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第三章 大商国ブルム
第九話 契約
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「あ、俺はロバートと言います。本日は紹介を受けて商品を持って来ました」
ロバートは懐より紹介状を取り出しミギマに渡す。
それにしてもロバート普通に喋ることも出来たんだな。いつもの「っす」がないとなんか変な感じだ。
「ほう! ジマさんの紹介ですかぁ! という事は王国で商売を?」
「そうです。普段はタリオ村の物を卸しています」
「ほう! タリオ村は自然豊かですからねぃ! 商品も期待できますねぇ!」
へえ、あんな田舎村を知ってるなんてこのミギマという商人は見た目によらずやり手の様だな。
「どれどれ、それでは商品を拝見しまーすぅ!」
「ど、どうぞっす」
緊張で口調が戻ってるぞロバート。
ロバートはガチガチになりながらも荷車から商品を降ろす。
今回持ってきたのは塩と砂糖、そして回復薬だ。どれも軽くて日持ちし利益率がいい。遠くに運ぶ商品としてはうってつけだ。
「むむむ、この塩は……!」
ミギマがスライムが作った塩を凝視する。
何か変なところでもあっただろうか。俺は少し緊張する。
もし普通の塩と比べて変なところがあったらどうしよう。製法が特殊だからその可能性はあるな。
俺たちは気づかなかったけど一流の商人なら気づくのではないだろうか。
「ちょっと失礼しますよ」
ミギマはそう言って塩を一つまみし、なめる。
すると神妙な面持ちでこちらに振り返る。い、いったいどうしたんだ?
「ロバートさん。この塩ですが……」
「は、はいっす」
俺たちの間に緊張が走る。
もしこれが異常なモノだと認定されてしまったらもうこの国で商売ができなくなってしまうかもしれない。
ミギマはたっぷりと間を溜めて……こう言った。
「この塩…………素ぅん晴らしいィ―ですね!!」
「「え?」」
思わず聞き返してしまう俺とロバート。
今、素晴らしいと言ったか?
「いやあ私も長年商人をやっていますがここまで綺麗な塩は初めて見ましたよぉ! 一体どのような製法だとこうなるのか! いやあホント感動しました!」
「あ……どもっす」
照れるロバート。
塩づくりにロバートは噛んでいないだがな。まあそれを今言うのは野暮だろう。
空気の読める俺は黙って見守るぜ。
「これだけ質のいーい物であれば直ぐに買い手がつくでしょう!」
ミギマはそろばんを取り出しパチパチと音を立てて打ち始める。
この世界にもそろばんなんてあったんだな。そういえば科学の発達していないこの世界には当然ながら電卓なんてない。もしかしたら魔道具でそういうのもあるかもしれないが魔道具はかなり値が張るっていうからな。
安価で作れるそろばんがこの世界で発明されるのも当然っちゃ当然か。
「こぉのクオリティで一樽分だとぉ……このくらいの値段で取引させていただけませんか」
「こ、こんなにっすか!?」
ミギマはそろばんを弾くのをやめ、ロバートに見せる。
残念ながら俺はそろばんの数字が分からないので一体いくらになったかは分からないが、ロバートの反応でその数字が凄いモノだというのは分かった。
「もちろん初めての取引という事で色は付けさせていただいてます。この額は今後ともウチに商品を卸していただけるならという価格になりまぁす!」
「むう、定期的、っすか……」
ロバート唸りながらは考え込む。
普通ならすぐに食いつくような話なのだろうがロバートは慎重な性格だ。自分の独断でこんな大口の取引をしていいのか悩んでいるのだろう。
この取引はロバート一人で成り立っていない。生産は俺やスライムがいない出来ないし、村の物を出荷する量も減るから村人にも迷惑がかかる。
責任感の強いあいつのことだ、自分の利益を優先するか今まで関わりあった人々を優先するか答えが出せなくなっているのだろう。
「どういたしますかぁ?」
「むむむ……」
悩むロバートは一瞬だけ、俺に目を配す。
