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第2章~試験と赤髪と海上ギルド~
16 赤い旗の行方②
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♢♦♢
「――俺達も行こう」
「そうですね」
走るのを諦め、僕がふと横を見ると、試験官の2人が視界に入った。そっか、そりゃ試験官の人達が誰よりも早く行かなくちゃいけないよね。でもここからどうやって追いつくんだろう? まぁ騎士団だから当然その能力や実力があるに決まっているんだけど。
僕はそんな事を思いながら試験官を見ていると、さっきの討伐試験で召喚獣を出していた試験官の人が、徐に魔力を繰り出した。すると地面に淡く光り輝く魔法陣が現れ、そこから今度は鳥の様な姿をした召喚獣が出現した。
「すご……」
デカい鳥だなぁ。鳥の召喚獣は体長がざっと3m近くはあるだろうか。そして試験官の人達はその召喚獣の背中へと乗った。
あれで飛べば確かに一瞬だな……あ、そうだ。思いついてしまった。何か姑息な手段で気が引けるが仕方がない。
「あ、あの!」
「――⁉」
一緒に乗せてもらう。
もうこれしか手はない!
「君は……試験を受けている希望者じゃないね?こんな所でどうしたんだ?」
「あ、はい。試験を受けている者ではないのですが、その……騎士団にとても興味がありまして……是非試験を見学させてもらいたいです!お願いします!」
商人ならせめてもっと上手く交渉しろよ僕。
「何?入団試験をか?見学は可能だが、そういうのは事前に連絡してもらわないと」
「今回だけだ」
「……え?」
「早く乗りなさい。今回だけは特別に許可をしよう。生憎、こちらも急がないといけない。こんな森の奥まできたのならこのまま連れて行こう。しっかり見学するといい。行くぞ!」
「は、はい!ありがとうございます!」
♢♦♢
……という訳で、僕は奇跡的に追いつくことが出来た。しかもコソコソと隠れる事もなく1番良い席で見学の許可を貰ってしまった。試験管さんありがとうございますホントに。助かりました。流石、国や民を守る騎士団は素晴らしいよ。帰ったら騎士団へお礼の手紙を出そう。
「もう3㎞地点を通過してますね」
「そうみたいだな。何かしらの魔法でスタートダッシュを決めたのだろう。だが、希望者同士の勝負はこれからだ」
僕達は上空から皆を確認している。まだ試験は始まったばかりだが、こう見ると既にかなりの差が付いているな。大体の希望者がやっと1㎞地点ぐらいか。何か策がないと、この距離を巻き返すのは相当困難に思える。
けどやっぱり流石騎士団の入団希望者だな。いくら後ろでも誰1人として諦めてる人がいないや。僕とは全然違う。
「先頭はもうすぐ5㎞ぐらいですね。やっぱスピードが落ちてきましたか」
「余程の基礎体力が無い限り10㎞をスピード維持するのは無理だ。しかも普通の地面でなく、足場も悪ければ傾斜もある森の中だからな。尚更厳しいだろう。だが、毎年数人はいるんだよ。それを出来る奴らがな」
試験管の視線の先には、クレイさん達の姿があった―。
~4㎞地点~
「流石に少し疲れるな……」
「でももう半分ぐらいだ。直ぐに着くよ」
「図体ばっかで大した事ねぇな」
「何だとテメェ!まだ全然走れるってんだよ!」
「その割に意気上がってるけどな」
「やめろディオルド。このスピードでも十分追いつけるんだから。それに、他のグループと戦闘になった時の為に体力は残しておいた方がいい」
「さっき抜いた奴らは疲れ過ぎて攻撃の素振りも見せなかったけどな」
「そうならない様にペース配分が大事だ」
「10㎞ぐらいで疲れる奴の気が知れねぇな」
クレイさん達はスピードを落とすことなくどんどん進んでいた。
さっき攻撃した絨毯グループをいつの間にか抜き、クレイさん達の前には先頭を走る虎グループと他の2グループの計3組。離れていたその距離はかなり縮まっている。先頭からクレイさん達までは既に500m程にまで迫っていた。
「あ!また前に人が見えた!抜かしちゃお~っと」
「マジでこの子何者なんだよ。凄い体力だな」
「流石、僕が勝負を挑んだ相手だけあるねティファ―ナ君」
「さっきの討伐勝負の借りは返させてもらうからね」
「僕だって負ける気はないさ」
最早クレイさんのグループの一員なのかと思うティファ―ナ。人魚なのに他の人間より走りが得意ってどういう事なんだ。ゴーキンさんもディオルドさんも可笑しく思わないのかな? いや、思ってるよなきっと。ツッコミどころ満載だもん。
「あの子はさっきの討伐で1位だったクレイとかいう子のグループですよね?確か両端の男の子達と3人グループの筈ですが、横にいるもう1人の女の子はどこのグループでしょうか」
マズイ。ティファ―ナが乱入してるとバレてしまいそうだ。
「ここからだと“番号”の確認が出来ないが、まぁどこかのグループの子だろうな。女の子でこの体力は大したものだ」
番号?
そうか。そういえばクレイさん達も皆、胸のあたりに小さく番号が記されていたな。あれはそういう事だったのか。だから試験管さんは僕が話しかけた時に違うって直ぐに分かったんだね。今更だけど。
それにしてもマズイよティファ―ナ。あまり目立たない様に行動してくれ。
――っていう僕の心の声が聞こえてるのかな君は?
待て待て待て。
何だ? 何をしようとしている? 待つんだティファ―ナ!
何なんだ? 何なんだその、“今から魔法出しますよ”みたいな構えはッ――!!
