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第四章【学園都市】

第六十六話 王位

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「だから、返事がはいならこの指輪を首から下げて。結婚しても良いって思えるようになったら、将来指にしてほしい」

 考える時間をくれてありがとう。
 いきなり結婚してほしいって言われてたら、多分断ってたと思うから。

「はい。エリオネルのこと、まだ全部知らないけど、この先も一緒に居たい。だから、考えてみるね」

 地球にまで行ってもいいなんて、エリオネル以上に俺を好きでいてくれる人なんているのだろうか?
 胸がいっぱいになって、涙がポロっと溢れた。

「マリヤ!」

 感極まったようにエリオネルが立ち上がって、抱きしめてくる。それに何だかまた泣けてきてしまった。
 エリオネルが俺の髪を寄せて、首に指輪をつけてくれる。首に掛かった鎖にチュ、とキスされた。

「話がまだあるから、場所変えようか」

「うん?わかった」

 ガゼボを後にすると、白黒の服を着たカップルが俺たちの居たガゼボに入っていった。あそこプロポーズする場所か!
 何かジンクスでもある場所なのかもしれない。



 俺たちは丘の中腹にある、ベンチに座った。

「マリヤに言わなきゃいけないことがあるんだ。もし、さっきの返事気が変わったら言って」

「うん?」

 さっきよりも深刻そうなエリオネルに、ちょっと不安になる。

「私は、グラム・ヘブンの第三王子なんだ」

「へ?王子?」

 思いもよらないところから話が来てビックリした。

「王位は欲しいけど、それ以上に大切な人ができたから、今は諦めてもいいと思ってる」

「王様になりたかったってこと?諦めるの?」

 いきなりの大きな話に頭がついていかない。

「うん。王になりたいと思って、賢者を探す旅に出たから……」

「俺が地球に帰るから諦めるの?」

「それもあるけど、王位の条件である神の福音を受けた伴侶を探すための旅でもあったから。地球に帰るのでも、残るのでも諦めていいと思ってる」

 そういや、奥さんの一番の条件金髪だってウィラちゃんが言ってたな。
 授業で、"神の福音"と"精霊の福音"の違いを勉強した。神の福音は、神自ら福音を授けてその作用で金髪になるって言ってた。その他は全部精霊からの福音なんだそうだ。

「エリオネルはそれでいいの?」

「本当は少し、マリヤは神の福音を受けるんじゃないかって期待はしてる。でも、何も知らないマリヤに福音を受けさせたくなくて、私が王位を諦められるようになるまで話せなかった」

「王位諦めたから、プロポーズしてくれたの?」

 今まで言ってくれなかったことに、少し腹が立ったけどエリオネルの言いたいことも少しわかった。
 俺が福音受けて、それが神の福音で、それからプロポーズされていたら、俺は受け入れられなかったかもしれない。

 逆に、王位を、この世界を諦めてくれるって言ってくれているエリオネルに心が動いていた。

「そうだよ。プロポーズと言っていいのかわからないけど、全部を捨ててでも、マリヤと一緒に居たいと思ったから」

「とりあえず、福音受けるわ」

「マリヤ?受けなくてもいいんだよ」

「いい、それくらい受ける。そういえば、黒の王子ってエリオネルのこと?」

 アイシャさんが言ってたことをぼやーっと思い出す。

「そうだよ。神託覚えてるの?」

「ちょっとだけ」

「神託は、『黒の王子の伴侶になりし者を導き、運命を正せ。その者神の福音を受けし者なり』だよ。運命を正せとあるから、もしかしたら正せなかったのかもしれない。でも、私はマリヤが私の運命だと思ってる」

「なんか、俺じゃない感あるよなー」

「私はマリヤが精霊の福音を受けても変わらない自信あるよ」

 そりゃ、地球についてくるくらいだもんね。俺もここに残るって断言できるくらい、エリオネルのこと愛せたらいいのになと思った。
 今はまだ、地球が諦めきれない。家族や友だちだって居るから……
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