かにギルドを見て回っているところ。

 ギルドに見張り台、それから横には船などを置いておく大きな小屋も完備されている。そしてその全てを繋ぐ足場。海面から1m程の高さに設置された木の通路を歩いていると、まるで海の上を散歩しているかの様な気分になる。

 トビオさん達には本当に素晴らしいギルドを造ってもらった。

「――あ、おはようイェルメスさん。起きていたんですね?」
「ああ、おはよう。歳よりは目覚めが早くてな」
「全然歳には見えないんですけどね……怖いぐらいに」
「ハハハ。見た目以上に体は正直だからな。君も後30年もすれば分かるだろう」

 僕は何気なく、昨夜の話の続きをした。

「それにしても……昨夜は驚きましたねイェルメスさん」
「全くだ。出来れば返したいぐらいだよ。この力をね」
「アハハハ……何かすいません本当に……」
「君が謝る事じゃない。人生と言うのはなるべくしてなるもの。全てが自然と言うなの運命に導かれているものさ」
「僕は何十年経ったらそんな事が言える様になるんだろう……」
「まぁこれは私の“元仲間”の受け売りだがね」
「それってひょっとしてシスターですか?」
「ハハハ。想像に任せるよ」

 昨夜のバタバタが嘘みたいに、時間の流れがゆっくりに感じるなぁ。僕もこの余裕さを身に着けたいよ。いつも自分の感情に疲れちゃう。

「ところでイェルメスさん。朝からこんな話で申し訳ないんですが、昨夜のバースとロストの話……あれで1つ気になったことがあって」
「構わんよ。何だい?」
「あの、確か第一次を治めた人がバースとロストの力を合わせた……つまり、エデンの力によって封じ込めたんですよね?今の形に。
それって結局は、バースとロストの2つの力は、エデンの力や他の方法でも消滅させれないって事なんですか?」
「んー……その答えは難しい。何度も言うが、幾ら私でも全てを知る訳ではないからね。でも、彼がエデンの力を以てしても、2つの力を消滅させられないと感じたからこそ今の形に封じ込めた。
だがやはり2つの力を封じ込めるだけでは、根本的な解決にはなっていない。何百年単位とはいえ、大魔戦が起きているのは事実だからな」

 やっぱり“そこ”だよね問題は。

 昨日話を聞いた後に1度ゆっくり自分でも考えてみたんだけど、エデンの力で無理ならどうすればいいんだろう?

 このままだと遅かれ早かれ、何時かの時代で必ず起こってしまうんだ。これから先の未来でも。

「これはあくまで私の推測でしかないが……バースとロストは元々、アダムスとイブリアが口にした不老不死の実が
始まり。
もしかすると、2つの力を完全に消滅させる事は不可能でも、その2つの力を再び1つにし、エデンの力でまた不老不死の実として元に戻す事は出来るのかも知れない――」
「本当ですか……⁉」
「勿論何の根拠もない。奇跡的な可能性の話さ」

 イェルメスさんの推測は一理ある……。完全に無くす事が出来ないなら、その不老不死の実とかいう最初の形に力を戻せるんじゃないだろうか?

 全ての始まりはアダムスとイブリアが実を口にしてしまった事。話を聞いた限り、それまでは争いなんて起きていなかったんだから。

「その実を口にするまでは争いなんてなかった。ダメ元で試してみる価値は十分あると思います僕は」
「そうか。でもまぁ他にも方法があるかもしれない。私もダメ元で調べてみるつもりさ」

 イェルメスさんがダメ元でって事は、それだけ情報や手掛かりがない未知の領域なんだねやっぱ。

 もうなるようにしかならない感じだけど、せめてロストの力を持った人が滅茶苦茶良い人であります様に。最早そう祈るしかない。後でロセリーヌさんに祈りの基本を教えてもらおう……。

