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第八章【旅の果て】

第百二十六話 執事

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「マリヤ、午前中は俺の上に乗ってくれない?」

「は!?何言ってんの?」

 朝、グリードのとこに来たら、柔らかい顔で変なことを言ってきた。

 上に乗るってなに!?

「ただ、俺が寝転ぶから、その上に乗って欲しかったんだけど」

「あ!あー、そういうこと!?」

「マリヤ、顔が真っ赤になってる。何想像した?」

 グリードが上に乗ってとか言うから!!

 抱きしめられて、頬をぷにぷにと突つかれる。

「それで、いい?エッチなことじゃないよね?」

 エッチなことではないんだけど、いいのかな。あれもダメこれもダメじゃあ、グリードに悪いし。

「わかった。寝転んで」

「うん」

 黒曜国の服に身を包んだグリードが、布団の上に寝転んだ。長い髪が気だるげに広がって、色香が漂う。
 期待しているような目で見られて、ドクンと心臓が高鳴った。

 グリードの足の辺りに跪いて、じりじりと近づいていく。ぴたっとくっつくように上に乗ると、彼の心臓がドクドクと脈打っているのが聞こえた。

「すごい音」

「俺も生きてるからね」

 この人を殺さなきゃいけないんだ。

 そうだとしても、今は何も考えたくない。

「グリード?何か話して」

「話?どうしようかな。特に話したいことはないけど、マリヤの話は聞きたいかな」

「俺の話?」

「そう。マリヤがどうやって生まれて、どうやって生きてきたか、知りたい」

 グリードがそう言うから、思いつく限りのことを話した。時折り、グリードからの相槌があり、それが重なった体に響く。
 低いバリトンの返事に体が熱くなった。やっぱり、グリードのことを好きみたい。一緒に居れば居るほど惹かれていく。

 お昼になったのと、このままはヤバいと思ってぐいっとグリードの上から退いた。


 お昼を食べている時に、明日、賢者の元へ出立するのが決定したとアリアムさんから言われる。随分と早い。大体いつもは1週間くらい居るのに……

 午後は、散歩に出かけた。

 グリードと恋人繋ぎをしていると、エリオネルに罪悪感を感じる。エッチなことなしなのに、こんなに色々できるとは知らなかった。
 グリードはずっと優しい顔をしていて、それもなんだか居た堪れなかった。

 色んな景色を見に行く。グリードとの時間は案外心地よくて、自然に笑ってるのに気づいた。
 そんな俺を見て、グリードが微笑む。こんなに穏やかな時間だけでいいのだろうか?




 翌日、エリオネルの元に戻ると、紫炎陛下に挨拶して、黒曜国を離れることになった。
 グリードはというと、リチアさんと一緒にアキトで居た頃と変わらずに過ごしているらしい。リチアさんは、グリードがアキトで居た頃と変わらずというわけにはいかないだろうけど。
 嘉伯くんはというと、顔を合わせると諦め切れなくなるからと、赤羅さんから手紙を預かった。そこには、謝罪の言葉とできるだけ早く諦めたいということ、次に会ったら友人として親しくしてほしいということが書いてあった。

 港に着くと、行きと同じ船が停まっていた。どうやら、行きに来たまま待っていてくれたらしい。

 今は、エリオネルが何か準備があるからと部屋から追い出されたので、部屋の前で待っている所だ。

「マリヤ」

 コンコンと扉を叩く音が聞こえる。もう良いのかな?と思って扉を開くと、執事の格好をしたエリオネルが部屋の中に立っていた。

「エリオネル!!」

 めちゃくちゃ似合っててカッコいい!!

 髪を撫でつけ、片眼鏡をしたエリオネルは、神経質そうな見た目になっているが、それもすごく魅力的に見える。

 クロスタイに燕尾服……良すぎ。

「ご主人様、こちらへ」

「う、うん」

 エリオネルにご主人さまって言われるのこそばゆい。ベッドに座ると、エリオネルが俺の足元に跪いてきた。
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