29 / 70
第3章~建設と武術と転生カエル~
27 スマイルベット
しおりを挟む
~冒険者ギルド~
「――さぁて。それじゃ俺らもひと稼ぎと行こうかティファ―ナ」
「うん!どんどん稼ごう」
「無理だけはしないでよ2人共」
冒険者ギルドに着いた僕達は早速クエストを選ぼうとしていた。
異常なティファ―ナでも1千万稼ぐのに1週間は掛かった。とは言っても、ランクが上がった後半の報酬とペース計算すれば、正直もっと稼いでいる。Bランクからまた報酬額が一気に高くなったからね。本当に前の様なペースでこなす気なら、ティファ―ナだけでも1日400~500万Gを稼ぎ出す計算だ。恐ろしい。
「ティファ―ナはBランクだっけ?それなら何より先ずAランクにするんだ」
ディオルドが少し真面目な顔でそう言った。
「どうして?」
「Bランクでも十分報酬が高いが、Aランクはそこからまた高くなる。当たり前だがな。それにAランク以上には更に“スマイル・ベット”が受けられる」
「――⁉」
「何それ?」
Aランク以上の冒険者が受けられるという“超高額報酬クエスト”、別名『スマイル・ベット』
その昔、ある王家が暇つぶしの賭けで、世界中の冒険者に1つの超高額クエストを依頼した。
クエスト内容は、モンスターの中で絶対的トップに君臨する“ドラゴン”の討伐。
数百年以上前は、今ほど魔力が発達していなく、人間や他の種族がドラゴンを倒すなんてあり得ない時代。
そんな時代で、その場にいた王家の者達が「こんなの出来る筈がない」と大笑いしながらクエストを出したことから、『笑いの賭け』と呼ばれる様になったと言う―。
これは、数百年経った現代でも当たり前の様に存在している。しかし、長年の歴史の中で徐々に変化していき、今ではドラゴンとまではいかないにしても、それと同レベルのモンスターの討伐等が、超高難度クエスト……スマイル・ベットとして指定されている。
「スマイル・ベットって本当にあるんだ……って、もしかしてディオルドAランクなの⁉」
「何言ってんだ今更。当たり前だろ」
ええ⁉ マジで⁉
「え、ディオルドって今いくつ?」
「18」
やっぱり! 僕と2つしか変わらない。それでもうAランクってヤバすぎるでしょ。ラウギリでもようやくCランクになったぐらいなのに。
「お頭の歳の時には、もうAランクだぜちなみに」
もうディオルドしか勝たん。
たった今あなたを化け物認定しました。
「待ってよ。しかもそれって当然魔力一切無しの剣術のみって事だよね……?」
「当り前だろ。クエスト1個でいちいち魔力なんか使えるか」
いくらここが剣と魔法の世界とは言え、魔力を一切使わないなんて有り得ないぞ。
侍や剣士は勿論、槍とか斧とかで戦う場合だって最低限魔力を纏わなきゃ、攻撃力だってないし、自分の身も危険だ。魔力0なんて、そんなのただの身体能力勝負じゃないか。なんてデタラメな男なんだ。
「その実力で何で騎士団の入団試験レベルで落ちるんだよ」
「あれは試験のやり方が良くねぇよな」
「その体質には同情するけどさ、そもそも何で騎士団に入りたかったの?」
「別に大した理由はないけどな。強いて言うなら、物心ついた時から俺に剣を教えた人が騎士団だったからかな」
ディオルドに剣を教えたと?
この化け物の上に更に化け物がいると?
