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第七章【鬼の国】
第百二十話 条件
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ユリアーノさんが咳払いする。
「あの、見せられるの辛いのですが」
「すみません」
素直に謝る。一応、気をつけてはいるのだが、エリオネルが優先なので、仕方ない時もあった。
「それで、条件は教えてもらえるんですよね?」
エリオネルが鋭い声で尋ねる。
「マリヤにだけ教える」
グリードがこちらを見て、他の二人が頷いて部屋から出て行った。
「条件ってなに?」
「マリヤの来世」
グリードは緊張した様子もなく、胡座をかいている。
「来世?」
「そう。今世貰えるのが1番なんだけど、それは無理そうだから、マリヤの来世が欲しい」
「それって約束できなくない?」
「確約じゃなくても構わない」
「それでいいの?」
「賢者に会うまでの2日に1回と、来世一緒になるって約束してくれるなら、俺はそれでいい」
冗談を言っている感じではない。
「考える時間はくれる?」
「うん。賢者に会うまでに決めてくれればいい」
何だか悪魔とする契約みたいで、踏み切れない自分がいた。
「それと、誰にも内緒にして」
「うん。わかった」
内緒にするのも条件のうちの一つかな。エリオネルに言ったら絶対ダメだって言いそうだもんね。
部屋の外で待っててくれた二人を呼びに行く。
かくして、グリードとの生活が始まった。
話し合った結果、黒曜国でグリードと一緒にいる時は色々な所を見て回るという話になった。その時のお金は、教会から出るらしい。
黒曜国に居る間は、エリオネルは本の解読があるので、それが済み次第、賢者の元へ向かうことになった。海路で20日、陸路で6日ほどかかるらしい。
本当は各国から、魔王封印のために人員を割かなければならないらしいが、他国が介入すると後々の伴侶問題に起因するかもしれないので、このまま行くそうだ。
そうなるとユリアーノさん大丈夫なん?魔族対策で居てもらわなきゃ困るし、唯一グリードを何とかできるのはユリアーノさんしかいないか。……何とかできるのかな?
ハッキリしないことが多すぎて頭が痛い。なるようにしかならないか。
「考えごと?」
隣に居たグリードが心配してくれる。距離近いんだけど……
「グリードは封印されてもいいの?」
「マリヤになら何されてもいいよ」
グリードはどうやら、俺のことを愛しているらしい。その愛がどこから来るのかわからなくて釈然としないけど。
「はい」
手を出されたので、お手をする。する、と握り込まれた。
えっ、と思ったが、エッチなことではないので、離してとも言い辛い。
「はぐれたりしたら守れないから」
「うん」
ここは、黒曜国の下町である。グリードが行ってみたいと言ったので、観光がてらに来た。
下町に来るにあたり、エリオネルとグリードが戦ったのだが、剣術は互角だったが、魔法はグリードが圧勝した。絶対に俺を傷つけないという約束をして、護衛付きで散策を許可してもらった。
「どこ行きたいの?」
「マリヤは?」
「俺?俺は色々行ってみたいかな」
「ついて行くよ」
ニコニコはしていないが、俺が顔を向けると微笑んでくれる。その笑顔が破壊力抜群で、顔が赤くなった。
エリオネルが柔和な雰囲気の王子様だとしたら、グリードは野生味のある男前。精悍な顔立ちが優しく微笑んでいるのは心臓に悪い。
こうやって隣に居ると、好きだなと思ってしまう。頭の中に流れ込んでくるような、好きという気持ち。これは、エリオネルと居る時とは違う。
ただ、俺の気持ちは俺のものだ。エリオネルが1番で、エリオネルだけという気持ちは変わらない。
グリードと現実に向き合って、はっきりエリオネルを愛していると気付かされた。
グリードに対して、愛はない。それなのに、彼は俺を愛しているという。そこが何故だか腑に落ちないのだ。
何かを見落としているような、そんな感じがしていた。
ふ、と手に力が込められる。まとまらない頭で、自分がまた思考に耽っていたのだと気づいた。
「ごめん」
「いいよ。時間はいっぱいあるから」
優しいグリード。魔王なんて肩書き、嘘なんじゃないかと思うくらい穏やかだ。
「グリードは、何で魔王なの?」
「さあ?産まれた時には自分が魔王だって自覚していたし、悪い感情が自分を形作ってるのも感じる」
「それが不思議なんだよね。グリードって悪い感情っていうより、良い感情で形作られてる感じがする」
「それは、コントロールしてるからだよ」
「そうなんだ。やっぱり封印するの、おかしいと思う」
「俺を封印しないと、マリヤは後悔するよ」