「でも、何故そのアダムスとイブリアは実を口にしたのかな?」
「ハハハ。それも確かな事は言えん。軽い気持ちで口にしたのか、興味や好奇心か。はたまた神へのちょっとした出来心なのか。それは分からぬ。人の気持ちなど本人にしか分からぬからな結局は」
「まぁそうですよね」
「ただ語り継がれている神話では……不老不死の実を口にする様、“そそのかした者”がいたとも言われている――」
「そそのかした……? 一体誰が?」
「“ルルサタン”と呼ばれる聖霊だ。神カオスは人間以外にも多くの種族を創造したが、聖霊もその1つ。聖霊達は異世界ファーストを見守る神カオスの代わりの存在として生み出されたとされている。
しかし、ある日その聖霊のうちの1体であるルルサタンが、聖霊族の住む天界から出て行った。自らの意志なのか追放されたのかも定かではないが、天界から出たルルサタンは地上へと降り、アダムスとイブリアに接触した。

ルルサタンは不老不死の実の事を当然知っていただろう。
その上で、ルルサタンはアダムスとイブリアをそそのかし、実を口にさせたと言われている。疑う事などしない、純粋なアダムスとイブリアを欺いた始まりとも言える事かもな」

 そんな事があったのか……。

 とても想像出来ない遠い昔の話の筈なのに、何故だかアダムスやイブリアやルルサタンの存在に親近感みたいなものを抱く。きっとそれは、今の僕達の時代でも根本が同じだからかな。

「何か切ない話ですよね……。アダムスとイブリアは、争いなど想像もしていなかっただろうし」
「そうだな。ルルサタンは2人を欺く為、人の姿ではなく“蛇”に変化したとも言われている。これは余談だがな」
「何故蛇に……?」
「ハハハ。そこに大した理由はないだろう。アダムスとイブリアは動物ととても仲が良かったとされているからな。恐らくそれを利用したのかもしれない」
「悪い奴ですねルルサタンは。だから聖霊達に追い出されたんですよきっと」
「分からんぞ。逆にルルサタンも聖霊達に裏切られたりした可能性もある。憎しみは憎しみしか生まぬからな」
「まぁその可能性もありますね……」
「ルルサタンはその後も人間の対立に加担したと言われているからな。それに人間以外にも獣人族や妖精族や様々なモンスター達の間でも、争いの火種を生んだらしい。結果それが現代の姿だな」
「歴史は繰り返されるって事ですね……結局」
「ネガティブに捉えるな。平和を築けばそれもまた繰り返され、当たり前となっていく。それが1番大事だ」
「そうですね」

 その通りだな。後ろばかり見ず、先ずは前にある道を着実に進んで行こう。平和な世界の為に――。

 イェルメスさんと話して、何か気持ちが軽くなったな。

「ああ、そう言えば蛇で思い出した。これは話に関係ないかなりの余談だが……ルルサタンが蛇に姿を変えた後、奴の存在もまた何千万年と生まれ変わり、それが現代では“リヴァイアサン”とされているという説もあるらしい」

 なッ……⁉⁉

「冒険者なら勿論知っているだろう? この異世海に存在する筈だから、何時か出くわすかもな。ハハハハ」
「な、何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」


 
 まさかのオチ。

 何の因果か、驚き過ぎて物凄い声を出してしまった。

 この僕の叫びにより、寝ていた皆が起きたのは言うまでもない――。
 
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

不遇スキルの錬金術師、辺境を開拓する 貴族の三男に転生したので、追い出されないように領地経営してみた

つちねこ
ファンタジー
【4巻まで発売中】 貴族の三男であるクロウ・エルドラドにとって、スキルはとても重要なものである。優秀な家系であるエルドラド家において、四大属性スキルを得ることは必須事項であった。 しかしながら、手に入れたのは不遇スキルと名高い錬金術スキルだった。 残念スキルを授かったクロウは、貴族としての生き方は難しいと判断され、辺境の地を開拓するように命じられてしまう。 ところがクロウの授かったスキルは、領地開拓に向いているようで、あっという間に村から都市へと変革してしまう。 これは辺境の地を過剰防衛ともいえる城郭都市に作り変え、数多の特産物を作り、領地経営の父としてその名を歴史轟かすことになるクロウ・エルドラドの物語である。

処理中です...