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第3章~建設と武術と転生カエル~
34 蛙拳法
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『『ウオォォォォ!!!』』
勢いよく突っ込んで来るオーク達。
「やっと始まったか。俺が約束通り丸焼きに……⁉」
ディオルドが戦闘態勢に入ろうとした瞬間、バレンが手を出してディオルドを止めた。
「3人共ありがとう。でも、これは俺の戦い。手は出さないでほしいケロ」
「でもバレン!流石に1人じゃッ……「分かった。俺達は見てる事にするぜ」
僕が言う前にディオルドが遮った。
いくらバレンの事だからって、流石にこの数を1人で相手にするなんて無茶だよ!
しかし、そんな僕の心配とは裏腹に、バレンは強かった。
「死ねカエル!」
「1発で終わらせてやるぜ!」
目の前まで迫っていたオーク達。それぞれ手には槍や斧など武器を持ち、今まさにそれらの武器をバレン目掛け振り下ろす。
「“蛙拳法……蛙正拳”!」
――ズドッ!ズドッ!
体格差を活かし懐に入り込んだバレンは、その蛙の跳躍を利用した威力ある拳でオーク2体に正拳突きを食らわせた。
「強い……あれは何かの武術かな?」
「なかなかやるじゃねぇかよ」
攻撃を食らったオーク達はその場に崩れ落ちたが、その後ろから続々と他のオーク達がバレンに襲い掛かった。
1体、2体、3体、4体、5体……。巨体なオーク達は意外と俊敏だ。
「それぐらいでいい気になるなよ!」
「この数に敵う訳ないからな!」
「お前も仲間も葬ってやる!」
幾つもの大きい体と武器とバレンの攻防が四方八方入り混じる。体の大きいオーク達が重なると、小さいバレンが時々見えなくなってしまう。それでも、確認出来るバレンは軽やかな身のこなしと、その小さい体からは想像も出来ない威力と攻撃でオーク達を確実に仕留めていった。
「バレン強ーい!」
「頑張れ!」
こんな応援意味ないけど、自然と見てるこっちにも力が入ってしまうんだ。
オーク達と違い武器を持たないバレン。さっきから見事に決まってるパンチやキックといった打撃がバレンの戦闘スタイル。練り上げた魔力で更に身体強化を行っている様だ。
「やはり強さは本物かバレン……。しかしいくらお前でもこの数はおろか、俺に勝つことは出来んぞ。ブガガガ」
仲間のオークが数体やられても、ポルゴスは余裕の表情でバレンを見ていた。高みの見物とは鬱陶しい。お前がボスならお前が正々堂々と戦えよな。まぁそう思ってるだけで僕は戦闘専門外だし、怖くて言えないけどね。
「今回ばかりはマジで怒ってるぜケロ。残り21匹全部倒してやるから覚悟しろ」
バレンが放つ闘気に、さっきまで勢いのあったオーク達が怯んだのか、少し動きが止まった。小さい体から発せられる強者のオーラ。それは戦っているオーク達が1番感じた様だ。無暗に突っ込んで来ない。それどころか、バレンに攻撃を仕掛けるのを躊躇っている様に見える。
「カナヅチで漂流したって聞いた時は心配だったけど、これなら本当にバレン1人で大丈夫そうだね」
オーク達も弱くはないけど、それ以上にバレンが強いよ。それにまだ全力を出し切っていなそうだ。余力を残してる。
「それはどうかな」
「え?」
