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第5章~創造とエデンと2つの力
59 歴史は繰り返す①
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辺りはすっかり夜が更けだが、海の上の宴会はまだまだ盛り上がりが消えない。
「ジル。君のその力について、私の知る事を全て教えようか」
「ぜ、是非教えて下さい! 僕のこの力は何なんでしょう……」
「君自身気になる事が多々あるだろう。私の話によって更に不安や困惑も生まれるかもしれぬ。そして長い話になるだろうが、先ずは私の話を全て聞いてくれるかな?」
「はい……分かりました」
僕がそう返事をすると、暗い海にポツンと光眩く海上ギルドにてイェルメスさんが静かに語り始めた。
「――我々が暮らすこの異世界『ファースト』には、魔力という当たり前の文明が存在する。空や大地、草木や風や空気の様に当たり前にな。その全ての魔力の源であるのが……“世界樹セフィドラ”。誰もが知る神の樹だ。
魔力はセフィドラの樹によって生まれセフィドラの樹に還ると語り継がれ、その樹にはファーストを創造したという神、“カオス”が宿るとも言われている――。
神カオスは星を造り世界樹を植え、魔力、空、大地、山、天使、精霊、モンスター、動物……そして人間といった数多くの生命を誕生させた。
その中でも、我々人間の始まりともされる始祖、“アダムス・バース”と“イブリア・ロスト”は、今でこそ全生命に存在する当たり前の魔力を最初にその身に宿したとされている。
カオスが世界樹セフィドラを植えた時、樹には食べると“不老不死”になれるという1つの実が生っていたらしいのだが、カオスはアダムスとイブリアの2人に、この実は断じて口にしてはならぬと忠告していたのだが、2人はある日その実を口にしてしまった。
アダムスとイブリアはその実を口にした事によって魔力を宿した。
だが、その魔力はあまりに強大な力だった故、口にしたアダムスは両目を、イブリアは両足を失った。更に2人の身体には焼ける様な熱さと刺される様な激痛が三日三晩続いたと言う……。
神カオスの言いつけを破った2人への罪と罰。その後2人を襲っていた痛みは消え、それぞれ両目と両足は戻らなかったものの、今までの通りの生活を続け子も13人生んだとされている。人間の歴史はこれが始まりだそうだ。
アダムスとイブリアが宿した魔力もまた子から子へと引き継がれ、今の当たり前の魔力文明を生んだのだ。
2人が実を口にし激痛に耐えた日から幾日か過ぎた頃、アダムスとイブリアは自身に宿された魔力の力というものに気付く事になった。
その力とは……アダムスは“魔力を生み出し”、イブリアは“魔力を奪う”という対照的な力。
アダムスとイブリアの2人は始まりの人間。つまりそんな力に興味も関心なければ争い等とは程遠い思想であったが、その時には既に子孫が繫栄し続け50人近くの人間が存在していたと言う。そして何時どんな時代であったとしても、人間というものが存在する限りそこに争いは必ず生じる――。
アダムスとイブリアが幾ら平和な思想を抱いていようと、悲しい事にその思想までもが完璧に受け継がれるなど不可能。2人の思いとは裏腹に、アダムスとイブリアの力が他よりも強力で珍しいものだと理解しだした者が、それを奪おうと動き出した。
やがてその小さな動きが争いとなり瞬く間広がった。それによって遂に1つの命が奪われる事となり、悲しみを抱いたアダムスとイブリアは自らその命を絶った。これ以上自分達の力などを奪い合わない為に、そしてこの争いを鎮める為にとな……。
そして2人の死によって何とか争いが収まったのも束の間。程なくして、ある者が世界樹セフィドラに生っていた実を見つけた。
アダムスとイブリアが口にした不老不死の実以外何も生っていなかった筈のその樹に、何故か突然“2つの実”が生まれていたのだ。
偶然にも樹の実を見つけた者は、その2つの実からはそれぞれアダムスとイブリアと同じ魔力を感知したらしい。“まさか”と思ったその者は2つの実を取り隠し、そこから何年か経った後に自らの子供達に実を食べさせた。
すると驚いた事に、実を口にした子供達はアダムスとイブリアの力を受け継いだ――。
1人は魔力を生み出す力。もう1人は魔力を奪う力。
それが事の発端となりまた人間達は争い、奪い合った……。
誰かが力をてにしては支配を企み、力のない者達は従うのみ。現状を変えようと勇敢な行動を起こせばそこがまた争いの始まりとなる。
生まれては終わり……また生まれては終わっていく。
争いなど得るものより失うものの方がとてつもなく大きい。無情な争いがどれ程辛く悲しいものかと十分知りながらも、人間は再び争いという歴史を繰り返してしまうのだ。
奪おうとするものや手にしたいと思うものの力や存在が大きければ大きい程、闇も大きく深くなる。
奇しくも、アダムスとイブリアの力はとても強力で大きな存在だった。手にする者によっては世界を揺がしてしまう程にな。
2人の力はどちらか片方だけでも強大であったが、“2つ揃う”とそれは凄まじい力になると語られている――。
余りに強大な力故に、その力を“神の魔力”と呼ぶ者達もいた。