「よ~し」
「――俺達も行こう」
「そうですね」
走るのを諦め、僕がふと横を見ると、試験官の2人が視界に入った。そっか、そりゃ試験官の人達が誰よりも早く行かなくちゃいけないよね。でもここからどうやって追いつくんだろう? まぁ騎士団だから当然その能力や実力があるに決まっているんだけど。
僕はそんな事を思いながら試験官を見ていると、さっきの討伐試験で召喚獣を出していた試験官の人が、徐に魔力を繰り出した。すると地面に淡く光り輝く魔法陣が現れ、そこから今度は鳥の様な姿をした召喚獣が出現した。
「すご……」
デカい鳥だなぁ。鳥の召喚獣は体長がざっと3m近くはあるだろうか。そして試験官の人達はその召喚獣の背中へと乗った。
あれで飛べば確かに一瞬だな……あ、そうだ。思いついてしまった。何か姑息な手段で気が引けるが仕方がない。
「あ、あの!」
「――⁉」
一緒に乗せてもらう。
もうこれしか手はない!
「君は……試験を受けている希望者じゃないね?こんな所でどうしたんだ?」
「あ、はい。試験を受けている者ではないのですが、その……騎士団にとても興味がありまして……是非試験を見学させてもらいたいです!お願いします!」
商人ならせめてもっと上手く交渉しろよ僕。
「何?入団試験をか?見学は可能だが、そういうのは事前に連絡してもらわないと」
「今回だけだ」
「……え?」
「早く乗りなさい。今回だけは特別に許可をしよう。生憎、こちらも急がないといけない。こんな森の奥まできたのならこのまま連れて行こう。しっかり見学するといい。行くぞ!」
「は、はい!ありがとうございます!」
♢♦♢
……という訳で、僕は奇跡的に追いつくことが出来た。しかもコソコソと隠れる事もなく1番良い席で見学の許可を貰ってしまった。試験管さんありがとうございますホントに。助かりました。流石、国や民を守る騎士団は素晴らしいよ。帰ったら騎士団へお礼の手紙を出そう。
「もう3㎞地点を通過してますね」
「そうみたいだな。何かしらの魔法でスタートダッシュを決めたのだろう。だが、希望者同士の勝負はこれからだ」
僕達は上空から皆を確認している。まだ試験は始まったばかりだが、こう見ると既にかなりの差が付いているな。大体の希望者がやっと1㎞地点ぐらいか。何か策がないと、この距離を巻き返すのは相当困難に思える。
けどやっぱり流石騎士団の入団希望者だな。いくら後ろでも誰1人として諦めてる人がいないや。僕とは全然違う。
「先頭はもうすぐ5㎞ぐらいですね。やっぱスピードが落ちてきましたか」
「余程の基礎体力が無い限り10㎞をスピード維持するのは無理だ。しかも普通の地面でなく、足場も悪ければ傾斜もある森の中だからな。尚更厳しいだろう。だが、毎年数人はいるんだよ。それを出来る奴らがな」
試験管の視線の先には、クレイさん達の姿があった―。
~4㎞地点~
「流石に少し疲れるな……」
「でももう半分ぐらいだ。直ぐに着くよ」
「図体ばっかで大した事ねぇな」
「何だとテメェ!まだ全然走れるってんだよ!」
「その割に意気上がってるけどな」
「やめろディオルド。このスピードでも十分追いつけるんだから。それに、他のグループと戦闘になった時の為に体力は残しておいた方がいい」
「さっき抜いた奴らは疲れ過ぎて攻撃の素振りも見せなかったけどな」
「そうならない様にペース配分が大事だ」
「10㎞ぐらいで疲れる奴の気が知れねぇな」
クレイさん達はスピードを落とすことなくどんどん進んでいた。
さっき攻撃した絨毯グループをいつの間にか抜き、クレイさん達の前には先頭を走る虎グループと他の2グループの計3組。離れていたその距離はかなり縮まっている。先頭からクレイさん達までは既に500m程にまで迫っていた。
「あ!また前に人が見えた!抜かしちゃお~っと」
「マジでこの子何者なんだよ。凄い体力だな」
「流石、僕が勝負を挑んだ相手だけあるねティファ―ナ君」
「さっきの討伐勝負の借りは返させてもらうからね」
「僕だって負ける気はないさ」
最早クレイさんのグループの一員なのかと思うティファ―ナ。人魚なのに他の人間より走りが得意ってどういう事なんだ。ゴーキンさんもディオルドさんも可笑しく思わないのかな? いや、思ってるよなきっと。ツッコミどころ満載だもん。
「あの子はさっきの討伐で1位だったクレイとかいう子のグループですよね?確か両端の男の子達と3人グループの筈ですが、横にいるもう1人の女の子はどこのグループでしょうか」
マズイ。ティファ―ナが乱入してるとバレてしまいそうだ。
「ここからだと“番号”の確認が出来ないが、まぁどこかのグループの子だろうな。女の子でこの体力は大したものだ」
番号?
そうか。そういえばクレイさん達も皆、胸のあたりに小さく番号が記されていたな。あれはそういう事だったのか。だから試験管さんは僕が話しかけた時に違うって直ぐに分かったんだね。今更だけど。
それにしてもマズイよティファ―ナ。あまり目立たない様に行動してくれ。
――っていう僕の心の声が聞こえてるのかな君は?
待て待て待て。
何だ? 何をしようとしている? 待つんだティファ―ナ!
何なんだ? 何なんだその、“今から魔法出しますよ”みたいな構えはッ――!!
「よ~し」
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