僕の横でディオルドが呟いた。僕は大丈夫たと思っているが、ディオルドは違うらしい。どうして? バレンの強さならこのまま勝てそうなのに。何でそんな不安になるような事を言うんだディオルド。
「他の雑魚は余裕だけどよ、“アイツ”は別だ」
「アイツって……」
「そうね。“1番大きい豚さん”はバレンより強いかも」
「え⁉」
1番大きいのって、ポルゴスとか言う奴か! ボスだから強いとは思っていたけど、まさかそんなに強いとは。バレンもかなり強いのにそれ以上って事だよね? ディオルドとティファ―ナが言ってるんだから正しいよなきっと。驚きだなぁ。見かけだけで意外と大したことない奴かなと思ったら、全然見た目通りに危ないお方って事じゃん! 怖ぇ~。
ディオルドの予想通り、バレンは瞬く間に他のオーク達を一掃し、残るはポルゴスのみとなっていた。
辺り一帯に倒れているオーク達。完全に気を失ってノびている者もいれば、朦朧とした意識ながら何とか動こうと試みている者もいる。だが一目瞭然。もう誰も戦える状態ではなかった。
「……全く。我が仲間ながらここまで不甲斐ないとはな」
「お前にも恥じる気持ちがあったケロか」
「益々勿体ない。お前が仲間になれば更に俺達は暴れられたんだがな」
「そんなくだらない事に興味はない。カイトと村を狙う奴は誰だろうと許さないゲロ」
バレンとポルゴスが対峙する。
高低差のある視線がぶつかり合い、互いに1歩も引かぬ気迫を醸し出していた。
緊張感漂う静寂の中、その均衡を破ったのはバレン――。
やはり今までは全力じゃなかった様だ。バレンは今までよりもう1段階ギアを上げた。力強くも洗礼された魔力が一気に練り上げられた。そしてそれに反発するかの如く、ポルゴスも遂にその重い腰を上げた。
「こうなったら力強くでお前を服従させてやろう!」
ポルゴスは5m近くある巨体でバレンを威嚇した。只ならぬ威圧感と存在感。まだ何もしていないのに、立っているだけで相手の戦意を奪いそうだ。
デっっカぁ~……。何じゃこりゃ。何を見ているんだろう僕は今。それにしても凄まじいデカさだ。しかも手には巨体サイズの斧まで持ってるし。あんなの食らった日には即あの世行き決定だよ。ってか、あんなの攻撃じゃなくて最早災害じゃないか? アレ振り下ろしたら地面どこまで割れちゃうの?
僕のそんな妄想は他所に、バレンとポルゴスの戦いの火蓋が切って落とされた。
「――死ねぇぇッカエルッ!!」
「――くたばれデカ豚ぁぁッ!!」
ポルゴスの巨大斧と、バレンの蛙拳法が衝突した――。
勢いよく突っ込んで来るオーク達。
「やっと始まったか。俺が約束通り丸焼きに……⁉」
ディオルドが戦闘態勢に入ろうとした瞬間、バレンが手を出してディオルドを止めた。
「3人共ありがとう。でも、これは俺の戦い。手は出さないでほしいケロ」
「でもバレン!流石に1人じゃッ……「分かった。俺達は見てる事にするぜ」
僕が言う前にディオルドが遮った。
いくらバレンの事だからって、流石にこの数を1人で相手にするなんて無茶だよ!
しかし、そんな僕の心配とは裏腹に、バレンは強かった。
「死ねカエル!」
「1発で終わらせてやるぜ!」
目の前まで迫っていたオーク達。それぞれ手には槍や斧など武器を持ち、今まさにそれらの武器をバレン目掛け振り下ろす。
「“蛙拳法……蛙正拳”!」
――ズドッ!ズドッ!
