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46 使い方が分からない
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♢♦♢
~デバレージョ町~
ユリマとハクから全ての真相を告げられてから2日後。
すっかり体力も戻った俺は、先日皆で話した通り祖の王国へ旅立つ準備をしている。
この町は本当に良い人達ばかりだ。王国から指名手配されている俺達を追うどころか、とても親切で暖かく迎え入れてくれている。俺に限らずエミリアとフーリンもこの町の人達に助けてもらった事により皆早くも打ち解けていた。
「おーい、武器はここに置いておけばいいか?」
「はい! ありがとうございます!」
俺達が寝泊まりしている部屋の扉を開き、デバレージョに住んでいる町の人が武器を運んできてくれた。ユリマが既に手配済みと言っていた武器がこれだ。
エミリアは木の杖、フーリンは土の槍、そして俺は双剣。
多めに用意してくれたのか、フーリンが使う土の槍は10本も運ばれてきた。何本持っていくのだろうと何気なく見ていると、フーリンは一切の迷いなく10本全てを束ねて箙に差し込んだ。
やっぱりな。何となくやる気がしたんだよ。別に俺がどうこう言う事じゃないけどさ、ソレ重くない?
そんな事を思いながら、俺も町の人が運んできてくれた自分の双剣を腰に提げた。
「おー、絶対Aランクの双剣。しかも2組」
流石七聖天と言うべきか。こんな短期間で最高ランクの双剣を用意してくれた。それもちゃんと2組。これも俺の双剣事情を知っての事だよな。ホント、全てを視ていて怖いよユリマは。
「準備は整った?」
「うん、私は大丈夫」
「俺も何時でも行けるぞ」
ハクの問いかけにエミリアとフーリンが答えた。ハクはまた狼の姿に戻っているが、今までと違って言葉を話している。俺達に本当の正体を明かすタイミングを伺っていたらしいが、もうそれも済んだから隠す必要がない。
「よし、俺も大丈夫だハク。準備が出来たからユリマの所に行こう。祖の王国まで飛ばしてもらわないと」
「あ、そうだ! ユリマ様からコレを預かっていたんだ」
俺達がユリマの元に向かう為部屋を出ようとした瞬間、武器を運んできてくれた1人の男の人が思い出した様にそう言った。そして彼はポケットから何かを取り出し、そのままそれを俺に差し出してきた。
「ハハハハ。危ない危ない、忘れるところだった。武器と一緒にコレをユリマ様から預かっていたんだ。グリム君達に渡してくれとな」
「コレは?」
男の人が渡してきたのは1枚の紙切れ。
開くとそこには何やら魔法陣の様な模様が描かれていた。
「ああ、それを使えば祖の王国まで一瞬で転移出来るらしい。なんかユリマ様はどうしても“抜けられない用事”があるとかで今デバレージョにいないんだ。
グリム君達は武器が到着したら直ぐに旅立つからって、それを渡す様に頼まれたんだよ」
「そう言う事ね。分かった、ありがとうございます!」
「おお。確かに渡したよ。気を付けてな」
町の人達はそう言って部屋を後にしていった。
成程、アンタには全部お見通しって訳かユリマ。
「って事らしいから、有り難くコレ使って祖の王国に行くとするか。ユリマにも改めてちゃんと礼を言いたかったけど」
「そうね。でもユリマ様も忙しいから、また戻って来た時にお礼を言いましょう」
「ああ。それじゃあもう皆いいか? 使うぞ」
皆が頷き、俺は魔法陣が描かれた紙を掌に広げて置いた。
「って、コレどうやって使うの?」
紙を開いているものの、全くうんともすんとも反応しない。
「もう、何やってるのグリム。ちょっと貸して」
見かねたエミリアは俺の手から紙を取るや否や、いとも簡単に魔法陣の効果を発動させた。
凄い。どういう仕組みなんだこれは。俺と同じでただ持っただけなのに。
エミリアが紙を持った瞬間、描かれた魔法陣と同じものが床に現れ光り出していた。
「この魔法陣に入ればもう転移出来るよ。この紙は1度だけの使い切りだから戻れない。忘れ物ないよね?」
「大丈夫だ」
「俺も」
「私も大丈夫。向こうに着いたら後は私が案内するわ。でも、これだけは覚えておいて……。
祖の王国は何百年も前に、リューティス王国との戦いで今の最果ての地に追いやられてしまったわ。だから祖の獣人族の多くは人間を恨んでいる。リューティス王国の民は特にね」
真剣な面持ちで語ったハクは何処か寂しく儚げな表情をふと浮かべていた。一瞬だったけど、俺にはそう見えたんだ。
「そうだよね……。今ではもう古い歴史になっているけど、獣人族の思いは私達には計り知れない」
「当時の事は勿論グリム達のせいじゃないし、獣人族の中にも人間が好きで平和を望んでいる者もいる。でも、深淵神アビスを召喚するという禁忌に触れた事を未だに許していなのも事実なの」
「分かったよハク。俺達も十分に気を引き締める。でも決して争いにいく訳じゃないんだ。難しいかもしれないけど、お互いに歩み寄ればきっと大丈夫」
「うん……。私もそう願っているわ」
リューティス王国と祖の王国の因縁は根深い。これは多分、俺達が思っている以上に深いものだ。だがこの終焉を終わらせる為には前に進むしかない。
改めて決意を固めた俺達は魔法陣に入り、祖の王国へと転移した――。
~デバレージョ町~
ユリマとハクから全ての真相を告げられてから2日後。
すっかり体力も戻った俺は、先日皆で話した通り祖の王国へ旅立つ準備をしている。
この町は本当に良い人達ばかりだ。王国から指名手配されている俺達を追うどころか、とても親切で暖かく迎え入れてくれている。俺に限らずエミリアとフーリンもこの町の人達に助けてもらった事により皆早くも打ち解けていた。
「おーい、武器はここに置いておけばいいか?」
「はい! ありがとうございます!」
俺達が寝泊まりしている部屋の扉を開き、デバレージョに住んでいる町の人が武器を運んできてくれた。ユリマが既に手配済みと言っていた武器がこれだ。
エミリアは木の杖、フーリンは土の槍、そして俺は双剣。
多めに用意してくれたのか、フーリンが使う土の槍は10本も運ばれてきた。何本持っていくのだろうと何気なく見ていると、フーリンは一切の迷いなく10本全てを束ねて箙に差し込んだ。
やっぱりな。何となくやる気がしたんだよ。別に俺がどうこう言う事じゃないけどさ、ソレ重くない?
