上 下
113 / 147
第七章【鬼の国】

第百十二話 喧嘩

しおりを挟む
「一目惚れだけど、私が惚れたのは、マリヤの内面だよ。最初に会った時覚えてる?リチアを助けた時だよ。あんなにカッコいい人、初めて会った」

 カーッと顔が熱くなる。そうだったんだ、知らなかった。

「あ、俺顔かも……、ごめん」

「いいよ、顔も私の一部だから。私を好きになってくれたんだったら、何でもいい」

「性格も大好きだよ。エリオネルのこと、知る度に好きになっていってる」

 座っているエリオネルに、向かい合うように跨る。はあ、本当に大好きだな。この気持ちが嘘だなんて信じられないから、これでいいのか。
 ちゅ、と唇を合わせるとエリオネルがにこっと笑ってくれた。

「マリ」「あ!嘉伯くんあのまま置いてきちゃった!エリオネル、俺、嘉伯くんに会ってくる」

「ちょっと待って、マリヤ。何されたか忘れたの?」

 そう言われて昨日の色々を思い出す。行かせないように両手を腰に充てられて、立ち上がることができない。

「覚えてます」

「赤くなるの、可愛いけど気に入らない」

「エリオネル?おねがい」

「はあー、自分が可愛いのわかってやってる?」

 思いっきりため息吐かれた。

「エリオネルもついてきて?」

「それは、もちろんついて行くけど」

 やっぱり、エリオネルは俺に激甘だな。ちゅ、と頬にキスするとしょうがないという風に笑ってくれた。



「嘉伯くん」

「マリヤ!!」

 嘉伯くんの部屋の障子を叩くと、スパーンと目の前の障子が開く。
 あ、と思う間もなく体を抱きしめられた。

 ぐいっと後ろに引っ張られる。エリオネルだ。ちょ、嘉伯くん離れないな?

「嘉伯、マリヤを離して」

「いーやーだー!絶対離さない!」

「嘉伯くん、お話したいから、ちょっと離して?」

「また抱きついてもいいなら離す」

「わかったから」

「マリヤ!?」

「話し進まないから、二人とも黙って。嘉伯くん、お部屋に入ってもいい?」

「うん!どーぞ!」

 ニッコニコの嘉伯くんに毒気が抜かれていく。最近、こんなんばっかりだな。
 嘉伯くんの部屋は結構広めで、箪笥が沢山あった。

「嘉伯くん、昨日のことはすぐには許せない」

「はい」

 嘉伯くんが畳の上で正座をする。その前に俺が、俺の左隣にエリオネルが座った。

「旅に加わるのも、俺の一存では何ともできないし、俺のこと好きでもエリオネル以外に応える気ないから、ただただしんどいと思う」

「俺、マリヤと一緒に居れるならかまわないよ」

「あの、本当にずっとエリオネルとはイチャイチャしてるから、しんどいだけだよ」

「それでも、マリヤと一緒に居たい」

 困った。諦める気が全然ないじゃん。

「とりあえず、保留でいいかな?できれば、諦めてもらいたいんだけど……」

「絶対やだ!」

 ぎゅっと抱きしめられて、あ、そういえば後で抱きついても良いって言ったな、と思い出した。

「嘉伯!!」

「あーやだやだ。嫉妬深い男って」

 嘉伯くんがエリオネルを煽って、エリオネルがぐいぐいと俺と嘉伯くんを引き離そうとする。

「痛い痛い!無理矢理剥がすと俺が痛いって」

「マリヤが良いって言うから」

「仕方ないじゃん、話し進まなかったんだから」

 エリオネルの視線が痛い。ごめんって。

 お昼ご飯が運ばれてきて、嘉伯くんは離してくれた。3人でご飯を食べることになったが、エリオネルは仏頂面で、反対に嘉伯くんはニコニコしている。

 しょうがないなあ。ご飯を食べ終わって、エリオネルの膝の上に乗った。

「マリヤ?」

「俺にはエリオネルだけって言ってるのに」

 唇を食むようにして、ちゅ、ちゅ、と口づける。嘉伯くんに見られてるけど、知らないっ。

「ふーん?」

 嘉伯くんの声が聞こえると、ぐいっと後ろに引っ張られて、エリオネルの上に腰が乗ったまま後ろに倒れた。痛みはなくて、顎を掴まれて口を塞がれる。
 ぬる、と舌が入ってきて、嘉伯くんにキスされてると気がついた。

