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第七章【鬼の国】
第百二十三話 諦めた
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「エリオネル?」
落ちてしまって、起きたらエリオネルが居なかった。
書き置きがある。書物室に居るから、起きたら来て、か。
「マリヤ?」
障子がコンコンと叩かれる。
「はーい」
「嘉伯だけど」
嘉伯くん!?一人しか居ないのに、どうしよう!?
「話があるから、中庭出てこない?」
「わかった」
外だったら大丈夫だろう。障子越しにあった嘉伯くんの気配が消える。
さっと着替えて中庭に出ると、嘉伯くんが待っていた。
「マリヤ、来てくれてありがとう。二人は怖いかと思ったから、あそこに赤羅居る」
嘉伯くんが指した方向には、真っ直ぐ前を向いて立ってる赤羅さんが居る。気遣いが嬉しい。
嘉伯くんの隣に立つと、彼は少しため息を吐いた。
「マリヤ、初日のことは本当にごめん。マリヤ嫌がってないと思ってだんだけど、ちゃんと嫌がってたよな」
「ううん、俺も力出ないのに戸惑って全然抵抗できなかったし」
「マリヤのせいじゃない。本当にごめん」
頭を下げてくれる嘉伯くんの頭を、ポンポンと撫でる。
「それでさ、毎日エリオネルと居るんならどうにか入る隙があるかなと思ってだんだけど、魔王入ってきて無理そうだし、殺されそうだから、ついてくのは諦めた」
「殺しはしないと思うけど……」
「諦めるのなんて初めてでさ、諦められるのかもわからないけど、頑張ってみるよ」
顔を上げた嘉伯くんは、泣きそうだったけど、どこか晴れたような顔もしていた。
「本当は諦めたくねー!」
「ごめんね」
前の聖者みたいに、応えられなくてごめん。でも、俺、エリオネル以外は無理なんだ。
「やっぱり無理か」
嘉伯くんがガックリと肩を落とす。
「エリオネルと別れたら連絡して」
アイオライトくんに引き続きなんだけど、ユリアーノさんも居るし……いやいや別れないから。
「別れない」
「うん。俺もそう思う」
嘉伯くんがそんな風に思ってるなんて意外でビックリする。
「ありがとう」
「あー!何でそんな可愛いんだよ!!」
「ごめん?」
二人でひとしきり笑うと、嘉伯くんは書物室までエスコートしてくれた。
「マリヤ?」
部屋に入ると心配したエリオネルが駆けてくる。嘉伯くんは、部屋の前まで俺をエスコートすると帰って行った。
「嘉伯くんと中庭でちょっとお話しした」
「気をつけてた?」
「うん。赤羅さんも居たよ。嘉伯くん、諦めてくれるって」
「そうか」
エリオネルがホッとしたように息を吐いた。
「あ」
思い出したかのように声を上げると、エリオネルは部屋の外へ出て行った。
「何もなかったですか?ありがとうございました」
外にはいつから居たのか女中さんが居た。その女中さんにエリオネルが話しかけている。
「だれ?」
「マリヤの護衛頼んだ人」
何もなしで置いていかれたわけじゃなかったんだと気づいて、嬉しくなった。起きて居なくなってると寂しいよね。
ぎゅっとエリオネルに抱きつくと、彼は優しく抱きしめ返してくれた。
「エリオネルのこと、大好きだよ」
「ありがとう、私は愛してるよ」
触れるだけの口づけを交わす。
「俺だって愛してるもん」
「は、かわい」
ちゅ、ちゅ、と頬に沢山キスが降ってきた。抱きしめられながら、キスを受けていると、手がお尻に伸びてくる。
「あ!解読まだでしょ?」
「ちょっとだけ」
「んっ、ダメだってば」
「マリヤ」
熱っぽい声で囁かれる。俺、エリオネルにとことん弱いかも。
「あ、あん」
お尻を揉みしだかれて、声が漏れた。
「マリヤ?」
「だって、触られたら感じちゃう」
「はー、ホント」
痛いくらいに抱きしめられて、肩口でため息が聞こえる。
「可愛すぎるの、どうにかならない?」
そんなの。どうにもならない。
落ちてしまって、起きたらエリオネルが居なかった。
書き置きがある。書物室に居るから、起きたら来て、か。
「マリヤ?」
障子がコンコンと叩かれる。
「はーい」
「嘉伯だけど」
嘉伯くん!?一人しか居ないのに、どうしよう!?
