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第4章~賢者と聖女と新たな門出~
53 目に見えない力
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「ロセリーヌとエンビアが……?」
「それならシンプルでいいわね!」
「でも一体どうやって決めるのかしら?」
「何でもいいわよ。どうせエンビアが勝つんだから!」
数秒の静寂の後、また大聖堂は騒がしくなった。
「よーし! 援護は任せてロセリーヌ!」
「何だ? 皆で大乱闘か?」
「どういう解釈したらそうなるんだゲロよ」
全くバレンの言う通りだよ。
頼むから君達は余計に話をややこしくしないでくれ。お願いだ。
「いいかい? 勝負は正真正銘1度きり。初めに言っておくが、結果がどうなろうと誰の文句も受け付けない。勝った方が次期シスターとなる! 分かったかいアンタ達!」
聖堂内は一気に盛り上がりに包まれた。
「そ、そんな……シスター。待ってく下さいッ……!」
「いい加減にしなよロセリーヌ! シスターが決めたんだ。もうここでハッキリさせようじゃない。私には願ったり叶ったりの展開よ。見てなさいロセリーヌ!アンタは実力も無いのにただ贔屓されていただけって事を分からせてやるわッ!アハハハハ!」
「エンビア……」
エンビアは相当自信がある様に見える。それに引き換え、ロセリーヌさんはまだ決心がついていないみたいだ。元々そういう性格じゃないというのもあるけど、やっぱり何だか可哀想だな。
でもコレはもう遅かれ早かれハッキリさせなければいけない事なんだ。聖女の皆にとっても。僕達は部外者で、応援する事しか出来ないと思うけど……どうか頑張って下さいロセリーヌさん。
「――それじゃあ早速始めるとしようかね」
「そうね、早く始めましょうシスター! それで? 一体どういう勝負で決めるつもりかしら?」
「焦るんじゃないよエンビア。それに、勝負は“もう既に”始まっている――」
――ゴゴゴゴゴゴッ……!
「「……⁉」」
何だ……⁉
大地が揺れる様な地響き。僕の気のせいではない。皆が今のを感じている。
「あのバアさん“何しやがった”?」
「とんでもない“魔力”ケロ……」
僕は直ぐに理解出来なかった。ディオルドとバレンが言っている事を……。
「ルールは至ってシンプル。アンタ達は紛れもない聖女……。ならばその祈りで、“奴”を封じな! 見事鎮めた方がこの勝負の勝者だよ!」
シスターはそう言いながら大聖堂の天窓を指差した。
「「……⁉⁉」」
その場にいた聖女達全員が言葉を失った。それはまた僕も同様。だって、今自分が見ているものが信じられないい……。
何で……?
一体何であんなものが……⁉
天窓から見えたのは、メイリーン山とその半分程の大きさを誇っている、超大型の巨人モンスターが聳え立っていた――。
「奴の名は『ギガノキア』古から伝わる伝説の巨人族。……さぁ、早く奴を止めな。さもなければ山は疎か、この街も人々も全員死ぬよ」
ギガノキアだって……⁉ 書物とかによく出てくるあの伝説のッ⁉ 噓でしょ⁉
『ヴバァァァァァァァァッ!!』
「「……⁉⁉」」
ヤバいヤバいヤバいヤバい。 絶対ヤバいってコレは!
「ちょ、ちょっとシスター! アレ本物ですかッ⁉」
「当たり前だろう」
何をそんな涼しい顔して言ってるんだこの人……!
「でけぇなぁ。巨人族ってあんなにデカかったか?」
「すっごーい! 私こんな大きい巨人族初めて見たよ!」
「コイツはまた異質な存在じゃないか……? 前に巨人族に会った事あるけど、全然違うゲロよ……」
「アッハッハッハッ! 当たり前さねカエルの坊や。アレは“厄災”とまで言われる伝説の巨人だからねぇ」
圧巻。
もうその言葉に尽きる。
隣のアイリーン山が既に物凄いデカさなのに、幾らその半分ぐらいと言ってもそれはもうとんでもない大きさ。
「無理無理無理。ギガノキアなんて人が相手にする存在じゃない……! 勝負どころじゃないですよシスターッ!」
「大丈夫だよジル坊、落ち着きな」
「いやいや!落ち着いてる場合じゃないでしょこれ!街が破壊されちゃいますって……!っていうかアレ何処からどうやって出したんですかッ⁉」
「アッハッハッ。それは直ぐに分るよ。それよりも……ロセリーヌ!エンビア!何をしているんだい? さっさとギガノキアを止めな」
シスターが2人に声を掛けたが、ロセリーヌさんもエンビアもギガノキアを見つめたまま動けずにいた。
「止めるって言ったって……。無理に決まってるじゃない……あんなの……」
「やる気がないのか、それとも皆で仲良く死にたいのかい? 弱音じゃ止められないよ。何時もの自信はどうしたんだいエンビアよ」
どうやら偽物でも冗談でもない。こんな会話をしている間にも、ゆっくりとギガノキアがここロマン街に進行している。固まっていた聖女達も状況を飲み込めてきたのか、聖堂内はたちまちパニックに包まれた。
そりゃそうなるよな……。
「静かにしなッ! いちいち騒ぐんじゃないよみっともない。これは元々アンタ達が蒔いた種だろう」
「「……⁉」」
「何時までもシスターの事でネチネチネチネチ……。全員がスッキリ解決したがっていた問題だろうがコレは。だったら2人以外の奴らは黙って見届けな! そしてアンタ達2人はさっさとギガノキアを止めるんだ。何時までボケっと突っ立ているんだい。アンタ達がやらなきゃ、“人が死ぬよ”――」
鬼気迫るシスターの言葉。それが冗談でも脅しでもない事は全員が察した。
「ロセリーヌなら出来るわよ! 頑張って!」
「ティファーナちゃん……」
この場に決してそぐわない明るい声援が1つ……。
「おいおい、本当にあの子達に奴を止められる力があんのかよ?」
「全くもって俺達は部外者だけど……コレは流石にヤバいケロよ」
「大丈夫。ロセリーヌは出来る子なの」
ディオルドとバレンは黙って僕を見てきたが、勿論僕も何も言えない。困ったものだ……。本当にどうなるんだコレは。僕の意見としては直ちに避難した方がいい。
そう思っていると、今度はシスターが優しく語りかけ始めた。
「――聖女ってのはねぇ、人を思いやる事から始まるんだ。
誰にでも出来る何気ない当たり前の事。何時でもどこでも誰もが出来る故に、その大切さに気付けない人が大勢いる。
思いや祈りは目に見えない“魂の力”。それを信じるか信じないか、はたまた大事にするか蔑ろにするか……それもまた人の自由さ。
だが、ここにいるアンタ達は少なからずその魂の力を感じている。だからこそ聖女としてここにいるんだよ。偶然ではなく必然的にね。
思いと言うのは、何よりにも勝る尊い力なのさ。その思いが人を助ける事は勿論、自分自身も守り助けてくれる。後はその力を、アンタ達がどう扱うかだ」
シスターの言葉というのはやはり不思議な力がある。
ついさっきまで騒然としていたこの場が、今となってはまた静かな時が流れている。ギガノキアが着実に進行を進める中でも。
全員が自然とシスターの言葉に耳を傾けている。
これもシスターの言う魂の力というものなのだろうか。決して理屈では語れない不思議な力。それが確かに存在している。
そしてそのシスターの力によってか、はたまたその力を“自身への強さ”へと変えたロセリーヌさんの力か……。
どちらにせよ、前代未聞の出来事に動きが生じた瞬間だった――。
「私……やってみますシスター」
ロセリーヌさんは力強くそう言うと、足早にブロッサム大聖堂の外へと向かって行った――。
「それならシンプルでいいわね!」
「でも一体どうやって決めるのかしら?」
「何でもいいわよ。どうせエンビアが勝つんだから!」
数秒の静寂の後、また大聖堂は騒がしくなった。
「よーし! 援護は任せてロセリーヌ!」
「何だ? 皆で大乱闘か?」
「どういう解釈したらそうなるんだゲロよ」
全くバレンの言う通りだよ。
頼むから君達は余計に話をややこしくしないでくれ。お願いだ。
「いいかい? 勝負は正真正銘1度きり。初めに言っておくが、結果がどうなろうと誰の文句も受け付けない。勝った方が次期シスターとなる! 分かったかいアンタ達!」
聖堂内は一気に盛り上がりに包まれた。
「そ、そんな……シスター。待ってく下さいッ……!」
「いい加減にしなよロセリーヌ! シスターが決めたんだ。もうここでハッキリさせようじゃない。私には願ったり叶ったりの展開よ。見てなさいロセリーヌ!アンタは実力も無いのにただ贔屓されていただけって事を分からせてやるわッ!アハハハハ!」
「エンビア……」
エンビアは相当自信がある様に見える。それに引き換え、ロセリーヌさんはまだ決心がついていないみたいだ。元々そういう性格じゃないというのもあるけど、やっぱり何だか可哀想だな。
でもコレはもう遅かれ早かれハッキリさせなければいけない事なんだ。聖女の皆にとっても。僕達は部外者で、応援する事しか出来ないと思うけど……どうか頑張って下さいロセリーヌさん。
「――それじゃあ早速始めるとしようかね」
「そうね、早く始めましょうシスター! それで? 一体どういう勝負で決めるつもりかしら?」
「焦るんじゃないよエンビア。それに、勝負は“もう既に”始まっている――」
――ゴゴゴゴゴゴッ……!
「「……⁉」」
何だ……⁉
大地が揺れる様な地響き。僕の気のせいではない。皆が今のを感じている。
「あのバアさん“何しやがった”?」
「とんでもない“魔力”ケロ……」
僕は直ぐに理解出来なかった。ディオルドとバレンが言っている事を……。
「ルールは至ってシンプル。アンタ達は紛れもない聖女……。ならばその祈りで、“奴”を封じな! 見事鎮めた方がこの勝負の勝者だよ!」
シスターはそう言いながら大聖堂の天窓を指差した。
「「……⁉⁉」」
その場にいた聖女達全員が言葉を失った。それはまた僕も同様。だって、今自分が見ているものが信じられないい……。
何で……?