体格差を活かし懐に入り込んだバレンは、その蛙の跳躍を利用した威力ある拳でオーク2体に正拳突きを食らわせた。
「強い……あれは何かの武術かな?」
「なかなかやるじゃねぇかよ」
攻撃を食らったオーク達はその場に崩れ落ちたが、その後ろから続々と他のオーク達がバレンに襲い掛かった。
1体、2体、3体、4体、5体……。巨体なオーク達は意外と俊敏だ。
「それぐらいでいい気になるなよ!」
「この数に敵う訳ないからな!」
「お前も仲間も葬ってやる!」
幾つもの大きい体と武器とバレンの攻防が四方八方入り混じる。体の大きいオーク達が重なると、小さいバレンが時々見えなくなってしまう。それでも、確認出来るバレンは軽やかな身のこなしと、その小さい体からは想像も出来ない威力と攻撃でオーク達を確実に仕留めていった。
「バレン強ーい!」
「頑張れ!」
こんな応援意味ないけど、自然と見てるこっちにも力が入ってしまうんだ。
オーク達と違い武器を持たないバレン。さっきから見事に決まってるパンチやキックといった打撃がバレンの戦闘スタイル。練り上げた魔力で更に身体強化を行っている様だ。
「やはり強さは本物かバレン……。しかしいくらお前でもこの数はおろか、俺に勝つことは出来んぞ。ブガガガ」
仲間のオークが数体やられても、ポルゴスは余裕の表情でバレンを見ていた。高みの見物とは鬱陶しい。お前がボスならお前が正々堂々と戦えよな。まぁそう思ってるだけで僕は戦闘専門外だし、怖くて言えないけどね。
「今回ばかりはマジで怒ってるぜケロ。残り21匹全部倒してやるから覚悟しろ」
バレンが放つ闘気に、さっきまで勢いのあったオーク達が怯んだのか、少し動きが止まった。小さい体から発せられる強者のオーラ。それは戦っているオーク達が1番感じた様だ。無暗に突っ込んで来ない。それどころか、バレンに攻撃を仕掛けるのを躊躇っている様に見える。
「カナヅチで漂流したって聞いた時は心配だったけど、これなら本当にバレン1人で大丈夫そうだね」
オーク達も弱くはないけど、それ以上にバレンが強いよ。それにまだ全力を出し切っていなそうだ。余力を残してる。
「それはどうかな」
「え?」
僕の横でディオルドが呟いた。僕は大丈夫たと思っているが、ディオルドは違うらしい。どうして? バレンの強さならこのまま勝てそうなのに。何でそんな不安になるような事を言うんだディオルド。
「他の雑魚は余裕だけどよ、“アイツ”は別だ」
「アイツって……」
「そうね。“1番大きい豚さん”はバレンより強いかも」
「え⁉」
1番大きいのって、ポルゴスとか言う奴か! ボスだから強いとは思っていたけど、まさかそんなに強いとは。バレンもかなり強いのにそれ以上って事だよね? ディオルドとティファ―ナが言ってるんだから正しいよなきっと。驚きだなぁ。見かけだけで意外と大したことない奴かなと思ったら、全然見た目通りに危ないお方って事じゃん! 怖ぇ~。
ディオルドの予想通り、バレンは瞬く間に他のオーク達を一掃し、残るはポルゴスのみとなっていた。
辺り一帯に倒れているオーク達。完全に気を失ってノびている者もいれば、朦朧とした意識ながら何とか動こうと試みている者もいる。だが一目瞭然。もう誰も戦える状態ではなかった。
「……全く。我が仲間ながらここまで不甲斐ないとはな」
「お前にも恥じる気持ちがあったケロか」
「益々勿体ない。お前が仲間になれば更に俺達は暴れられたんだがな」
「そんなくだらない事に興味はない。カイトと村を狙う奴は誰だろうと許さないゲロ」
バレンとポルゴスが対峙する。
高低差のある視線がぶつかり合い、互いに1歩も引かぬ気迫を醸し出していた。
緊張感漂う静寂の中、その均衡を破ったのはバレン――。
やはり今までは全力じゃなかった様だ。バレンは今までよりもう1段階ギアを上げた。力強くも洗礼された魔力が一気に練り上げられた。そしてそれに反発するかの如く、ポルゴスも遂にその重い腰を上げた。
「こうなったら力強くでお前を服従させてやろう!」
ポルゴスは5m近くある巨体でバレンを威嚇した。只ならぬ威圧感と存在感。まだ何もしていないのに、立っているだけで相手の戦意を奪いそうだ。
デっっカぁ~……。何じゃこりゃ。何を見ているんだろう僕は今。それにしても凄まじいデカさだ。しかも手には巨体サイズの斧まで持ってるし。あんなの食らった日には即あの世行き決定だよ。ってか、あんなの攻撃じゃなくて最早災害じゃないか? アレ振り下ろしたら地面どこまで割れちゃうの?
僕のそんな妄想は他所に、バレンとポルゴスの戦いの火蓋が切って落とされた。
「――死ねぇぇッカエルッ!!」
「――くたばれデカ豚ぁぁッ!!」
ポルゴスの巨大斧と、バレンの蛙拳法が衝突した――。
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