24 / 147
第二章【旅立ち】
第二十三話 王都へ
しおりを挟む
それから、ココノ村の人たちにお別れを行って、王都に向かった。
最初に村に来たときの悲壮感はなく、みんな笑って見送ってくれた。
馬車の中で、エリオネルは字を教えてくれた。すぐには読めないけど、頑張って練習しようと思う。
何気ない会話も挟みながら、勉強しているとガタッと馬車が止まった。いきなり止まるなんて初めてだ。
「マリヤ、動かないで」
「うん」
「ウオオオオオーーー!!!」
野太い叫び声と共に剣を弾く金属音が聞こえて来た。
今、バーナーみたいな音聞こえたけど、魔法かな?!
「大丈夫だよ、野盗だと思うけど、100人居ても倒せるから」
エリオネルの言葉通り、激しかった音はすぐに呻き声だけになった。
「終わった?」
我慢できなくて、窓を覗くと、野盗の頭と体がサヨナラしていた。
初めて見た死体に一気に具合が悪くなる。
「マリヤ!大丈夫?」
エリオネルが隣で背中をさすってくれる。
「エリオネル様、鎮圧しました。残りは捕縛して衛兵へ引き渡します」
「そうしてくれ」
役に立たないどころか、足を引っ張る形になって非常に申し訳ない。
「初めてなら仕方ないよ」
と言ってくれる、エリオネルの優しさが辛い。
王都に着くまでには、それから二日かかった。
野盗は10人ほど捕まっていて、配慮してくれたのか、俺の近くに来ることはなかった。
遠目で見た限り全体的に汚れていて、服は古着をビリビリにした感じだった。3、40代に見えたけど、顔が黒ずんでいてよくわからない。
野宿ばかりだったけど、寝起きはエリオネルのベッド付き天幕だったので、全然問題なかった。
王都が近づいてくると、行き交う馬車も増え、道が広くなっていった。
大きな城壁がぐるりと囲み、尖塔や建物が上から顔を出していた。視界に収まりきらない大きさにビックリする。
城壁自体見るのが初めてかもしれない。大きな円柱の塔が二つ立っていて、その間に大きな門がある。
門は左右に開閉するタイプで、今は開け放してあるようだ。
見える限りでは門番が5人居て、その内3人で荷物や人をチェックして、終わったら門を潜るらしい。入るグループをチェックしている門番が3人居るから、内側の王都から出てくるグループをチェックしている門番が内側に3人居るかもしれない。
残りの2人は、門の左右で立っていて、甲冑を着ている。チェック待ちはかなり居て、門にたどり着くまでにすごく時間がかかりそうだ。
と言っても、俺たちのような大人数の一行は居ないみたいだった。それでも10以上居るグループをチェックするのは大変な作業だろう。
俺たちもグループの後ろに付くのかと思いきや、俺の乗って居る馬車は長い行列をスルーして、門から出てくるグループを右から追い越していく。因みに入り待ちのグループは左側に並んでいた。
「え!?追い越してるけど!?」
「ああ、大丈夫だよ。私たちだけ先に入るんだ」
アリアムさんの馬が先行して行く。アリアムさんと、この馬車の御者の二人、エリオネルと俺だけが行く形になる。
俺、身分証も何も持ってないのに?!
「はい、マリヤ」
「え?何?」
「身分証だよ。王都に入ってから、きちんとした物を作るけど、それまで持ってて」
出した両手には、小さな指輪がコロンと転がった。カードとかじゃないんだ。
銀色で、人差し指にピッタリ入る。何か文字が書かれているが、小さくて全然読めない。
最初に村に来たときの悲壮感はなく、みんな笑って見送ってくれた。
馬車の中で、エリオネルは字を教えてくれた。すぐには読めないけど、頑張って練習しようと思う。
何気ない会話も挟みながら、勉強しているとガタッと馬車が止まった。いきなり止まるなんて初めてだ。
「マリヤ、動かないで」
「うん」
「ウオオオオオーーー!!!」
野太い叫び声と共に剣を弾く金属音が聞こえて来た。
今、バーナーみたいな音聞こえたけど、魔法かな?!
