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第三章【旅路】
第四十三話 アキト
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男の子に聞いてわかったことは何もなかった。俺以外に、リチアさんのことは怖くないようだったので、リチアさんがお世話をすることになった。
安定の俺には何もさせてくれない。
痩せてもいないし、あまり汚れていなかったことから、あそこに捨てられた可能性があるとのことだった。裸だったのは謎だけども。
旅に同行させるのには微妙な年齢ということもあり、どこかの孤児院に預けることも考えたが、黒髪で赤目の組み合わせは黒髪以上に忌避されるらしく、置いて行くことに皆が難色を示していた。
「一緒に連れて行けないの?」
「行けなくはないけど、無理をさせることになるかもしれない」
全員で話し合った結果、やはり連れて行くことになった。とりあえず周辺の村や、大きな街に行った時は男の子の知り合いを探すということで落ち着く。
ただ、やはりというか、名前もわからない子の知り合いがそう簡単に見つかるわけなかった。
一番近くの村では、入ることすら拒否されてしまった。エリオネル曰く、黒髪赤目は魔族の象徴なんだそうだ。魔族は出たら村が滅ぶと言われるくらい強力な魔物らしい。
この子が魔族の可能性はないのかと聞いたら、ほとんど魔力を感じないので、普通の子どもと判断したようだった。
名前がないのは不便だということで、全員が考えた名前を書いた紙を前に広げて、本人に選ばせることで、仮の名前とした。もしかしたら、何か思い出すかもしれないし。
名前は、俺の考えたアキトという名前になった。俺のを選んでくれたことで、アキトに思い入れができる。
エリオネルが居ないときは、アキトと一緒に居ることが多くなった。
アキトは、大人しくて典型的な良い子だった。お手伝いもよくして、勉強もよくした。
リチアさんには懐いているというよりは、怖くないだけのようで、俺にはベッタリ懐いてくれた。最近は、アキトが笑顔まで見せてくれるようになる。そんなアキトが可愛くて仕方ない。
ただ、夜は別れてしまうので、どうしても寂しいみたいだった。
エリオネルは嫉妬するかと思いきや、夜は二人の時間ができるので、余裕の表情をしている。
「ねー、エリオネルは嫉妬しないの?」
「して欲しいの?」
「ちょっとだけ」
エリオネルの上に乗るのが好きで、イチャイチャする時はこの体勢が多い。顔の前で、少しとジェスチャーすると、ぎゅうと抱きしめられた。
「本当は少し妬いてる」
可愛いことを言いながら、ムッと口を尖らせる。そんな可愛いエリオネルにちゅっと唇を落とした。
「エリオネル、好き」
「私も好きだよ」
幸せすぎて怖い。こんなに早く両想いになるなんて思っていなかったから、ふと夢だったんじゃないかと不安になる時がある。でも、毎晩イチャイチャしてればそんな不安もどこかに行ってしまった。
安定の俺には何もさせてくれない。
痩せてもいないし、あまり汚れていなかったことから、あそこに捨てられた可能性があるとのことだった。裸だったのは謎だけども。
旅に同行させるのには微妙な年齢ということもあり、どこかの孤児院に預けることも考えたが、黒髪で赤目の組み合わせは黒髪以上に忌避されるらしく、置いて行くことに皆が難色を示していた。
「一緒に連れて行けないの?」
「行けなくはないけど、無理をさせることになるかもしれない」
全員で話し合った結果、やはり連れて行くことになった。とりあえず周辺の村や、大きな街に行った時は男の子の知り合いを探すということで落ち着く。
ただ、やはりというか、名前もわからない子の知り合いがそう簡単に見つかるわけなかった。
一番近くの村では、入ることすら拒否されてしまった。エリオネル曰く、黒髪赤目は魔族の象徴なんだそうだ。魔族は出たら村が滅ぶと言われるくらい強力な魔物らしい。
この子が魔族の可能性はないのかと聞いたら、ほとんど魔力を感じないので、普通の子どもと判断したようだった。
名前がないのは不便だということで、全員が考えた名前を書いた紙を前に広げて、本人に選ばせることで、仮の名前とした。もしかしたら、何か思い出すかもしれないし。
名前は、俺の考えたアキトという名前になった。俺のを選んでくれたことで、アキトに思い入れができる。
エリオネルが居ないときは、アキトと一緒に居ることが多くなった。
アキトは、大人しくて典型的な良い子だった。お手伝いもよくして、勉強もよくした。
リチアさんには懐いているというよりは、怖くないだけのようで、俺にはベッタリ懐いてくれた。最近は、アキトが笑顔まで見せてくれるようになる。そんなアキトが可愛くて仕方ない。
ただ、夜は別れてしまうので、どうしても寂しいみたいだった。
エリオネルは嫉妬するかと思いきや、夜は二人の時間ができるので、余裕の表情をしている。
「ねー、エリオネルは嫉妬しないの?」
「して欲しいの?」
「ちょっとだけ」
エリオネルの上に乗るのが好きで、イチャイチャする時はこの体勢が多い。顔の前で、少しとジェスチャーすると、ぎゅうと抱きしめられた。
「本当は少し妬いてる」
可愛いことを言いながら、ムッと口を尖らせる。そんな可愛いエリオネルにちゅっと唇を落とした。
「エリオネル、好き」
「私も好きだよ」
幸せすぎて怖い。こんなに早く両想いになるなんて思っていなかったから、ふと夢だったんじゃないかと不安になる時がある。でも、毎晩イチャイチャしてればそんな不安もどこかに行ってしまった。
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