上 下
65 / 70
第5章~創造とエデンと2つの力

63 有名な握手商人

しおりを挟む
 これまたイェルメスさんの言う通り、見た目の割に賢いんだよディオルドは。

「だろ? だったらわざわざ探しす必要はねぇ。そのうち自然と引き寄せ合うさ。寧ろもう動き出してるだろ。どっちかって言うと」
「そうですね。ディオルド君ッ……じゃなかったですね、ディオルドの言う通り、互いが引き合う運命にあるのでしたら、それは神様がきっと導いてくれています」

 ディオルドは兎も角、ロセリーヌさんの言葉はとても素敵だなぁ。同じニュアンスの事を言っているのに、伝わる有難みが全然違う。やはり次のシスターになる聖女は違うな~。

「彼らの言う事は一理あるぞジル。もしロストの力を持つ者が我々の様に争う事を望んでいないのならば、その時は何時か自然と平和に引かれ合う事だろう。だが、もし相手が君の力を狙っているとするならば……考え得る限り結果は最悪な形となるかもしれないな」
「そんな……。最悪な結果って、やっぱり第四次世界大魔戦が起きちゃうって事だよね……?ダメダメ! そんなの絶対にダメだよ!」

 無駄な争いなんて絶対に起こしちゃダメだ。

「そうだな。多くの者が争いなど望んでいない。しかし最悪という可能性がある以上、君達に出来る事はもう決まっている。そうだろディオルドや」
「ああ。俺らが探すのはロストを持つ奴じゃねぇ。お頭のその力を与えられる対象者……つまり、残りの“6人”を探し出すんだ」
「残りの対象者を……⁉」
「そうだ。どの道ロストを持つ奴も対象者って奴らも手掛かりなんてないだろ?イェルメス」
「あればもう教えているさ」
「ほらな。だったら俺らは先ず対象者を探すべきだろうがよ。最も最悪な展開を見越してな。もう既にロストの奴は動き出しているかもしれない。お頭の様に力も覚醒して、俺らよりも対象者をみつけているかもな。1番最悪なのは大魔戦が起こる事じゃない。
本当の終わりは、俺らよりも奴らの方が強かった場合だ。そうなったらもう何も出来ねぇ」

 言われてみれば確かにそうだよね……。

 今までは何も分からずに過ごしてきたけど、僕達の知らない所でもう動き出してるかもしれないんだ。

「うん。そうだねディオルド……。向こうの情報が一切分からない以上、今の僕達に出来る事はそれしかない。万が一に備えて“仲間”を見つけなくちゃ。ロストの力が強大であったとしても、僕達がそれ以上に強ければ止められるし守れる」
「そう言う事。やっと上を向き始めたな。何時も遅ぇんだよお頭は」
「ハハハ、迷惑をお掛けしてますホント……」
「じゃあジルさ、ロセリーヌと手繋いでみてよ!」

 衝撃的なティファーナの登場。

 まずは冷静になろう……よし。

「また突然何を言い出すんだよ君は」
「だって私達みたいな仲間探すんでしょ? だったら早く手繋いでよ。紋章出るかもしれないじゃん!」
「成程ね……」

 確かにティファーナ達も皆握手でその力が発生したけど、正直確率はかなり低い。初めてティファーナに魔力を渡せた時から散々試した結果がディオルドとバレンだ。

 因みに、僕は君達がクエストに行ってる間にも、色んな人と握手をして試している。挨拶代わりにね。お陰ですっかり“握手商人”として巷では有名になっているらしい。

 ギルドの受付の人がそう言っていたからね。

 それにバレンの時は直接触れなくても、この力が発動した……。

「誰これ構わず手を繋いだからと言ってこの力は覚醒されん。ジル本人が1番分かっているだろうがな。寧ろもう3人も対象者が見つかっている事自体奇跡に近い」
「やっぱりそうなんですね」
「そう言えばよ、この力の“真の力”を解放するには10人必要って言っていたが、そもそもこの魔力を与えるっていうのがお頭の持つバースの力じゃねぇのか?」
「ああ。私も見た事が無いからそうだとは言い切れぬが、どうやらバースの真の力と言うのは魔力を与える事が出来るのは勿論の事、バースの力を宿す“本人”も使える様になる――」

 僕もこの魔力を……?

「今はジル本人に特別な魔力は無く、たまたま対象者と握手をした時にバースの力が覚醒されている様だが……本来はバースの力を持つ本人に凄まじい魔力が備わる。対象者に与えている魔力など氷山の一角に過ぎないぐらいだろう」
「え⁉ そ、そんなに凄い魔力が……⁉ この力に……⁉」
「これだけの魔力が氷山の一角とは末恐ろしいゲロ」
「そりゃ世界規模の戦争が起こる訳だ。手にした奴によって簡単に世界がひっくり返るじゃねぇかよ」

 やっぱ危ない力だなコレ。 まぁ仮にそれだけの魔力があっても僕にとっては宝の持ち腐れだけどね。

「ビビッてんじゃねぇよお頭。バースがそれだけの力って事は、当然ロストも同等だ」
「その通り。ジルのバースと対照的に、ロストは魔力を奪う力。本来のロストの力であれば、本人は奪えば奪った分だけ魔力を自分のものに出来る。
恐らく、今は対象者にその力の一部が覚醒されているだろう。君達の様にな。力の効果は全く別物だが」

 そうか。僕が皆に魔力を与えているのとは逆に、ロストは対象者達が魔力を奪うって事だね。どちらも使い方によっては本当に危険な力だ……。

「へぇ。じゃあ10人揃えばお頭はほぼ無限の魔力を手にする最強商人となるが、それはまた向こう然り。相手は無限に魔力を奪える最強盗人って感じか」
「最強盗人はまだ強そうだけど、ジルの最強商人は多分弱いゲロよ」
「ハッハッハッハッ!確かにな」

 弱いのは自覚しているけどさ……そんなに笑わなくても……。

「だ・か・ら! そんな事より早くロセリーヌと手繋いでよジル!」

 おっと。そう言えばずっとそんな事を言っていたね君は。まぁ結果はどうであれ僕もロセリーヌさんと手は繋いでみたいけど。

「手を繋ぐとその対象者というのが分かるんですよね……?」
「そうだよ。だからやってみてロセリーヌ」
「聞いてなかったのかよティファーナ。そんな簡単に見つからねぇんだこれは。まぁ、お頭はそんな事関係なく手は繋ぎたいって顔してるけどな」

 なッ、何を言い出すんだディオルド……!

 まずい。また感情が分かりやすく顔に出てしまっていたか。でも確かにロセリーヌさんと手を繋いでみたい。

 自分の煩悩に嫌気が差す。

 この変態商人め――。
 
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

処理中です...