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第三章【旅路】

第三十五話 告白

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「マリヤ、良く動けるようになってるよ。今日は、良い所に連れて行ってあげる」

 エリオネルは当たり前のように俺の頭を撫でると、馬に乗るように言ってきた。
 一人で馬に乗ることはまだできないが、エリオネルが一緒に乗ってくれるなら、あまり遠くでなければ行けるようになった。

 先に馬に乗ったエリオネルの手を掴むと、グンッと引き上げられる。
 優しい見た目と裏腹に、エリオネルは筋肉もあるし、筋力もすごくあるみたいだった。

「どこに行くの?」

「綺麗な所だよ」

 目的地に着くと、そこは綺麗な湖だった。綺麗な水色で、驚くほど透明感がある。湖の中には、たくさんの魚と、大きな岩があった。

「わあー!すごい!キレー」

 近寄って水に手を入れると周りの魚が逃げていくのが見える。

「《顕現》」

 水でできた魚をイメージしながら呪文を唱えると、湖に入れた右手から、大量の水が上がってくる。その水の中には何匹になるかわからない多くの魚が、現れたり消えたりして俺の全身を飲み込んだ。

 ビックリはしたが、それ以上にその様子は幻想的で、海の中に居るみたいだった。

 近くに居るはずのエリオネルを見ると口を開いて、俺以上にビックリしている。そんなエリオネルの手を引いて、俺の方に引き寄せた。


 綺麗なリィンリィンという音も聞こえる。たくさんの水でできた魚は、エリオネルの方にも行って、二人の周りを楽しそうに泳いだ。

 まだビックリしているらしいエリオネルのあどけない表情にすごく愛おしさを感じる。

 エリオネルの手に自分の手を重ねて、指を絡めてみた。それに気づいたエリオネルが顔を赤くする。
 エリオネルのこういう所もすごく好きだ。


 何だか、水の精霊に祝福されたように感じて、自分が大胆になっているのがわかる。

 次に、エリオネルの首に手を回して、そのまま目を閉じる。エリオネルは抵抗せずに、俺と唇を重ねてくれた。
 柔らかく重ねた唇を離すと、目を開けたままのエリオネルと視線が合う。その瞳には、驚きと恥ずかしさが浮かんでいた。


「エリオネル、好き」


 リィンリィンという音は、ほとんど消えていて、俺の告白がやけに響く。

 エリオネルは、それにまた目を丸くして、そして微笑んでくれた。


「私もマリヤが好きだよ」


 そう言って、エリオネルからキスをしてくれる。夢のような状況に、嬉しさで舞い上がりたくなった。

 しばらく柔らかくキスをした後、どちらともなく離れて、水辺に二人で座る。

「エリオネル?いつから俺のこと好きだったの?」

 隣に居るエリオネルを見上げると、困ったように微笑むのが見えた。

「最初に会った時かな。一目惚れだと思う」

「そうなんだ」

「マリヤは?」

「俺?俺は…王都出る辺りくらいかな。でも、もしかしたら俺も一目惚れかも」

 そう言うとエリオネルは眩しいくらいの笑顔を向けてきた。

 俺たちは、両想いになったものの、問題が何もないわけではない。俺は地球に帰るかどうか、エリオネルは一人だと決めた結婚相手。
 残念ながら、俺はエリオネルの第一希望の金髪ではない。でも、クッキーを合わせる陣合わせが合ったから、少しは希望があるみたいだった。

 ただ、今結婚どうの言われてもピンとこないし、地球に帰りたいかと言われれば帰りたい。けど、それ以上に今はエリオネルと一緒に居たかった。
 とりあえず今はエリオネルと一緒にいることだけ考えるようにしようと決意した。
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