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第3章~建設と武術と転生カエル~

33 気持ちだけは

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 目の前に生い茂っていたジャングルは、ディオルドの抜刀によって一部だけ根こそぎ木々が無くなっていた。さっきと比べてこれはさぞかし歩きやすそうだ。今度こそ先へと進もうとしたのも束の間、何やら遠くの方から音がしてきた。

「何か聞こえてくるね」
「少し地面も揺れてるみたいゲロ」
「進まなくていいぜお頭。向こうから“来る”からよ」
「――!」

 見通しが良くなったジャングルの道の奥。そこから聞こえてくる音が大きくなり、徐々に地響きも強くなってきた。

 ディオルドの言葉通りなら、向かってくるそれは当然―。

「……敵襲だァァァァ!!」
「一体誰がこんな真似をした!」

 そう。ここはオークがアジトにしているオークのテリトリー。出てくるのは当然オーク達しかないのだ。

『『ウオォォォォ!!!』』

 これまた入団試験の時と似た雰囲気。ただ明らかに違うのは、あの時の様な見学でなはく、今回は渦中のど真ん中にいるという事だよ!

「お~!ぞろぞろと湧いて出てきやがったぜ。軍隊でも目指してんのか?」
「凄い迫力……ちょっと怖いかも」

 僕達がそんな事を言っていると、たちまちオーク達は凄い勢いでこっちに向かって来たと思ったら、もう僕達の目の前まで来ているではないか。

 数も勿論多い。しかもオークという種族は人間と比べるとかなりデカいんだよ。だからそのオークがこの数で目の前に集まっていると、それはそれは凄い圧力を感じる。

「何者だお前達」

 徐に、1体のオークが僕達に向かって言ってきた。持っていた槍の様な武器の刃先をこちらに向け、敵意剥き出しだ。このオークは小柄の方なのだろうか。他のオーク達と比べると少し小さい気がする。って言っても2m以上は絶対あるけどね。デカ。怖。

 武器をこちらに向けるオークを前に、バレンが1歩前に出てた。

「カイトはどこだゲロ」
「お前……そう言う事か。ボス!」

 オークはバレンを見ると、何かを察し、仲間の方を振り返りながら大声でボスと呼んだ。

 「――⁉」
 「大きい~」

 デカいオークの大群の奥から、更に一回り以上デカいオークが現れた。
 でかッ! とんでもないデカさじゃん! 縦も横も。豚というよりデカい象とかゴリラみたいだ最早。何じゃコイツ。ボスと呼ばれたそのオークの体長は優に5m近くあった。

「待ちくたびれたぞバレン」
「カイトを返せケロ」

 バレンと並ぶとより体格の差が凄い。
 バレンに言われたボスは仲間の方を見て、無言で首をクイっと動かした。「連れてこい」と言わんばかりのその仕草の後、大きなオークの集団の中から小さな男の子が姿を現した。

「――バレンッ!」
「カイト!」

 あの子がカイト君……。まだ僕達より幼い子供じゃないか。
 カイト君はロープで縛られていたが、見た感じ大きな怪我とかはなさそう。取り敢えず安心。だがそんな悠長な事は言ってられない。

「おい、“ポルゴス”!さっさとカイトを離しやがれケロ」
「ブガガガッ!お前が俺の手下になるなら解放してやると、何度も言っておるだろうが」
「俺に用があるなら俺だけを相手にすればいい。やり方が汚いゲロな」
「見た目と同じでな」

 おいディオルド! 余計な事言うな! 君がそんなつもりなくても、独り言が挑発的過ぎるぞ。

「何だ?今度は仲間を連れて来たのか。実力だけは買っていたつもりだったがな。まぁいい。今度こそ決めてもらおうか。俺の手下となるか、それとも“村ごと”消されるか。さぁ、どっちだ!」

 “村ごと”? 

「バレン、村ごとって一体どういう事?」
「ああ。俺とカイトが住んでいる近くの村だ。少し前からコイツらオーク達が暴れまわっていると、噂は聞いていた。いつもみたいにカイトと出掛けている時にコイツらと遭遇したのが始まりなんだケロ。
その日からコイツらは毎日村を襲って来て、それを俺が返り討ちにして何とかカイトと村を守ってきたが、今日の朝、俺が少し目を離した時にコイツらが村を襲い、カイトを連れ去ったんだケロ」

 どこまで卑怯な奴らだ。あんな子供や村を襲うなんて我慢ならない。

「豚さん最低。こんな種族だと思わなかった」
「こんなもんだぞ、オークなんてよ」

 ティファ―ナも怒りを露にしている。そりゃそうだよね。

「ブガガガ。威勢だけは良さそうな仲間達だな」
「誰に物言ってんだクソ豚。弱いガキ1人捕まえたぐらいで粋がんなよ」
「随分と偉そうな奴だ。非力な人間の小僧が俺に喧嘩売ってんのか?おい」
「だったらどうなんだクソ豚。全員丸焼きにしてやろうか」

 無駄に挑発するなよと思ったが今回は良い。寧ろさっさと痛い目に遭わせてやっちゃえ。頼んだディオルド。

「ほう。バレン、どうやらお仲間は“その気”らしいが……まさかお前も同じではないだろうな?」

 ポルゴスのお察し通り、悪いが僕達は今すぐに戦い始めても問題ない。コイツらのやり方は本当に気分が悪いからな。

 あ、当り前だけど僕は戦力外だ。本当に戦闘となった場合には、速やかに避難しようと思ってる。
 でも勘違いしないでほしい。気持ちは僕も一緒だ。いや、自分が戦えないと痛感している分、気持ちだけは1番強いぞ。これだけは言わせてくれ。

「ごめんバレン。君の事情なのに思わず僕達が感情的になっちゃってる」
「オークの丸焼き。どっか買い取ってくれる場所あんのかな? こっちは何時でもいいぜバレンよ」
「早くカイト君助けてあげないと可哀想だもんね」
「皆……」

 バレンは僕達を見た。
 そしてきっとバレンも同じ気持ちだったのだろう。何か決意を固めた表情を一瞬浮かべると、再びポルゴスと顔を合わせこう言った。

「ポルゴス。俺はお前の手下にもならないし、2度と村も襲わせない。当然カイトも返して貰うケロ。そして、今日でこのつまらない争い全てに終止符を打たせてもらうゲロ!」

 ポルゴスにそう言い放つと、バレンは一気に魔力を高めた。

「ブガガガ!いいだろう、面白い」

 ポルゴスは笑いながら僕達に背中を向け、後ろにいる仲間達の元へと歩いて行った。するとポルゴスが、別のオークが持っていたカイト君のロープを自ら手に取った。

「……バレン!ガキを返して欲しけりゃ力尽くで奪いに来い。まぁ無理だと思うがな。ブガガガ! お前達!どうやら奴らは死にたいらしい。全員まとめて片づけてやれ!!」

『『ウオォォォォ!!!』』

 ポルゴスの言葉でオーク達が一斉に盛り上がりを見せた。島中に響き渡る雄叫び。
 1体のオークが僕達目掛け突っ込んで来ると、それが合図かの様に、他のオーク達も一気に突っ込んできた――。
 
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