青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

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第二章【旅立ち】

第二十二話 低級悪魔

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 エリオネルが依頼の仕事をしている間は俺の役割が全くない。
 そのため、字の読めない俺に、文字と絵が描いてある練習カードみたいな木製の板と絵本を10冊くらいアリアムさんが渡してくれた。

 もうすでに買っていてくれたらしい。

 よくよく皆を見ていると、ウィラちゃんとビオルナさんと護衛さんたちが二、三時間に一回くらい村の外に行って大きな荷物を持って戻ってきているのがわかった。

 そっか、皆仕事があるんだな、と少し寂しい気持ちになる。

 解らない字がたくさんあるので、休憩している人にちょこちょこ教えてもらいながら、字の練習をした。
 嫌な顔一つせず、どちらかというと嬉しそうに皆教えてくれる。

 全員の名前を先に覚えようということで、貰ったノートに名前だけ書いてもらって、日本語訳とどういう人なのか一人一人書き込んでいく。

 夕食になる頃には、5人分の情報が集まった。ゆっくりやっていこう。


「マリヤ、一人で待たせてしまってごめんね」

「大丈夫だよ、皆優しく教えてくれたし、一人の時は勉強してるね」

 今はエリオネルの天幕で、二人で夕食をとっている。

「依頼のこととかって聞いてもいいの?」

「ああ、そういえば説明していなかったね。ここは、ココノ村という場所で、小さな低級悪魔が悪さをしているから退治してほしいという依頼だったんだ」

 悪魔とか居るんだ。じゃあ、天使とかも居るのかな?

 そこで少し引っかかった。

「だった?」

「そう、何故か私達が到着してから、悪魔の痕跡がプッツリ消えた」

「出て行ったってこと?」

「違う、村の外れで痕跡が消えているんだ。消滅したというのが正しいと思う」

「いきなり消滅することなんてあるの?」

 等価交換の世界で生きて来たから、消滅という言葉にピンとこない。例えば、爆弾で消滅したとしても消し炭が残ると思うんだけどな。

「聞いたことがない。魔法を使えば痕跡が残るし、完全に痕跡を消すことは不可能だ。それに、今までそんな事例はないはず」

「そうなんだ‥‥」

「低級悪魔が居なくなったのは事実だし、周辺を探索してみたけど、何もないみたいだから、報告に王都に行こうと思う」

「そっか、わかった。皆困ってたみたいだもんね、悪魔が居なくなってよかったね」

 俺の言葉にエリオネルがニッコリ微笑む。眩しい。

 怪我してる人が居たから、この世界では悪魔は怖いものなんだな。

「それで、低級悪魔ってどんなんなの?」

「姿形は、影のように黒くぼやけていて、基本的には人の影に潜んでいる。低級と言っても悪戯だけしかしないような悪魔もいれば、今回のように実害が出る場合もある。今回でいえば、低級でも力がある方だったんだろう」

「やっぱり村人さんたちの、あの怪我って依頼と関係あったんだね」

「ああ、低級といっても魔獣と違って実体が無い場合が多いから、倒すのが難しいんだ」

「魔法とかでしか倒せないってこと?」

「そうだ。ほとんどの人間が使える魔法は生活魔法ばかりで、何かを倒せるほどの威力を持っている人間は少ないんだ」

「魔法陣とかは?」

「あれは、攻撃魔法になると値段がすごく高くなるんだよ。殺傷能力があるものは、魔力を沢山使うからね」

「そうなんだー」

 生活魔法でも魔力が必要みたいだし、魔力が多くないと無理ってことかな。
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