そんな事を思いながら、俺も町の人が運んできてくれた自分の双剣を腰に提げた。
「おー、絶対Aランクの双剣。しかも2組」
流石七聖天と言うべきか。こんな短期間で最高ランクの双剣を用意してくれた。それもちゃんと2組。これも俺の双剣事情を知っての事だよな。ホント、全てを視ていて怖いよユリマは。
「準備は整った?」
「うん、私は大丈夫」
「俺も何時でも行けるぞ」
ハクの問いかけにエミリアとフーリンが答えた。ハクはまた狼の姿に戻っているが、今までと違って言葉を話している。俺達に本当の正体を明かすタイミングを伺っていたらしいが、もうそれも済んだから隠す必要がない。
「よし、俺も大丈夫だハク。準備が出来たからユリマの所に行こう。祖の王国まで飛ばしてもらわないと」
「あ、そうだ! ユリマ様からコレを預かっていたんだ」
俺達がユリマの元に向かう為部屋を出ようとした瞬間、武器を運んできてくれた1人の男の人が思い出した様にそう言った。そして彼はポケットから何かを取り出し、そのままそれを俺に差し出してきた。
「ハハハハ。危ない危ない、忘れるところだった。武器と一緒にコレをユリマ様から預かっていたんだ。グリム君達に渡してくれとな」
「コレは?」
男の人が渡してきたのは1枚の紙切れ。
開くとそこには何やら魔法陣の様な模様が描かれていた。
「ああ、それを使えば祖の王国まで一瞬で転移出来るらしい。なんかユリマ様はどうしても“抜けられない用事”があるとかで今デバレージョにいないんだ。
グリム君達は武器が到着したら直ぐに旅立つからって、それを渡す様に頼まれたんだよ」
「そう言う事ね。分かった、ありがとうございます!」
「おお。確かに渡したよ。気を付けてな」
町の人達はそう言って部屋を後にしていった。
成程、アンタには全部お見通しって訳かユリマ。
「って事らしいから、有り難くコレ使って祖の王国に行くとするか。ユリマにも改めてちゃんと礼を言いたかったけど」
「そうね。でもユリマ様も忙しいから、また戻って来た時にお礼を言いましょう」
「ああ。それじゃあもう皆いいか? 使うぞ」
皆が頷き、俺は魔法陣が描かれた紙を掌に広げて置いた。
「って、コレどうやって使うの?」
紙を開いているものの、全くうんともすんとも反応しない。
「もう、何やってるのグリム。ちょっと貸して」
見かねたエミリアは俺の手から紙を取るや否や、いとも簡単に魔法陣の効果を発動させた。
凄い。どういう仕組みなんだこれは。俺と同じでただ持っただけなのに。
エミリアが紙を持った瞬間、描かれた魔法陣と同じものが床に現れ光り出していた。
「この魔法陣に入ればもう転移出来るよ。この紙は1度だけの使い切りだから戻れない。忘れ物ないよね?」
「大丈夫だ」
「俺も」
「私も大丈夫。向こうに着いたら後は私が案内するわ。でも、これだけは覚えておいて……。
祖の王国は何百年も前に、リューティス王国との戦いで今の最果ての地に追いやられてしまったわ。だから祖の獣人族の多くは人間を恨んでいる。リューティス王国の民は特にね」
真剣な面持ちで語ったハクは何処か寂しく儚げな表情をふと浮かべていた。一瞬だったけど、俺にはそう見えたんだ。
「そうだよね……。今ではもう古い歴史になっているけど、獣人族の思いは私達には計り知れない」
「当時の事は勿論グリム達のせいじゃないし、獣人族の中にも人間が好きで平和を望んでいる者もいる。でも、深淵神アビスを召喚するという禁忌に触れた事を未だに許していなのも事実なの」
「分かったよハク。俺達も十分に気を引き締める。でも決して争いにいく訳じゃないんだ。難しいかもしれないけど、お互いに歩み寄ればきっと大丈夫」
「うん……。私もそう願っているわ」
リューティス王国と祖の王国の因縁は根深い。これは多分、俺達が思っている以上に深いものだ。だがこの終焉を終わらせる為には前に進むしかない。
改めて決意を固めた俺達は魔法陣に入り、祖の王国へと転移した――。
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