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第3章~建設と武術と転生カエル~

36 新たな発見

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 バレンの攻撃は確かにポルゴスに効いていた。しかし、致命的なダメージとは言えない。
 食らって体勢を崩したが、ポルゴスは片膝を付き何とか堪えていた。

「ホントに頑丈だな……そのまま倒れてくれよもう」

 バレンも今ので限界だろう。さっきより体力を消耗して呼吸が荒れているし何より、今まで溢れ出ていた戦意が感じられない。

「ハァ……ぐッ……まさか、こんな技を隠していたとはな……ハァ……どこまでも小癪な蛙だ。だが……今のが本当に最後だったらしいな」

 ポルゴスも分かっている。もう本当にバレンに戦う力が残っていない事に。

 若干よろめきながらも立ち上がったポルゴス。しかし、何故か奴は徐に、斧を持っていない手に魔力を集め始めた。その集まった魔力は大きな魔力弾として形を変えていった。直径2m以上はある魔力の弾。

「ブガガガ!たかが蛙1匹に、この俺が片膝を付かされるとはな。最後に面白いものを見せてもらった礼だ。死ぬ前に俺からも面白いものを見せてやろう!」

 そう言ったポルゴスは魔力弾をカイト君へと向けた。

「――⁉⁉」
「どこまでも舐めた真似しやがってバレン! 安心しろ! ガキを葬った後はお前も同じ目に遭わせてやるッ!」
「カイト君!!」

 ヤバい。
 とことん腐ってる奴だった。
 まさかこの状況でカイト君を狙うなんて!
 これはマジでヤバい。カイト君を……カイト君を助けなくちゃ……!

 ブワッ……。
 
「じゃあなガキ」
「やめろぉぉぉ!!」

 無情にも、ポルゴスの魔力弾はカイト君に放たれた。

 鈍く激しい轟音が響き、魔力弾が衝突した一帯は綺麗に跡形もなく吹き飛んでいた。

「ブガガガ。派手に消し飛んだか! どうだバレン! 面白いものが見られッ……⁉ な、何処行きやがった……」

 魔力弾を放ったポルゴスが再びバレンの方へ振り返ったが、そこにいる筈のバレンの姿が無かった。
 
 困惑した様子で辺りを見回すポルゴス。すると、魔力弾で吹き飛んだ場所の少し横。そこに何とバレンの姿を見つけた。

 動くだけでも困難だったであろうあの状態から、瞬時にこの距離まで移動していたのも驚いたポルゴスだが、それ以上に驚いたのは、バレンが抱きかかえていたカイト君の姿――。

 そう。
 葬ったと思われたカイト君をバレンが助けていた。バレンは魔力弾を回避していたのだ。

「なッ、何故お前がそこに……⁉ しかもあの攻撃を躱したのか……馬鹿な……⁉」

 僕は出会ってから初めてポルゴスのこんな表情を見た。余りの出来事に驚いている様子。僕も一瞬驚いたよ。

 でも、その“答え”が直ぐに分かって僕はまた驚いた。ポルゴスとは全く反対の驚き。困惑や動揺ではなく、安心と期待。そして何よりも感じる高揚感。

 何故って……?

 また起きたからさ。

 その“奇跡”が――。
 
 ね、バレン。

「これは……」

 何を隠そう、1番驚いているのは恐らくバレンだろう。

 今さっきまでまともに動く事もままならなかった自身の体。それが嘘だったかの様に自然と動かせた上に、更に今までの自身の力以上のものが生み出されているとなれば、それだけ驚くのも無理ないよね。

 コレが起こった瞬間、僕もまさかと思ったよ。
 でもこの感覚はこれで3度目。ティファ―ナとディオルドの時と同じだから絶対間違いない。今回は直接触れていないのに力が発揮したな。これは1つ新たな発見だ。そして未だに明確な理由は分からないけど、バレン、君にもその“紋章”が浮かび上がっているね。

「へぇ~!バレンにもアレが起こったか」
「やったぁ!これなら豚さんに勝てるよバレン!」

 起こった光景に、ティファ―ナとディオルドも嬉しそうな表情をしていた。

「何が起こってやがる……」
「凄いケロ……凄い力が漲ってくる」

 自身に何が起きているのか分からないバレンだったが、力が漲ってくるのならやる事は1つ――。

「無事でよかったカイト。俺が目を離したばっかりに、カイトにも村にも酷い目に遭わせてしまったケロね。ごめんな」
「僕は大丈夫だったよ!バレンが助けに来てくれるって分かっていたから!」
「カイト……。よし。俺は今度こそポルゴスの野郎を倒してくる。それで全部終わりだ。早く皆の所に帰ろうケロ!」
「うん!」
「ゲロロロ。皆! カイトを頼んでもいいケロか」
「勿論!」

 バレンは僕達の所にカイト君を預けると、今度こそ決着をつけるべく再びポルゴスと対峙した。

「チッ、クソ蛙が。お前一体何をッ……『――ズドンッ!!』

 電光石火の1撃―。
 鈍い衝撃と共に、ポルゴスは胸を押さえながらガクンと崩れ落ちるように両膝を地面に付けた。
 ポルゴスの表情は悶絶。信じられないと言わんばかりに目を見開いている。

「……ガッ……! ゔッ……ぐ……⁉」

 上手く呼吸も出来ず、ただただバレンの攻撃を受けた胸を押さえ苦しんでいた。

「ポルゴス。お前は村を襲いカイトをこんな目に遭わせた。挙句の果てに、まだ子供のカイトを消そうとしたお前の罪は重いぞゲロ。どうした、いつまで座っている気だ。“休んでる場合”じゃないんだろ?」
「――⁉⁉」
「蛙拳法……“蛙蹴撃キックル”!」

 ――ズガァァン!!
 
 短く重いこの日1番の衝撃音が島中に響き、争いの幕は下りたのだった――。
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