「くだらねぇ質問は終わりだ。俺はもうスマイル・ベット受けてくるぜ。ティファ―ナも早くAランクになれよ」
「分かった。頑張る!」
そう言って、ディオルドとティファ―ナはそれぞれクエストへと旅立った。
また待ちぼうけか。まぁいいだろう。こうなったらやる事は1つ。商人として、ティファ―ナとディオルドの売上をしっかり記帳しよう。それしかない。
そして5日が経った―。
♢♦♢
~冒険者ギルド~
きっと僕は、これから先のまだかなり長い人生の中で、天変地異でも起こらない限り、驚くという感情は2度と生まれないだろう。
そう思える程の衝動をたった今……いや、正確には4日前から受けているんだ―。
「――な?問題なく稼げただろ?」
「凄いねスマイル・ベット! あまり数はないけど」
「まぁそれはしょうがねぇ。危険だし、額が額だからな」
冒険者ギルドの椅子に座りながら話すティファ―ナとディオルド。テーブルには飲み物とお菓子。
その隣のテーブルで、僕は黙々と計算中である。
「お頭、終わったか?」
「ジルまだぁ?」
「もうすぐだからちょっと待ってよ!」
迅速且つ慎重に計算しないと、“桁”を間違えちゃうよ。こんな数字数えた事ないもんだって。ただ計算してるだけなのに手汗も凄いし震えが止まらない。書く数字もいびつな形になってるよ。
「――よし。出来た」
無意識の内に肩にも凄い力が入っていた。ふぅーっと僕は深呼吸して、今しがた終わった“売上帳”に再度視線を落とした。
数字が驚愕過ぎて、気を抜くと視線どころか目ん玉ごと落ちそうだ。
「どれどれ」
「ジル見せて!」
ティファ―ナとディオルドも、売上帳を覗き込んできた。
「――さぁて。それじゃ俺らもひと稼ぎと行こうかティファ―ナ」
「うん!どんどん稼ごう」
「無理だけはしないでよ2人共」
冒険者ギルドに着いた僕達は早速クエストを選ぼうとしていた。
異常なティファ―ナでも1千万稼ぐのに1週間は掛かった。とは言っても、ランクが上がった後半の報酬とペース計算すれば、正直もっと稼いでいる。Bランクからまた報酬額が一気に高くなったからね。本当に前の様なペースでこなす気なら、ティファ―ナだけでも1日400~500万Gを稼ぎ出す計算だ。恐ろしい。
「ティファ―ナはBランクだっけ?それなら何より先ずAランクにするんだ」
ディオルドが少し真面目な顔でそう言った。
「どうして?」
「Bランクでも十分報酬が高いが、Aランクはそこからまた高くなる。当たり前だがな。それにAランク以上には更に“スマイル・ベット”が受けられる」
「――⁉」
「何それ?」
Aランク以上の冒険者が受けられるという“超高額報酬クエスト”、別名『スマイル・ベット』
その昔、ある王家が暇つぶしの賭けで、世界中の冒険者に1つの超高額クエストを依頼した。
クエスト内容は、モンスターの中で絶対的トップに君臨する“ドラゴン”の討伐。
数百年以上前は、今ほど魔力が発達していなく、人間や他の種族がドラゴンを倒すなんてあり得ない時代。
そんな時代で、その場にいた王家の者達が「こんなの出来る筈がない」と大笑いしながらクエストを出したことから、『笑いの賭け』と呼ばれる様になったと言う―。
これは、数百年経った現代でも当たり前の様に存在している。しかし、長年の歴史の中で徐々に変化していき、今ではドラゴンとまではいかないにしても、それと同レベルのモンスターの討伐等が、超高難度クエスト……スマイル・ベットとして指定されている。
「スマイル・ベットって本当にあるんだ……って、もしかしてディオルドAランクなの⁉」
「何言ってんだ今更。当たり前だろ」
ええ⁉ マジで⁉
「え、ディオルドって今いくつ?」
「18」
やっぱり! 僕と2つしか変わらない。それでもうAランクってヤバすぎるでしょ。ラウギリでもようやくCランクになったぐらいなのに。
「お頭の歳の時には、もうAランクだぜちなみに」
もうディオルドしか勝たん。
たった今あなたを化け物認定しました。
「待ってよ。しかもそれって当然魔力一切無しの剣術のみって事だよね……?」
「当り前だろ。クエスト1個でいちいち魔力なんか使えるか」
いくらここが剣と魔法の世界とは言え、魔力を一切使わないなんて有り得ないぞ。
侍や剣士は勿論、槍とか斧とかで戦う場合だって最低限魔力を纏わなきゃ、攻撃力だってないし、自分の身も危険だ。魔力0なんて、そんなのただの身体能力勝負じゃないか。なんてデタラメな男なんだ。
「その実力で何で騎士団の入団試験レベルで落ちるんだよ」
「あれは試験のやり方が良くねぇよな」
「その体質には同情するけどさ、そもそも何で騎士団に入りたかったの?」
「別に大した理由はないけどな。強いて言うなら、物心ついた時から俺に剣を教えた人が騎士団だったからかな」
ディオルドに剣を教えたと?
