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第4章~賢者と聖女と新たな門出~
48 思い立ったが即行動
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どうしても理由が気なってしょうがない。
僕は聞きづらかったがもう聞いてしまった。
「ロセリーヌさんみたいに優しくて素敵な方が、何故皆からシスターになるのを反対されているんですか?」
僕がロセリーヌさんに聞くと、彼女はバツが悪そうな顔をしながらも、こう答えてくれた。
「それはですね……これと言った確かな理由では無いのですが、私は生まれて間もなくブロッサム大聖堂に預けられたのです。いわゆる捨て子でというやつですね……。そんな私を1番最初に見つけたのが今のシスターなんです。
シスターに限らず、他の皆さんも、私を実の子供の様に受け入れて下さりここまで育てて頂きました。私にとってここは家でありここにいる皆は家族そのものなのです」
優しく微笑みながら語るロセリーヌさん。その表情からは、本当にこのブロッサム大聖堂が好きなんだという事が伝わってくる。
「そんな風に思っているロセリーヌさんが何で……」
「先程も言いましたが、これと言うきっかけがあった訳ではないのです。私にとっては当たり前に育ってきたこの環境でも、聖女を目指してここに入ってきた人達からすると、私ばかり贔屓しているように見えてしまう様なのです」
成程……そう言う事か。
「嫌だよね~、女の嫉妬や妬みって! そういう所が面倒なのよ女って。そういう面は男の子達っていいよね! 気に入らない時は正面からぶつかり合って、激闘の末に固い握手で絆を深めるんだから! 憧れちゃう」
無邪気に言うティファ―ナの言う事は確かに分かるが、残念。
やはり君は純真無垢だから、思い描いている理想がどうしても綺麗過ぎる。言っている事は間違いではないけどね。そう言う展開もあるとは思うから。
「確かにそうですね。私も正面から上手に向き合えればいいのですけど。中々難しいですね……」
「だからやっぱり“コレ”で白黒はっきりさせましょうよ」
ティファーナは力強く拳を握りながらロセリーヌさんを煽っていた。
「それは止めろってティファ―ナ。腕っぷしだけで解決できる問題じゃないだろ」
「でも、意外とそれもアリなのかもしれません」
え? ロセリーヌさんまで急に? ティファ―ナのせいで悪影響が……?
「私が皆に認められていないのは、きっと聖女としての実力不足も理由です。魔力も人並み、使える魔法も基礎ばかり。戦闘なんて以ての外です。私と違ってこのブロッサム大聖堂には優秀な聖女が集まっています。私はただただ祈る事しか出来ませんので……。皆が納得いかないのも無理はないのです」
「そんな……」
人の数だけ意見は違う。そんな事は分かり切っているし、大聖堂の聖女ともなれば尚更、自然に色んな人に理解を持てる様な人ばかりだと思っていたけど、そうではないんだね……。
そりゃそうか。完璧な人なんてこの世にいないんだから。
ロセリーヌさんの話を聞いて、少しは他の聖女達の気持ちも分かるけど、それでもやっぱりこんなやり方は気分が悪い。
ティファ―ナの考えは強引過ぎるが、もっと何か明確に分かる基準でもあればいいのに。そうしたらここまであからさまにはならないだろう。
と、僕なんかが簡単に言っても、当然良いアイデアがある訳でもない。非常に由々しき事態だ全く。
「そう言えばロセリーヌさん。そのシスターという方は何故ロセリーヌさんを指名したんですか? 幾ら赤ん坊の時から子供の様に育ててくれたとはいえ、シスターともあろうお方がそれだけを理由に指名した訳じゃないですよねきっと。優秀な人達が集まっているなら尚更何か理由がありそうですけど……」
「確かにそうね。ちゃんとその理由をシスターは皆に言ったの?」
「いえ、それはまだなんです。寧ろ私もそこが気になっているのですが、シスターの容体が優れず今は病院におりまして」
「そうなんですか……それは心配ですね」
「一応大事には至らず、明日退院して大聖堂に戻るとの事でしたので、その時に理由もお聞きしたいと思っています」
シスターも自分の事で大変そうなのに、せっかく大聖堂に戻ってきて更にこの事態じゃ余計体調崩さないか心配になっちゃうよ。
「それじゃあ決まりね!」
ティファ―ナは急にそう言った。
何か嫌な予感が……。嬉しくない事に、僕の予感はこういう時に当たってしまう。
「明日退院って事は“今はまだ”病院よね? 今から行って理由をちゃんと聞きましょうよ」
「また何を言っているんだティファ―ナ……。シスターは体調が悪いんだよ。それに明日帰って来るのにわざわざ病院に押し掛ける必要ないだろ」
「だってシスターはロセリーヌが今こうなってる事知ってるの?」
「それは知らないと思います。任命した直後にそのまま入院してしまいましたので。それから今日で1ヵ月程になりますが、その間もお見舞いに行ったのは数回、その時に大聖堂の様子も伝えているとは思いますが、まさかここまでの事態になっているとは恐らく……」
「ほら、やっぱり今から聞きに行こうよ。シスターも帰って来て直ぐに大聖堂が大変だって知ったらまた入院になっちゃうかもしれないよ!」
「そんな縁起でもない事を」
まぁ僕も同じ事を思ってしまったけど。
「行こうロセリーヌ!」
「え、ちょっと、ティファ―ナちゃん⁉」
「コラコラコラッ!」
思い立ったら即行動するティファ―ナは、勢いよくロセリーヌさんの手を引きそのまま走って行ってしまった。
何て勝手な……!