「話があるから、中庭出てこない?」
「わかった」
外だったら大丈夫だろう。障子越しにあった嘉伯くんの気配が消える。
さっと着替えて中庭に出ると、嘉伯くんが待っていた。
「マリヤ、来てくれてありがとう。二人は怖いかと思ったから、あそこに赤羅居る」
嘉伯くんが指した方向には、真っ直ぐ前を向いて立ってる赤羅さんが居る。気遣いが嬉しい。
嘉伯くんの隣に立つと、彼は少しため息を吐いた。
「マリヤ、初日のことは本当にごめん。マリヤ嫌がってないと思ってだんだけど、ちゃんと嫌がってたよな」
「ううん、俺も力出ないのに戸惑って全然抵抗できなかったし」
「マリヤのせいじゃない。本当にごめん」
頭を下げてくれる嘉伯くんの頭を、ポンポンと撫でる。
「それでさ、毎日エリオネルと居るんならどうにか入る隙があるかなと思ってだんだけど、魔王入ってきて無理そうだし、殺されそうだから、ついてくのは諦めた」
「殺しはしないと思うけど……」
「諦めるのなんて初めてでさ、諦められるのかもわからないけど、頑張ってみるよ」
顔を上げた嘉伯くんは、泣きそうだったけど、どこか晴れたような顔もしていた。
「本当は諦めたくねー!」
「ごめんね」
前の聖者みたいに、応えられなくてごめん。でも、俺、エリオネル以外は無理なんだ。
「やっぱり無理か」
嘉伯くんがガックリと肩を落とす。
「エリオネルと別れたら連絡して」
アイオライトくんに引き続きなんだけど、ユリアーノさんも居るし……いやいや別れないから。
「別れない」
「うん。俺もそう思う」
嘉伯くんがそんな風に思ってるなんて意外でビックリする。
「ありがとう」
「あー!何でそんな可愛いんだよ!!」
「ごめん?」
二人でひとしきり笑うと、嘉伯くんは書物室までエスコートしてくれた。
「マリヤ?」
部屋に入ると心配したエリオネルが駆けてくる。嘉伯くんは、部屋の前まで俺をエスコートすると帰って行った。
「嘉伯くんと中庭でちょっとお話しした」
「気をつけてた?」
「うん。赤羅さんも居たよ。嘉伯くん、諦めてくれるって」
「そうか」
エリオネルがホッとしたように息を吐いた。
「あ」
思い出したかのように声を上げると、エリオネルは部屋の外へ出て行った。
「何もなかったですか?ありがとうございました」
外にはいつから居たのか女中さんが居た。その女中さんにエリオネルが話しかけている。
「だれ?」
「マリヤの護衛頼んだ人」
何もなしで置いていかれたわけじゃなかったんだと気づいて、嬉しくなった。起きて居なくなってると寂しいよね。
ぎゅっとエリオネルに抱きつくと、彼は優しく抱きしめ返してくれた。
「エリオネルのこと、大好きだよ」
「ありがとう、私は愛してるよ」
触れるだけの口づけを交わす。
「俺だって愛してるもん」
「は、かわい」
ちゅ、ちゅ、と頬に沢山キスが降ってきた。抱きしめられながら、キスを受けていると、手がお尻に伸びてくる。
「あ!解読まだでしょ?」
「ちょっとだけ」
「んっ、ダメだってば」
「マリヤ」
熱っぽい声で囁かれる。俺、エリオネルにとことん弱いかも。
「あ、あん」
お尻を揉みしだかれて、声が漏れた。
「マリヤ?」
「だって、触られたら感じちゃう」
「はー、ホント」
痛いくらいに抱きしめられて、肩口でため息が聞こえる。
「可愛すぎるの、どうにかならない?」
そんなの。どうにもならない。
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