ファーストの歴史の中では第三次世界大魔戦と呼ばれる世界を揺るがす大魔戦が3度起きているが、その引き金となったのが、このアダムスとイブリアの力なのだ。
「ジル。君のその力について、私の知る事を全て教えようか」
「ぜ、是非教えて下さい! 僕のこの力は何なんでしょう……」
「君自身気になる事が多々あるだろう。私の話によって更に不安や困惑も生まれるかもしれぬ。そして長い話になるだろうが、先ずは私の話を全て聞いてくれるかな?」
「はい……分かりました」
僕がそう返事をすると、暗い海にポツンと光眩く海上ギルドにてイェルメスさんが静かに語り始めた。
「――我々が暮らすこの異世界『ファースト』には、魔力という当たり前の文明が存在する。空や大地、草木や風や空気の様に当たり前にな。その全ての魔力の源であるのが……“世界樹セフィドラ”。誰もが知る神の樹だ。
魔力はセフィドラの樹によって生まれセフィドラの樹に還ると語り継がれ、その樹にはファーストを創造したという神、“カオス”が宿るとも言われている――。
神カオスは星を造り世界樹を植え、魔力、空、大地、山、天使、精霊、モンスター、動物……そして人間といった数多くの生命を誕生させた。
その中でも、我々人間の始まりともされる始祖、“アダムス・バース”と“イブリア・ロスト”は、今でこそ全生命に存在する当たり前の魔力を最初にその身に宿したとされている。
カオスが世界樹セフィドラを植えた時、樹には食べると“不老不死”になれるという1つの実が生っていたらしいのだが、カオスはアダムスとイブリアの2人に、この実は断じて口にしてはならぬと忠告していたのだが、2人はある日その実を口にしてしまった。
アダムスとイブリアはその実を口にした事によって魔力を宿した。
だが、その魔力はあまりに強大な力だった故、口にしたアダムスは両目を、イブリアは両足を失った。更に2人の身体には焼ける様な熱さと刺される様な激痛が三日三晩続いたと言う……。
神カオスの言いつけを破った2人への罪と罰。その後2人を襲っていた痛みは消え、それぞれ両目と両足は戻らなかったものの、今までの通りの生活を続け子も13人生んだとされている。人間の歴史はこれが始まりだそうだ。
アダムスとイブリアが宿した魔力もまた子から子へと引き継がれ、今の当たり前の魔力文明を生んだのだ。
2人が実を口にし激痛に耐えた日から幾日か過ぎた頃、アダムスとイブリアは自身に宿された魔力の力というものに気付く事になった。
その力とは……アダムスは“魔力を生み出し”、イブリアは“魔力を奪う”という対照的な力。
アダムスとイブリアの2人は始まりの人間。つまりそんな力に興味も関心なければ争い等とは程遠い思想であったが、その時には既に子孫が繫栄し続け50人近くの人間が存在していたと言う。そして何時どんな時代であったとしても、人間というものが存在する限りそこに争いは必ず生じる――。
アダムスとイブリアが幾ら平和な思想を抱いていようと、悲しい事にその思想までもが完璧に受け継がれるなど不可能。2人の思いとは裏腹に、アダムスとイブリアの力が他よりも強力で珍しいものだと理解しだした者が、それを奪おうと動き出した。
やがてその小さな動きが争いとなり瞬く間広がった。それによって遂に1つの命が奪われる事となり、悲しみを抱いたアダムスとイブリアは自らその命を絶った。これ以上自分達の力などを奪い合わない為に、そしてこの争いを鎮める為にとな……。
そして2人の死によって何とか争いが収まったのも束の間。程なくして、ある者が世界樹セフィドラに生っていた実を見つけた。
アダムスとイブリアが口にした不老不死の実以外何も生っていなかった筈のその樹に、何故か突然“2つの実”が生まれていたのだ。
偶然にも樹の実を見つけた者は、その2つの実からはそれぞれアダムスとイブリアと同じ魔力を感知したらしい。“まさか”と思ったその者は2つの実を取り隠し、そこから何年か経った後に自らの子供達に実を食べさせた。
すると驚いた事に、実を口にした子供達はアダムスとイブリアの力を受け継いだ――。
1人は魔力を生み出す力。もう1人は魔力を奪う力。
それが事の発端となりまた人間達は争い、奪い合った……。
誰かが力をてにしては支配を企み、力のない者達は従うのみ。現状を変えようと勇敢な行動を起こせばそこがまた争いの始まりとなる。
生まれては終わり……また生まれては終わっていく。
争いなど得るものより失うものの方がとてつもなく大きい。無情な争いがどれ程辛く悲しいものかと十分知りながらも、人間は再び争いという歴史を繰り返してしまうのだ。
奪おうとするものや手にしたいと思うものの力や存在が大きければ大きい程、闇も大きく深くなる。
奇しくも、アダムスとイブリアの力はとても強力で大きな存在だった。手にする者によっては世界を揺がしてしまう程にな。
2人の力はどちらか片方だけでも強大であったが、“2つ揃う”とそれは凄まじい力になると語られている――。
余りに強大な力故に、その力を“神の魔力”と呼ぶ者達もいた。
ファーストの歴史の中では第三次世界大魔戦と呼ばれる世界を揺るがす大魔戦が3度起きているが、その引き金となったのが、このアダムスとイブリアの力なのだ。
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