この化け物の上に更に化け物がいると?
「くだらねぇ質問は終わりだ。俺はもうスマイル・ベット受けてくるぜ。ティファ―ナも早くAランクになれよ」
「分かった。頑張る!」
そう言って、ディオルドとティファ―ナはそれぞれクエストへと旅立った。
また待ちぼうけか。まぁいいだろう。こうなったらやる事は1つ。商人として、ティファ―ナとディオルドの売上をしっかり記帳しよう。それしかない。
そして5日が経った―。
♢♦♢
~冒険者ギルド~
きっと僕は、これから先のまだかなり長い人生の中で、天変地異でも起こらない限り、驚くという感情は2度と生まれないだろう。
そう思える程の衝動をたった今……いや、正確には4日前から受けているんだ―。
「――な?問題なく稼げただろ?」
「凄いねスマイル・ベット! あまり数はないけど」
「まぁそれはしょうがねぇ。危険だし、額が額だからな」
冒険者ギルドの椅子に座りながら話すティファ―ナとディオルド。テーブルには飲み物とお菓子。
その隣のテーブルで、僕は黙々と計算中である。
「お頭、終わったか?」
「ジルまだぁ?」
「もうすぐだからちょっと待ってよ!」
迅速且つ慎重に計算しないと、“桁”を間違えちゃうよ。こんな数字数えた事ないもんだって。ただ計算してるだけなのに手汗も凄いし震えが止まらない。書く数字もいびつな形になってるよ。
「――よし。出来た」
無意識の内に肩にも凄い力が入っていた。ふぅーっと僕は深呼吸して、今しがた終わった“売上帳”に再度視線を落とした。
数字が驚愕過ぎて、気を抜くと視線どころか目ん玉ごと落ちそうだ。
「どれどれ」
「ジル見せて!」
ティファ―ナとディオルドも、売上帳を覗き込んできた。
0
お気に入りに追加
1,261
あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~
新米少尉
ファンタジー
「私は私の評価を他人に委ねるつもりはありません」
多くの者達が英雄を目指す中、彼はそんなことは望んでいなかった。
ただ一つ、自ら選択した道を黙々と歩むだけを目指した。
その道が他者からは忌み嫌われるものであろうとも彼には誇りと信念があった。
彼が自ら選んだのはネクロマンサーとしての生き方。
これは職業「死霊術師」を自ら選んだ男の物語。
~他のサイトで投稿していた小説の転載です。完結済の作品ですが、若干の修正をしながらきりのよい部分で一括投稿していきますので試しに覗いていただけると嬉しく思います~
不遇スキルの錬金術師、辺境を開拓する 貴族の三男に転生したので、追い出されないように領地経営してみた
つちねこ
ファンタジー
【4巻まで発売中】
貴族の三男であるクロウ・エルドラドにとって、スキルはとても重要なものである。優秀な家系であるエルドラド家において、四大属性スキルを得ることは必須事項であった。
しかしながら、手に入れたのは不遇スキルと名高い錬金術スキルだった。
残念スキルを授かったクロウは、貴族としての生き方は難しいと判断され、辺境の地を開拓するように命じられてしまう。
ところがクロウの授かったスキルは、領地開拓に向いているようで、あっという間に村から都市へと変革してしまう。
これは辺境の地を過剰防衛ともいえる城郭都市に作り変え、数多の特産物を作り、領地経営の父としてその名を歴史轟かすことになるクロウ・エルドラドの物語である。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる