80 / 147
第五章【機械都市】
第七十九話 機械都市
しおりを挟む
3つある天幕のうち一つに、いつか夢で見た魔王が立っていた。魔王は、手を宙に浮かせて何かを握る仕草をしている。
魔王と目が合う。
夢の時のように思考が流れ込んできた。俺の運命が魔王とともにある。なぜかそんな気がするのだ。
それに、恋人のように魔王に惹かれる。違う!俺には、エリオネルが居る!
「マリヤ……」
泣きたくなるような声に、焦がれる。
魔王はゆっくりこちらに近づいてきた。懐かしいような錯覚に頭が混乱する。
「来るな!」
俺の発した言葉に、魔王がビクリと立ち止まった。
「マリヤ、触れたい」
泣き出しそうな声に涙が滲む。何でそんな声で、そんな顔で俺を見るの。
ふ、と足首を掴まれてることに気づいた。
「エリオネル!大丈夫?」
「マリヤ……」
昏睡がどのくらいすごい魔法か知らないが、誰も起き上がってないことから、まだ起き上がらない方が良さそうだ。
エリオネルの顔を撫でてあげると、彼は小さく微笑んだ。
さっきまで囚われていた思考がどこかに行く。
何だったんだ……。あの魔王、危険すぎる。
その内、呻き声がし始めて、皆が起き出した。エリオネルの上体を起こして、膝の上に寝転ろばせる。
周りを見ると、魔族も魔王も居なくなっていた。
魔王ということは本当なのかわからないので伏せて、あったことをそのまま報告する。エリオネルも魔王を見たみたいだったので、すぐに信じてくれた。
魔族が出たのは異常事態だったらしく、シリアネイズの首都、エクリエールに急ぐことになった。
魔族というのは、悪魔とは違う生物らしい。端的に言うと、悪魔は実体を持たず魔族は実体があるということみたいだ。
魔王のことも、黒髪で赤目、魔族より力が強いということで、上級魔族ではないかということになった。なぜ、俺の名前を知っていたのかは謎だが。
下級悪魔と魔族の言動から、俺が狙われている可能性が高く、このメンツで安全に旅をするのは難しいらしい。どうするのか聞いたら、エクリエールで司祭を同行するということに落ち着いた。
急ぐということで、イチャイチャはお預けかな、と思ってエリオネルに、しないの?と聞いたら襲われたので、2日に1回は変わらないらしい。
ーーーーーー
3週間ほどでエクリエールに着いた。エクリエールは機械都市と呼ばれているらしく、すごく楽しみにしていた。魔道具産業が盛んで、そう呼ばれるようになったらしい。
外壁から、高い煙突がたくさん見える。その煙突からは、もくもくと煙が出ていた。体に悪そうだ。
検門が終わって中に入ると、思ったより空気は悪くなくて、何故なのかエリオネルに聞くと防護魔法がかけられているとのことだった。街並みはパイプが沢山付いていて、少し工業地帯のようで、さすが異世界という感じがする。こういう街並みでわくわくしてしまうのは、男の子だから仕方ない。
エクリエールでは、エリオネルの友人のクロウィッチ・バーデンという人のお宅へお邪魔することになった。
「クロウィッチ、久しぶり」
エリオネルが抱きつきながら、クロウィッチと呼ばれる青年の肩を叩く。む、すごく仲良さそう。
内心、ちょっと嫉妬しながら、バーデンさんと握手する。握手した手が、ぎしっと傷んだ。
(いった、バカ力かよ……)
金髪にオレンジ色の瞳。エリオネルと並んでも遜色ないイケメンだ。だが、その瞳に何とも言えない感情が浮かんでいるのが見てとれた。
魔王と目が合う。
夢の時のように思考が流れ込んできた。俺の運命が魔王とともにある。なぜかそんな気がするのだ。
それに、恋人のように魔王に惹かれる。違う!俺には、エリオネルが居る!