そう言って、グリードは寂しく笑った。本当は封印されたくないのかもしれない。
「あの、見せられるの辛いのですが」
「すみません」
素直に謝る。一応、気をつけてはいるのだが、エリオネルが優先なので、仕方ない時もあった。
「それで、条件は教えてもらえるんですよね?」
エリオネルが鋭い声で尋ねる。
「マリヤにだけ教える」
グリードがこちらを見て、他の二人が頷いて部屋から出て行った。
「条件ってなに?」
「マリヤの来世」
グリードは緊張した様子もなく、胡座をかいている。
「来世?」
「そう。今世貰えるのが1番なんだけど、それは無理そうだから、マリヤの来世が欲しい」
「それって約束できなくない?」
「確約じゃなくても構わない」
「それでいいの?」
「賢者に会うまでの2日に1回と、来世一緒になるって約束してくれるなら、俺はそれでいい」
冗談を言っている感じではない。
「考える時間はくれる?」
「うん。賢者に会うまでに決めてくれればいい」
何だか悪魔とする契約みたいで、踏み切れない自分がいた。
「それと、誰にも内緒にして」
「うん。わかった」
内緒にするのも条件のうちの一つかな。エリオネルに言ったら絶対ダメだって言いそうだもんね。
部屋の外で待っててくれた二人を呼びに行く。
かくして、グリードとの生活が始まった。
話し合った結果、黒曜国でグリードと一緒にいる時は色々な所を見て回るという話になった。その時のお金は、教会から出るらしい。
黒曜国に居る間は、エリオネルは本の解読があるので、それが済み次第、賢者の元へ向かうことになった。海路で20日、陸路で6日ほどかかるらしい。
本当は各国から、魔王封印のために人員を割かなければならないらしいが、他国が介入すると後々の伴侶問題に起因するかもしれないので、このまま行くそうだ。
そうなるとユリアーノさん大丈夫なん?魔族対策で居てもらわなきゃ困るし、唯一グリードを何とかできるのはユリアーノさんしかいないか。……何とかできるのかな?
ハッキリしないことが多すぎて頭が痛い。なるようにしかならないか。
「考えごと?」
隣に居たグリードが心配してくれる。距離近いんだけど……
「グリードは封印されてもいいの?」
「マリヤになら何されてもいいよ」
グリードはどうやら、俺のことを愛しているらしい。その愛がどこから来るのかわからなくて釈然としないけど。
「はい」
手を出されたので、お手をする。する、と握り込まれた。
えっ、と思ったが、エッチなことではないので、離してとも言い辛い。
「はぐれたりしたら守れないから」
「うん」
ここは、黒曜国の下町である。グリードが行ってみたいと言ったので、観光がてらに来た。
下町に来るにあたり、エリオネルとグリードが戦ったのだが、剣術は互角だったが、魔法はグリードが圧勝した。絶対に俺を傷つけないという約束をして、護衛付きで散策を許可してもらった。
「どこ行きたいの?」
「マリヤは?」
「俺?俺は色々行ってみたいかな」
「ついて行くよ」
ニコニコはしていないが、俺が顔を向けると微笑んでくれる。その笑顔が破壊力抜群で、顔が赤くなった。
エリオネルが柔和な雰囲気の王子様だとしたら、グリードは野生味のある男前。精悍な顔立ちが優しく微笑んでいるのは心臓に悪い。
こうやって隣に居ると、好きだなと思ってしまう。頭の中に流れ込んでくるような、好きという気持ち。これは、エリオネルと居る時とは違う。
ただ、俺の気持ちは俺のものだ。エリオネルが1番で、エリオネルだけという気持ちは変わらない。
グリードと現実に向き合って、はっきりエリオネルを愛していると気付かされた。
グリードに対して、愛はない。それなのに、彼は俺を愛しているという。そこが何故だか腑に落ちないのだ。
何かを見落としているような、そんな感じがしていた。
ふ、と手に力が込められる。まとまらない頭で、自分がまた思考に耽っていたのだと気づいた。
「ごめん」
「いいよ。時間はいっぱいあるから」
優しいグリード。魔王なんて肩書き、嘘なんじゃないかと思うくらい穏やかだ。
「グリードは、何で魔王なの?」
「さあ?産まれた時には自分が魔王だって自覚していたし、悪い感情が自分を形作ってるのも感じる」
「それが不思議なんだよね。グリードって悪い感情っていうより、良い感情で形作られてる感じがする」
「それは、コントロールしてるからだよ」
「そうなんだ。やっぱり封印するの、おかしいと思う」
「俺を封印しないと、マリヤは後悔するよ」
そう言って、グリードは寂しく笑った。本当は封印されたくないのかもしれない。
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