「ん、んんー!」

 バコッとエリオネルが嘉伯くんを殴る。その隙に抜け出して、エリオネルの後ろに隠れた。

「何すんの!」

「いきなり目の前でキスし始めるのも、どうかと思うけど」

「俺はエリオネルとイチャイチャするってちゃんと言ったよ」

「俺は俺で勝手にやるから気にしないで」

「ダメだって言ってるでしょ!」

「昨日のことも許してないのに、とりあえず手を出す気力もないくらいボコボコにする」

 エリオネルが手をボキボキ鳴らしている。エリオネル、ヤンキーみたいだよ!?

「来いよ、喧嘩慣れしてないお坊ちゃまが」

 体格差がめちゃくちゃあるのに、嘉伯くんは自信があるみたいだった。
 オロオロしていると、殴り合いが始まってしまった。

 俺じゃあ止められないから、誰か呼んで来ないと!

 部屋から出ると、女中さんが居た。

「すみません!喧嘩が始まってしまって!誰か呼んでくれませんか!?」

「わかりました。すぐに」

 女中さんはさっと走って行った。忍者みたい。

 怖くて部屋に入れないでいると、後ろから髪の長い人が来た。その後ろに5人居てビックリしてしまう。
 6人は部屋に入ると、二人を引き剥がし、落ち着くまで抑え込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

チート魔王はつまらない。

碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王 ─────────── ~あらすじ~ 優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。 その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。 そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。 しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。 そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──? ─────────── 何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*) 最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`) ※BLove様でも掲載中の作品です。 ※感想、質問大歓迎です!!

【オメガバース】海芋の苞になりたい〜新婚旅行編〜

久乃り
BL
前作の続きになります。 新婚旅行編です。 アルファの一之瀬匡と後天性オメガの菊地和真の楽しい?新婚旅行の話です。 もちろん護衛でベータの島野も一緒に行きます。トラブルが起きないわけがなく、色々起きます。島野が「勘弁してくれ」と叫んだか、叫ばなかったか。 地味に前作の伏線回収などしております。 全ては、可愛い可愛い番の夢を叶えるために、一之瀬が用意した#新婚旅行#番届をSNSにアップするための行為です。 オメガバにありがちの当て馬とかがいるとかいないとか。そんなふわふわっとした設定です。 作品内で『○○』で表記されたセリフは、日本語では無い言葉の表記になります。ただし、何語かは不明。 他サイトにも掲載しております。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

ようこそ異世界縁結び結婚相談所~神様が導く運命の出会い~

てんつぶ
BL
「異世界……縁結び結婚相談所?」 仕事帰りに力なく見上げたそこには、そんなおかしな看板が出ていた。 フラフラと中に入ると、そこにいた自称「神様」が俺を運命の相手がいるという異世界へと飛ばしたのだ。 銀髪のテイルと赤毛のシヴァン。 愛を司るという神様は、世界を超えた先にある運命の相手と出会わせる。 それにより神の力が高まるのだという。そして彼らの目的の先にあるものは――。 オムニバス形式で進む物語。六組のカップルと神様たちのお話です。 イラスト:imooo様 【二日に一回0時更新】 手元のデータは完結済みです。 ・・・・・・・・・・・・・・ ※以下、各CPのネタバレあらすじです ①竜人✕社畜   異世界へと飛ばされた先では奴隷商人に捕まって――? ②魔人✕学生   日本のようで日本と違う、魔物と魔人が現われるようになった世界で、平凡な「僕」がアイドルにならないと死ぬ!? ③王子・魔王✕平凡学生  召喚された先では王子サマに愛される。魔王を倒すべく王子と旅をするけれど、愛されている喜びと一緒にどこか心に穴が開いているのは何故――? 総愛されの3P。 ④獣人✕社会人 案内された世界にいたのは、ぐうたら亭主の見本のようなライオン獣人のレイ。顔が獣だけど身体は人間と同じ。気の良い町の人たちと、和風ファンタジーな世界を謳歌していると――? ⑤神様✕○○ テイルとシヴァン。この話のナビゲーターであり中心人物。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

処理中です...