一体何であんなものが……⁉
天窓から見えたのは、メイリーン山とその半分程の大きさを誇っている、超大型の巨人モンスターが聳え立っていた――。
「奴の名は『ギガノキア』古から伝わる伝説の巨人族。……さぁ、早く奴を止めな。さもなければ山は疎か、この街も人々も全員死ぬよ」
ギガノキアだって……⁉ 書物とかによく出てくるあの伝説のッ⁉ 噓でしょ⁉
『ヴバァァァァァァァァッ!!』
「「……⁉⁉」」
ヤバいヤバいヤバいヤバい。 絶対ヤバいってコレは!
「ちょ、ちょっとシスター! アレ本物ですかッ⁉」
「当たり前だろう」
何をそんな涼しい顔して言ってるんだこの人……!
「でけぇなぁ。巨人族ってあんなにデカかったか?」
「すっごーい! 私こんな大きい巨人族初めて見たよ!」
「コイツはまた異質な存在じゃないか……? 前に巨人族に会った事あるけど、全然違うゲロよ……」
「アッハッハッハッ! 当たり前さねカエルの坊や。アレは“厄災”とまで言われる伝説の巨人だからねぇ」
圧巻。
もうその言葉に尽きる。
隣のアイリーン山が既に物凄いデカさなのに、幾らその半分ぐらいと言ってもそれはもうとんでもない大きさ。
「無理無理無理。ギガノキアなんて人が相手にする存在じゃない……! 勝負どころじゃないですよシスターッ!」
「大丈夫だよジル坊、落ち着きな」
「いやいや!落ち着いてる場合じゃないでしょこれ!街が破壊されちゃいますって……!っていうかアレ何処からどうやって出したんですかッ⁉」
「アッハッハッ。それは直ぐに分るよ。それよりも……ロセリーヌ!エンビア!何をしているんだい? さっさとギガノキアを止めな」
シスターが2人に声を掛けたが、ロセリーヌさんもエンビアもギガノキアを見つめたまま動けずにいた。
「止めるって言ったって……。無理に決まってるじゃない……あんなの……」
「やる気がないのか、それとも皆で仲良く死にたいのかい? 弱音じゃ止められないよ。何時もの自信はどうしたんだいエンビアよ」
どうやら偽物でも冗談でもない。こんな会話をしている間にも、ゆっくりとギガノキアがここロマン街に進行している。固まっていた聖女達も状況を飲み込めてきたのか、聖堂内はたちまちパニックに包まれた。
そりゃそうなるよな……。
「静かにしなッ! いちいち騒ぐんじゃないよみっともない。これは元々アンタ達が蒔いた種だろう」
「「……⁉」」
「何時までもシスターの事でネチネチネチネチ……。全員がスッキリ解決したがっていた問題だろうがコレは。だったら2人以外の奴らは黙って見届けな! そしてアンタ達2人はさっさとギガノキアを止めるんだ。何時までボケっと突っ立ているんだい。アンタ達がやらなきゃ、“人が死ぬよ”――」
鬼気迫るシスターの言葉。それが冗談でも脅しでもない事は全員が察した。
「ロセリーヌなら出来るわよ! 頑張って!」
「ティファーナちゃん……」
この場に決してそぐわない明るい声援が1つ……。
「おいおい、本当にあの子達に奴を止められる力があんのかよ?」
「全くもって俺達は部外者だけど……コレは流石にヤバいケロよ」
「大丈夫。ロセリーヌは出来る子なの」
ディオルドとバレンは黙って僕を見てきたが、勿論僕も何も言えない。困ったものだ……。本当にどうなるんだコレは。僕の意見としては直ちに避難した方がいい。
そう思っていると、今度はシスターが優しく語りかけ始めた。
「――聖女ってのはねぇ、人を思いやる事から始まるんだ。
誰にでも出来る何気ない当たり前の事。何時でもどこでも誰もが出来る故に、その大切さに気付けない人が大勢いる。
思いや祈りは目に見えない“魂の力”。それを信じるか信じないか、はたまた大事にするか蔑ろにするか……それもまた人の自由さ。
だが、ここにいるアンタ達は少なからずその魂の力を感じている。だからこそ聖女としてここにいるんだよ。偶然ではなく必然的にね。
思いと言うのは、何よりにも勝る尊い力なのさ。その思いが人を助ける事は勿論、自分自身も守り助けてくれる。後はその力を、アンタ達がどう扱うかだ」
シスターの言葉というのはやはり不思議な力がある。
ついさっきまで騒然としていたこの場が、今となってはまた静かな時が流れている。ギガノキアが着実に進行を進める中でも。
全員が自然とシスターの言葉に耳を傾けている。
これもシスターの言う魂の力というものなのだろうか。決して理屈では語れない不思議な力。それが確かに存在している。
そしてそのシスターの力によってか、はたまたその力を“自身への強さ”へと変えたロセリーヌさんの力か……。
どちらにせよ、前代未聞の出来事に動きが生じた瞬間だった――。
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