青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

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第七章【鬼の国】

第百十三話 赤羅

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「落ち着きましたか?」

 髪の長い人が二人を睨む。

「あー、喧嘩久しぶりにしたー」

「私は初めてだよ」

「アンタ、結構強いんだな」

「嘉伯も流石、鬼だね」

 え?仲直りしたん?ってくらい雰囲気が良い。
 暴力反対だから、拳で語り合うとか全然わからないけど、そういうことなのかもしれない。

「今度喧嘩したら、しばらくシないからね!エリオネル」

「え、それは困る」

「困るんだったらしないで」

「わかった」

「嘉伯くんも!喧嘩はダメ」

「はーい」

 二人ともボロボロだ。痣もあるけど、幸いあまり腫れてはいないみたい。

「あの、喧嘩の仲裁ありがとうございました。お名前は?」

「私、セキラと申します。赤に羅針盤の羅で赤羅です」

「赤羅さん、助かりました」

「いえ、うちのボンクラが失礼いたしました」

 赤羅さんはさっぱりした塩顔のイケメンだった。上下濃紺の和装のような、忍っぽい服装をしている。

「ボンクラって言うの辞めろ」

「ボンクラはボンクラでしょうが。喧嘩の発端もどうせ嘉伯様でしょう?」

「はいはい、俺がマリヤにキスしたからですよ」

「アンタまたやったんですか!?」

 どうやら、嘉伯くんと赤羅さんは仲が良いみたいだ。気の置けない仲というんだろうか。やりとりを見ていると楽しい。

「聖者様が笑ってるから大丈夫なんでしょうけど、ホント辞めてくださいよ」

「ね、俺このまま押せ押せでいけるくない?」

「………頭おかしいんですか」

「えー、いけると思うんだけどなあ」

「いけません」

「えー!マリヤまで、ひどい」

 酷くはない。押したらいけると思ってる嘉伯くんの方が酷いよ。

「マリヤ、そろそろ書物室に行かなきゃいけないから、一緒に行こうか」

「あ、入っていいんだっけ?王族じゃないけど、聖者はいいっぽいもんね。楽しみ」

 いつもエリオネルだけ行っていた場所に、紫炎陛下のお許しもあって二人で行けることになった。
 確か、賢者さまの居場所を探ってるんだよね?グラム・ヘブン、オーケン、シリアネイズで調べてもわからないってことは、点々としてるってことなのかなあ。あまり詳しくは聞いてないから、書物室に行ったら聞いてみよう。

「俺も行く」

 嘉伯くんがそう言って、3人で書物室に行くことになった。



「エリオネル、読みにくくない?」

「ん?私は大丈夫だけど、マリヤは見にくい?」

 エリオネルの胸に背中を預けるようにして、2人掛けのソファーに二人で座っている。
 嘉伯くんは向かいのソファーで寝転んで、一人で本を読んでいた。俺たちがイチャイチャするのを全然気にしていない。嫉妬しても良さそうなのに、本当に不思議だ。

「大丈夫。賢者さまの居場所はわかったの?」

「うん、大体は。向かいながら、合ってるのか確認してるとこ」

「それでハルームの隣国アテナースは飛ばしたの?」

 ハルームでは、バルカスの件があって調べる所じゃなかったもんね。

「アテナース飛ばしたのは、バルカスが危なかったからってのが大元の原因かな」

「アテナースはハルームと仲が良いの?」

「そうだよ。さすがに引き渡したりはしないだろうけど、黙認はするんじゃないかな」

「バルカスにはもう会いたくない」

「バルカスって、ハルームの国王?どうかしたの?」

 嘉伯くんが話に入ってきて、聞いていたのかとビックリする。嘉伯くんは本を閉じて、ソファーに座った。

「マリヤが拐われて、後宮に無理矢理入れられたんだ」

「は!?拐うとかヤバすぎ。でも、ここに居るってことは、何とかなったんだ?」

「マリヤとバルカスが宮殿から出てしばらくした所で奪い返した」

「ヒュー!エリオネルやるうー!」

「本当に生きた心地がしなかった」

 エリオネルの腕に力がこもる。心なしか手が震えている気がした。

「もう国際問題になってんだ。マリヤすごいな」

「え?国際問題ってなに?!」

 そんな大事になってるの?!知らなかったんだけど。
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