本人も意識はしていないだろうがその目は確かに助けを求めているように見えた。
オッケーわかった。俺が何とかしてやるよ。
ロバートは懐より紹介状を取り出しミギマに渡す。
それにしてもロバート普通に喋ることも出来たんだな。いつもの「っす」がないとなんか変な感じだ。
「ほう! ジマさんの紹介ですかぁ! という事は王国で商売を?」
「そうです。普段はタリオ村の物を卸しています」
「ほう! タリオ村は自然豊かですからねぃ! 商品も期待できますねぇ!」
へえ、あんな田舎村を知ってるなんてこのミギマという商人は見た目によらずやり手の様だな。
「どれどれ、それでは商品を拝見しまーすぅ!」
「ど、どうぞっす」
緊張で口調が戻ってるぞロバート。
ロバートはガチガチになりながらも荷車から商品を降ろす。
今回持ってきたのは塩と砂糖、そして回復薬だ。どれも軽くて日持ちし利益率がいい。遠くに運ぶ商品としてはうってつけだ。
「むむむ、この塩は……!」
ミギマがスライムが作った塩を凝視する。
何か変なところでもあっただろうか。俺は少し緊張する。
もし普通の塩と比べて変なところがあったらどうしよう。製法が特殊だからその可能性はあるな。
俺たちは気づかなかったけど一流の商人なら気づくのではないだろうか。
「ちょっと失礼しますよ」
ミギマはそう言って塩を一つまみし、なめる。
すると神妙な面持ちでこちらに振り返る。い、いったいどうしたんだ?
「ロバートさん。この塩ですが……」
「は、はいっす」
俺たちの間に緊張が走る。
もしこれが異常なモノだと認定されてしまったらもうこの国で商売ができなくなってしまうかもしれない。
ミギマはたっぷりと間を溜めて……こう言った。
「この塩…………素ぅん晴らしいィ―ですね!!」
「「え?」」
思わず聞き返してしまう俺とロバート。
今、素晴らしいと言ったか?
「いやあ私も長年商人をやっていますがここまで綺麗な塩は初めて見ましたよぉ! 一体どのような製法だとこうなるのか! いやあホント感動しました!」
「あ……どもっす」
照れるロバート。
塩づくりにロバートは噛んでいないだがな。まあそれを今言うのは野暮だろう。
空気の読める俺は黙って見守るぜ。
「これだけ質のいーい物であれば直ぐに買い手がつくでしょう!」
ミギマはそろばんを取り出しパチパチと音を立てて打ち始める。
この世界にもそろばんなんてあったんだな。そういえば科学の発達していないこの世界には当然ながら電卓なんてない。もしかしたら魔道具でそういうのもあるかもしれないが魔道具はかなり値が張るっていうからな。
安価で作れるそろばんがこの世界で発明されるのも当然っちゃ当然か。
「こぉのクオリティで一樽分だとぉ……このくらいの値段で取引させていただけませんか」
「こ、こんなにっすか!?」
ミギマはそろばんを弾くのをやめ、ロバートに見せる。
残念ながら俺はそろばんの数字が分からないので一体いくらになったかは分からないが、ロバートの反応でその数字が凄いモノだというのは分かった。
「もちろん初めての取引という事で色は付けさせていただいてます。この額は今後ともウチに商品を卸していただけるならという価格になりまぁす!」
「むう、定期的、っすか……」
ロバート唸りながらは考え込む。
普通ならすぐに食いつくような話なのだろうがロバートは慎重な性格だ。自分の独断でこんな大口の取引をしていいのか悩んでいるのだろう。
この取引はロバート一人で成り立っていない。生産は俺やスライムがいない出来ないし、村の物を出荷する量も減るから村人にも迷惑がかかる。
責任感の強いあいつのことだ、自分の利益を優先するか今まで関わりあった人々を優先するか答えが出せなくなっているのだろう。
「どういたしますかぁ?」
「むむむ……」
悩むロバートは一瞬だけ、俺に目を配す。
本人も意識はしていないだろうがその目は確かに助けを求めているように見えた。
オッケーわかった。俺が何とかしてやるよ。
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