「マリヤ……」
泣きたくなるような声に、焦がれる。
魔王はゆっくりこちらに近づいてきた。懐かしいような錯覚に頭が混乱する。
「来るな!」
俺の発した言葉に、魔王がビクリと立ち止まった。
「マリヤ、触れたい」
泣き出しそうな声に涙が滲む。何でそんな声で、そんな顔で俺を見るの。
ふ、と足首を掴まれてることに気づいた。
「エリオネル!大丈夫?」
「マリヤ……」
昏睡がどのくらいすごい魔法か知らないが、誰も起き上がってないことから、まだ起き上がらない方が良さそうだ。
エリオネルの顔を撫でてあげると、彼は小さく微笑んだ。
さっきまで囚われていた思考がどこかに行く。
何だったんだ……。あの魔王、危険すぎる。
その内、呻き声がし始めて、皆が起き出した。エリオネルの上体を起こして、膝の上に寝転ろばせる。
周りを見ると、魔族も魔王も居なくなっていた。
魔王ということは本当なのかわからないので伏せて、あったことをそのまま報告する。エリオネルも魔王を見たみたいだったので、すぐに信じてくれた。
魔族が出たのは異常事態だったらしく、シリアネイズの首都、エクリエールに急ぐことになった。
魔族というのは、悪魔とは違う生物らしい。端的に言うと、悪魔は実体を持たず魔族は実体があるということみたいだ。
魔王のことも、黒髪で赤目、魔族より力が強いということで、上級魔族ではないかということになった。なぜ、俺の名前を知っていたのかは謎だが。
下級悪魔と魔族の言動から、俺が狙われている可能性が高く、このメンツで安全に旅をするのは難しいらしい。どうするのか聞いたら、エクリエールで司祭を同行するということに落ち着いた。
急ぐということで、イチャイチャはお預けかな、と思ってエリオネルに、しないの?と聞いたら襲われたので、2日に1回は変わらないらしい。
ーーーーーー
3週間ほどでエクリエールに着いた。エクリエールは機械都市と呼ばれているらしく、すごく楽しみにしていた。魔道具産業が盛んで、そう呼ばれるようになったらしい。
外壁から、高い煙突がたくさん見える。その煙突からは、もくもくと煙が出ていた。体に悪そうだ。
検門が終わって中に入ると、思ったより空気は悪くなくて、何故なのかエリオネルに聞くと防護魔法がかけられているとのことだった。街並みはパイプが沢山付いていて、少し工業地帯のようで、さすが異世界という感じがする。こういう街並みでわくわくしてしまうのは、男の子だから仕方ない。
エクリエールでは、エリオネルの友人のクロウィッチ・バーデンという人のお宅へお邪魔することになった。
「クロウィッチ、久しぶり」
エリオネルが抱きつきながら、クロウィッチと呼ばれる青年の肩を叩く。む、すごく仲良さそう。
内心、ちょっと嫉妬しながら、バーデンさんと握手する。握手した手が、ぎしっと傷んだ。
(いった、バカ力かよ……)
金髪にオレンジ色の瞳。エリオネルと並んでも遜色ないイケメンだ。だが、その瞳に何とも言えない感情が浮かんでいるのが見てとれた。
0
お気に入りに追加
189
あなたにおすすめの小説
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
竜の溺愛が国を救います(物理)
東院さち
BL
エーリッヒは次代の竜のための後宮で働いている唯一の男だ。本来、竜が番を娶るための後宮は女しか住むことができない。けれど、竜であるリュシオンが許してくれたお陰で楽しい日々を暮らしていた。
ある日大人になったリュシオンに「エーリッヒ、これからは私の相手をしてもらう。竜の気は放置しておくと危険なんだ。番を失った竜が弱るのは、自分の気を放てないからだ。番にすることが出来なくて申し訳ないが……」と言われて、身代わりとなることを決めた。竜が危険ということは災害に等しいことなのだ。
そして身代わりとなったエーリッヒは二年の時を過ごし……、ついにリュシオンの番が後宮へとやってくることになり……。
以前投稿した作品の改稿したものです。
炎よ永遠に
朝顔
BL
叔父の頼みを受けて、俺は世界有数の金持ちや、高貴な家柄の子息が集うウェストオーディン国の寄宿学校に途中入学することになる。
一族の名誉のために託された使命は、天国と呼ばれる特別に区切られた場所に入ること。そして、神と呼ばれる選ばれた人間から寵愛を受けることだった。
愛を知らず過去の傷に苦しめられながら生きる俺は、同じく愛を知らない男と出会う。
体を繋げることで、お互いの孤独を埋め合うように求め合うが、二人の行き着く先とは……。
西洋の現代に近いですが、架空設定。
日本以外の設定はゆるいです。
過去はシリアスですが、進行形は主人公が愛に目覚めて再生していくお話を目指しています。
重複投稿。
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺は勇者のお友だち
むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。
2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
涯(はて)の楽園
栗木 妙
BL
平民の自分が、この身一つで栄達を望むのであれば、軍に入るのが最も手っ取り早い方法だった。ようやく軍の最高峰である近衛騎士団への入団が叶った矢先に左遷させられてしまった俺の、飛ばされた先は、『軍人の墓場』と名高いカンザリア要塞島。そして、そこを治める総督は、男嫌いと有名な、とんでもない色男で―――。
[架空の世界を舞台にした物語。あくまで恋愛が主軸ですが、シリアス&ダークな要素も有。苦手な方はご注意ください。全体を通して一人称で語られますが、章ごとに視点が変わります。]
※同一世界を舞台にした他関連作品もございます。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/index?tag_id=17966
※当作品は別サイトでも公開しております。
(以後、更新ある場合は↓こちら↓にてさせていただきます)
https://novel18.syosetu.com/n5766bg/
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる