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第二章【旅立ち】
第十六話 出立
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次の日、神父さまとアイシャさんにお別れを言って迎えに来てくれたエリオネルさんとアリアムさんについていく。
短い間だったとはいえ、神父さまとアイシャさんにはすごくお世話になった。
また、会えるといいな。
見送ってくれる二人がお似合いに見えて、少し嬉しくなった。
「マリヤさん、ビオルナさん、こちらは旅の荷物です。元々予備に持っていた物に名前を彫らせていただきました。ですので、気兼ねなく使ってください」
大きな木箱に名前が彫ってある。どっちがどっちだか解らないが、わざわざ用意してくれたらしい。
「え!ありがとうございます。本当に何もないので、助かります」
「お気遣いありがとうございます」
「ここからは、私がご案内しますね」
アリアムさんが、エリオネルさんの前に一歩出る。エリオネルさんはフェードアウトするのかな、と思っていたが、自然に俺の隣に来た。
アリアムさんがビオルナさんをエスコートして、それについていく形になる。
「欲しい物などあれば、遠慮なく言ってくださいね」
「え、ありがとうございます……」
エリオネルさんの扱いに困る。何か、甘いというか……理由が解らなくて困惑する。
まあ、厳しいよりはいいか。
馬車が二つに荷馬車一つ、馬が十二頭。荷物番と護衛、御者は兼業で十人、食事係が二人、エリオネルさんの執事が一人、あとお祭りで助けた黒髪の子と、もう一人黒髪の人が居た。
エリオネルさんと、アリアムさん、ウィラちゃんを入れると十八人。俺とビオルナさんで二十人。なかなかの大所帯だ。
「ビオルナ様と、マリヤ様はエリオネル様の馬車にご同乗いただこうかと思っているのですが」
「あ、私は護衛の方と一緒の馬車でいいです。あと、様は必要ないです」
ビオルナさんが、右手でアリアムさんを制す。
「了解しました」
「エリオネルさんの馬車には、アリアムさんも乗るんですか?あ、俺も様はなしで……」
「いえ、エリオネル様とマリヤ様のみです」
アリアムさん?なんか華麗にスルーされた気がするんですが?
あと、のみってなに。
「因みにウィラちゃんは……」
「ウィラと、私は馬でついて行きますので」
え!?馬で?その前にエリオネルさんと二人とか気まず過ぎるんだが……
でも、旅の道中話をするなら、一緒に乗らなきゃいけない気がする。ビオルナさんみたいに護衛ができるわけじゃないし。
「マリヤさん……私と二人は嫌ですか?」
「え……、嫌ではないですけど……」
イケメンの顔で伺ってくるとか反則だって。最初一緒に乗る予定だったビオルナさんを見ると、こちらから完全に視線を逸らしていた。
ビオルナさん……
現実逃避気味に周りを見渡すと、お祭りで会った黒髪の子と目が合った。
「名前、何ていうの?」
髪は綺麗に揃えられて、着ている物も普通になっている。痩せているのはすぐにどうにもできないが、無理な仕事をさせられてはいなさそうだ。
「………」
何故か何も答えてくれない。それどころか、ビクビクされている。
「マリヤ様、ご無礼をお許しください。この者は、リチア、私は執事のラブラドと申します。まだ、作法がなっていないので、大目に見ていただけないでしょうか」
サッと後ろに、リチアさんを庇われてしまった。
え?ラブラド……不謹慎な名前が頭に浮かんだ。見た目はどちらかというとドーベルマンみたいなんだけど。
「え……そんな、無礼とか大層な者じゃないんですが……」
「マリヤ様、失礼ですが、お髪やお手だけ拝見しても、平民というのには無理があります」
え……、バリバリの平民なんですけど……
「躾ができましたら、マリヤ様のお世話をさせますので、それまでお待ちください」
「え!お世話とか要らないです。リチアさんと友達になりたかっただけなので……」
「ご友人としてですか?」
ラブラドさんは、思いっきり不信という顔で見てくる。
え、なんで?歳も近そうだし、同じ黒髪なのに。あ、ラブラドさんは、俺が黒髪って知らないからか……
「ラブラド、マリヤさんはリチアと鞭の間に飛び込んだ方だよ。本当に友人になりたいんじゃないかな」
ラブラドさんは益々信じられないという顔になる。
短い間だったとはいえ、神父さまとアイシャさんにはすごくお世話になった。
また、会えるといいな。
見送ってくれる二人がお似合いに見えて、少し嬉しくなった。
「マリヤさん、ビオルナさん、こちらは旅の荷物です。元々予備に持っていた物に名前を彫らせていただきました。ですので、気兼ねなく使ってください」
大きな木箱に名前が彫ってある。どっちがどっちだか解らないが、わざわざ用意してくれたらしい。
「え!ありがとうございます。本当に何もないので、助かります」
「お気遣いありがとうございます」
「ここからは、私がご案内しますね」
アリアムさんが、エリオネルさんの前に一歩出る。エリオネルさんはフェードアウトするのかな、と思っていたが、自然に俺の隣に来た。
アリアムさんがビオルナさんをエスコートして、それについていく形になる。
「欲しい物などあれば、遠慮なく言ってくださいね」
「え、ありがとうございます……」
エリオネルさんの扱いに困る。何か、甘いというか……理由が解らなくて困惑する。
まあ、厳しいよりはいいか。
馬車が二つに荷馬車一つ、馬が十二頭。荷物番と護衛、御者は兼業で十人、食事係が二人、エリオネルさんの執事が一人、あとお祭りで助けた黒髪の子と、もう一人黒髪の人が居た。
エリオネルさんと、アリアムさん、ウィラちゃんを入れると十八人。俺とビオルナさんで二十人。なかなかの大所帯だ。
「ビオルナ様と、マリヤ様はエリオネル様の馬車にご同乗いただこうかと思っているのですが」
「あ、私は護衛の方と一緒の馬車でいいです。あと、様は必要ないです」
ビオルナさんが、右手でアリアムさんを制す。
「了解しました」
「エリオネルさんの馬車には、アリアムさんも乗るんですか?あ、俺も様はなしで……」
「いえ、エリオネル様とマリヤ様のみです」
アリアムさん?なんか華麗にスルーされた気がするんですが?
あと、のみってなに。
「因みにウィラちゃんは……」
「ウィラと、私は馬でついて行きますので」
え!?馬で?その前にエリオネルさんと二人とか気まず過ぎるんだが……
でも、旅の道中話をするなら、一緒に乗らなきゃいけない気がする。ビオルナさんみたいに護衛ができるわけじゃないし。
「マリヤさん……私と二人は嫌ですか?」
「え……、嫌ではないですけど……」
イケメンの顔で伺ってくるとか反則だって。最初一緒に乗る予定だったビオルナさんを見ると、こちらから完全に視線を逸らしていた。
ビオルナさん……
現実逃避気味に周りを見渡すと、お祭りで会った黒髪の子と目が合った。
「名前、何ていうの?」
髪は綺麗に揃えられて、着ている物も普通になっている。痩せているのはすぐにどうにもできないが、無理な仕事をさせられてはいなさそうだ。
「………」
何故か何も答えてくれない。それどころか、ビクビクされている。
「マリヤ様、ご無礼をお許しください。この者は、リチア、私は執事のラブラドと申します。まだ、作法がなっていないので、大目に見ていただけないでしょうか」
サッと後ろに、リチアさんを庇われてしまった。
え?ラブラド……不謹慎な名前が頭に浮かんだ。見た目はどちらかというとドーベルマンみたいなんだけど。
「え……そんな、無礼とか大層な者じゃないんですが……」
「マリヤ様、失礼ですが、お髪やお手だけ拝見しても、平民というのには無理があります」
え……、バリバリの平民なんですけど……
「躾ができましたら、マリヤ様のお世話をさせますので、それまでお待ちください」
「え!お世話とか要らないです。リチアさんと友達になりたかっただけなので……」
「ご友人としてですか?」
ラブラドさんは、思いっきり不信という顔で見てくる。
え、なんで?歳も近そうだし、同じ黒髪なのに。あ、ラブラドさんは、俺が黒髪って知らないからか……
「ラブラド、マリヤさんはリチアと鞭の間に飛び込んだ方だよ。本当に友人になりたいんじゃないかな」
ラブラドさんは益々信じられないという顔になる。
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