ヤバい。僕も急いで追いかけないと見失っちゃう。
こうして僕達はシスターのいる病院へ向かう事になった。
僕は聞きづらかったがもう聞いてしまった。
「ロセリーヌさんみたいに優しくて素敵な方が、何故皆からシスターになるのを反対されているんですか?」
僕がロセリーヌさんに聞くと、彼女はバツが悪そうな顔をしながらも、こう答えてくれた。
「それはですね……これと言った確かな理由では無いのですが、私は生まれて間もなくブロッサム大聖堂に預けられたのです。いわゆる捨て子でというやつですね……。そんな私を1番最初に見つけたのが今のシスターなんです。
シスターに限らず、他の皆さんも、私を実の子供の様に受け入れて下さりここまで育てて頂きました。私にとってここは家でありここにいる皆は家族そのものなのです」
優しく微笑みながら語るロセリーヌさん。その表情からは、本当にこのブロッサム大聖堂が好きなんだという事が伝わってくる。
「そんな風に思っているロセリーヌさんが何で……」
「先程も言いましたが、これと言うきっかけがあった訳ではないのです。私にとっては当たり前に育ってきたこの環境でも、聖女を目指してここに入ってきた人達からすると、私ばかり贔屓しているように見えてしまう様なのです」
成程……そう言う事か。
「嫌だよね~、女の嫉妬や妬みって! そういう所が面倒なのよ女って。そういう面は男の子達っていいよね! 気に入らない時は正面からぶつかり合って、激闘の末に固い握手で絆を深めるんだから! 憧れちゃう」
無邪気に言うティファ―ナの言う事は確かに分かるが、残念。
やはり君は純真無垢だから、思い描いている理想がどうしても綺麗過ぎる。言っている事は間違いではないけどね。そう言う展開もあるとは思うから。
「確かにそうですね。私も正面から上手に向き合えればいいのですけど。中々難しいですね……」
「だからやっぱり“コレ”で白黒はっきりさせましょうよ」
ティファーナは力強く拳を握りながらロセリーヌさんを煽っていた。
「それは止めろってティファ―ナ。腕っぷしだけで解決できる問題じゃないだろ」
「でも、意外とそれもアリなのかもしれません」
え? ロセリーヌさんまで急に? ティファ―ナのせいで悪影響が……?
「私が皆に認められていないのは、きっと聖女としての実力不足も理由です。魔力も人並み、使える魔法も基礎ばかり。戦闘なんて以ての外です。私と違ってこのブロッサム大聖堂には優秀な聖女が集まっています。私はただただ祈る事しか出来ませんので……。皆が納得いかないのも無理はないのです」
「そんな……」
人の数だけ意見は違う。そんな事は分かり切っているし、大聖堂の聖女ともなれば尚更、自然に色んな人に理解を持てる様な人ばかりだと思っていたけど、そうではないんだね……。
そりゃそうか。完璧な人なんてこの世にいないんだから。
ロセリーヌさんの話を聞いて、少しは他の聖女達の気持ちも分かるけど、それでもやっぱりこんなやり方は気分が悪い。
ティファ―ナの考えは強引過ぎるが、もっと何か明確に分かる基準でもあればいいのに。そうしたらここまであからさまにはならないだろう。
と、僕なんかが簡単に言っても、当然良いアイデアがある訳でもない。非常に由々しき事態だ全く。
「そう言えばロセリーヌさん。そのシスターという方は何故ロセリーヌさんを指名したんですか? 幾ら赤ん坊の時から子供の様に育ててくれたとはいえ、シスターともあろうお方がそれだけを理由に指名した訳じゃないですよねきっと。優秀な人達が集まっているなら尚更何か理由がありそうですけど……」
「確かにそうね。ちゃんとその理由をシスターは皆に言ったの?」
「いえ、それはまだなんです。寧ろ私もそこが気になっているのですが、シスターの容体が優れず今は病院におりまして」
「そうなんですか……それは心配ですね」
「一応大事には至らず、明日退院して大聖堂に戻るとの事でしたので、その時に理由もお聞きしたいと思っています」
シスターも自分の事で大変そうなのに、せっかく大聖堂に戻ってきて更にこの事態じゃ余計体調崩さないか心配になっちゃうよ。
「それじゃあ決まりね!」
ティファ―ナは急にそう言った。
何か嫌な予感が……。嬉しくない事に、僕の予感はこういう時に当たってしまう。
「明日退院って事は“今はまだ”病院よね? 今から行って理由をちゃんと聞きましょうよ」
「また何を言っているんだティファ―ナ……。シスターは体調が悪いんだよ。それに明日帰って来るのにわざわざ病院に押し掛ける必要ないだろ」
「だってシスターはロセリーヌが今こうなってる事知ってるの?」
「それは知らないと思います。任命した直後にそのまま入院してしまいましたので。それから今日で1ヵ月程になりますが、その間もお見舞いに行ったのは数回、その時に大聖堂の様子も伝えているとは思いますが、まさかここまでの事態になっているとは恐らく……」
「ほら、やっぱり今から聞きに行こうよ。シスターも帰って来て直ぐに大聖堂が大変だって知ったらまた入院になっちゃうかもしれないよ!」
「そんな縁起でもない事を」
まぁ僕も同じ事を思ってしまったけど。
「行こうロセリーヌ!」
「え、ちょっと、ティファ―ナちゃん⁉」
「コラコラコラッ!」
思い立ったら即行動するティファ―ナは、勢いよくロセリーヌさんの手を引きそのまま走って行ってしまった。
何て勝手な……!
ヤバい。僕も急いで追いかけないと見失っちゃう。
こうして僕達はシスターのいる病院へ向かう事になった。
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