澄んだ空【BL】

水月 花音

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 恋に落ちた音がした。



 流れる汗、眩しい笑顔、それに清々しいほどの青空だった。

 彼の名前は秋山智久ともひさ。イケメンだとは思っていたが、まさかこの俺が男を好きになる日が来るとは思っていなかった。

 好きになったのは、突然だった。

 ただのクラスメイト。話したこともあまりない。

 秋山はサッカー部だった。帰り際、ふとフェンス越しに秋山が見えた。光る汗、楽しそうな笑い声に、焼けた肌。そして、汗を拭き取る時に見えた焼けてない肌に目眩がした。


 どうやって接近しようか。そんな事を考えながら、日々は過ぎて行く。

 そんなある日、転機が訪れた。


 移動教室に行く道すがら、秋山は4段くらい高い所に居た。その後を追うように階段を登っていく。

 秋山は、クラスメイトの友人と談笑しながら歩いていた。その友人がふざけて秋山を押した。
 ちょうど後ろを歩いていた俺に秋山が降ってくる。

 当たる!と思った時にはもう遅く、見た目より重い秋山に押し潰されていた。

「佐藤!大丈夫か?」

 秋山の心配そうな顔が、近くにある。大丈夫、と言おうとして左脚が痛いのに気づいた。

「足が痛い」

 グンッと体が浮き上がる。自分がお姫様抱っこされていると気づいて、顔が赤くなる。

「佐藤、ごめんな」

「秋山のせいじゃないだろ。てか、恥ずいって」

「我慢してくれ」

 え、降ろしてくれないのか。恥ずかしいついでに秋山の首に抱きつく。
 何じゃこれ、役得か。筋肉質な体に、ドキドキする。

 保健室に行ったら、親を呼ばれて病院送りになった。

 結果、捻挫だった。靭帯が伸びているようで、松葉杖を使うように言われた。なるほど、歩くと痛いので、大袈裟だけど松葉杖をつくことにした。

「佐藤!大怪我じゃん!」

 秋山が顔を青くして俺の周りをうろつく。可愛いかよ。

「大丈夫、大丈夫。捻挫だから」

「俺、送り迎えしようか?」

 それって、一緒に登下校できるってこと?

「本当に?」

「うん。佐藤家近かったよな」

「近い。普通だと5分くらいで着く」

「じゃあ、帰りな!」

 眩しい笑顔とともに秋山が離れて行く。同じクラスなので、そう大して離れていないが。

 秋山と帰れるのが嬉しい。

「飛鳥、随分嬉しそうだね」

「へ?そんなことない」

「いや、ニヤニヤしてたぞ」

「してない!」

 気をつけないと、友人のコイツ。高畑にはバレるかもしれないと思った。
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