青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

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第二章【旅立ち】

第二十四話 簡単な検門

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 街並みはヨーロッパみたいだった。

 日本の雑然とした感じではなく、計算された美しさ。そういえばヨーロッパは、好き勝手に建物は建てられないと聞いたことがある。
 街々によって違うだろうが、統一性があるように作っているから、あの綺麗な街並みができるらしい。

 今、目の前にある建物たちからは、そんな感じの印象を受ける。開いている門の所からしか、街並みはまだ見えてないけど。
 検問の列をスルーして、右側にある門に着くと、いつの間にか門番の人たちが増えていた。


「王都フローティアへようこそいらっしゃいました。身分証の提示と、書類の提出をお願いいたします」

 丁寧なお辞儀で出迎えられる。左側の人員とは別なようで、新しく3人出て来たみたいだった。
 門番の人は、比較的軽装をしており、甲冑を着ている人と役割分担をしているらしい。

 難しいことはアリアムさんがやってくれるので、手続きの間大きな門から見える街並みを眺めた。

 最初に居たエリアシスの街も西洋風の街並みだったが、フローティアは大きな建物が多い。門から広い街路樹が見えて、遠くの広場らしきとこまで見ることができた。

「エリオネル様、マリヤ様、手続きが完了しましたので、中に入ります」

 アリアムさんがあまり時間の経たないうちに話しかけてきた。随分と早いものだ。
 門番さんには、指輪を見せ、さっと馬車を改めたくらいで、本当に門をくぐってもいいようだった。


「わあ!」

 中に入ると圧巻だった。綺麗な街並みはレンガ調で、どうやったらこんなデザインを考えつくのか教えてほしい。

「エリオネル、素敵だね」

「マリヤが気に入ってくれて嬉しい」

 隣のエリオネルに笑顔を向けると、とろけるような笑みを返された。自分の心臓がドクンと波打つ。
 そんな自分に気づかないフリをするように、窓の外を見た。

「これからどこに向かうの?」

「私の私邸だよ」

 辺境の貴族なのに王都に私邸があるんだ。本当にお金持ちなんだな。

「準備が整い次第、魔力測定をするけど、それまで街を案内しようか?」

「え!いいの!?行きたい行きたい」

 王都だから、色んな物があるんだろうなあ。あ、本屋さんにも行きたいかも。元来、本を読むのは嫌いじゃないし、段々言葉も覚えてきたし。

 エリオネルはアリアムさんに、これから散策に向かうと告げた。護衛をつけて欲しいというアリアムさんと色々話し合っていたが、結局は俺と二人で散策に行くことになった。

 水の精霊のときもそうだし、比較的護衛をつけずに二人で行くことが多々あるから、エリオネルは本当に強いのかもしれない。
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