「大丈夫だよ、野盗だと思うけど、100人居ても倒せるから」
エリオネルの言葉通り、激しかった音はすぐに呻き声だけになった。
「終わった?」
我慢できなくて、窓を覗くと、野盗の頭と体がサヨナラしていた。
初めて見た死体に一気に具合が悪くなる。
「マリヤ!大丈夫?」
エリオネルが隣で背中をさすってくれる。
「エリオネル様、鎮圧しました。残りは捕縛して衛兵へ引き渡します」
「そうしてくれ」
役に立たないどころか、足を引っ張る形になって非常に申し訳ない。
「初めてなら仕方ないよ」
と言ってくれる、エリオネルの優しさが辛い。
王都に着くまでには、それから二日かかった。
野盗は10人ほど捕まっていて、配慮してくれたのか、俺の近くに来ることはなかった。
遠目で見た限り全体的に汚れていて、服は古着をビリビリにした感じだった。3、40代に見えたけど、顔が黒ずんでいてよくわからない。
野宿ばかりだったけど、寝起きはエリオネルのベッド付き天幕だったので、全然問題なかった。
王都が近づいてくると、行き交う馬車も増え、道が広くなっていった。
大きな城壁がぐるりと囲み、尖塔や建物が上から顔を出していた。視界に収まりきらない大きさにビックリする。
城壁自体見るのが初めてかもしれない。大きな円柱の塔が二つ立っていて、その間に大きな門がある。
門は左右に開閉するタイプで、今は開け放してあるようだ。
見える限りでは門番が5人居て、その内3人で荷物や人をチェックして、終わったら門を潜るらしい。入るグループをチェックしている門番が3人居るから、内側の王都から出てくるグループをチェックしている門番が内側に3人居るかもしれない。
残りの2人は、門の左右で立っていて、甲冑を着ている。チェック待ちはかなり居て、門にたどり着くまでにすごく時間がかかりそうだ。
と言っても、俺たちのような大人数の一行は居ないみたいだった。それでも10以上居るグループをチェックするのは大変な作業だろう。
俺たちもグループの後ろに付くのかと思いきや、俺の乗って居る馬車は長い行列をスルーして、門から出てくるグループを右から追い越していく。因みに入り待ちのグループは左側に並んでいた。
「え!?追い越してるけど!?」
「ああ、大丈夫だよ。私たちだけ先に入るんだ」
アリアムさんの馬が先行して行く。アリアムさんと、この馬車の御者の二人、エリオネルと俺だけが行く形になる。
俺、身分証も何も持ってないのに?!
「はい、マリヤ」
「え?何?」
「身分証だよ。王都に入ってから、きちんとした物を作るけど、それまで持ってて」
出した両手には、小さな指輪がコロンと転がった。カードとかじゃないんだ。
銀色で、人差し指にピッタリ入る。何か文字が書かれているが、小さくて全然読めない。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
チート魔王はつまらない。
碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王
───────────
~あらすじ~
優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。
その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。
そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。
しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。
そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──?
───────────
何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*)
最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`)
※BLove様でも掲載中の作品です。
※感想、質問大歓迎です!!
【オメガバース】海芋の苞になりたい〜新婚旅行編〜
久乃り
BL
前作の続きになります。
新婚旅行編です。
アルファの一之瀬匡と後天性オメガの菊地和真の楽しい?新婚旅行の話です。
もちろん護衛でベータの島野も一緒に行きます。トラブルが起きないわけがなく、色々起きます。島野が「勘弁してくれ」と叫んだか、叫ばなかったか。
地味に前作の伏線回収などしております。
全ては、可愛い可愛い番の夢を叶えるために、一之瀬が用意した#新婚旅行#番届をSNSにアップするための行為です。
オメガバにありがちの当て馬とかがいるとかいないとか。そんなふわふわっとした設定です。
作品内で『○○』で表記されたセリフは、日本語では無い言葉の表記になります。ただし、何語かは不明。
他サイトにも掲載しております。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ようこそ異世界縁結び結婚相談所~神様が導く運命の出会い~
てんつぶ
BL
「異世界……縁結び結婚相談所?」
仕事帰りに力なく見上げたそこには、そんなおかしな看板が出ていた。
フラフラと中に入ると、そこにいた自称「神様」が俺を運命の相手がいるという異世界へと飛ばしたのだ。
銀髪のテイルと赤毛のシヴァン。
愛を司るという神様は、世界を超えた先にある運命の相手と出会わせる。
それにより神の力が高まるのだという。そして彼らの目的の先にあるものは――。
オムニバス形式で進む物語。六組のカップルと神様たちのお話です。
イラスト:imooo様
【二日に一回0時更新】
手元のデータは完結済みです。
・・・・・・・・・・・・・・
※以下、各CPのネタバレあらすじです
①竜人✕社畜
異世界へと飛ばされた先では奴隷商人に捕まって――?
②魔人✕学生
日本のようで日本と違う、魔物と魔人が現われるようになった世界で、平凡な「僕」がアイドルにならないと死ぬ!?
③王子・魔王✕平凡学生
召喚された先では王子サマに愛される。魔王を倒すべく王子と旅をするけれど、愛されている喜びと一緒にどこか心に穴が開いているのは何故――? 総愛されの3P。
④獣人✕社会人 案内された世界にいたのは、ぐうたら亭主の見本のようなライオン獣人のレイ。顔が獣だけど身体は人間と同じ。気の良い町の人たちと、和風ファンタジーな世界を謳歌していると――?
⑤神様✕○○ テイルとシヴァン。この話のナビゲーターであり中心人物。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…
えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる