青い薔薇と金色の牡丹【BL】

水月 花音

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第一章【出会い】

第十五話 顔合わせ

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「こちら、賢者探しにお二人を同行させてくださる、エリオネル・ジルコン様です」

「エリオネルと申します。しがない辺境の貴族ではありますが、気楽に接していただけたらと思います」

 神父さまに紹介されて長身の二人が並ぶ。モデルみたいですごいんだけど、二人ともパーツどうなってんの?
 貴族だったんだー。王子っぽいと思ったのは、あながち間違いじゃなかったのかもな。

 それにしても、おじさんが来ると思ってたから、拍子抜けだ。二十歳くらいかな?

「先ほどは失礼しました。マリヤといいます。よければ、仲良くしてください」

 縁があるってこういう事かい……いや、お世話になる人だと思わないじゃん。
 気を悪くしてないといいんだけど。

「ええ、こちらこそ」

 にっこりと握手を求められて、ほっとする。
 助けてくれたことといい、良い人っぽい。

 とりあえず、ウィラちゃんすごい顔で睨むのやめて。せっかくの可愛い女の子との旅なのに、始まる前から嫌われてるとか泣けてくる。

「旅の同行者を紹介しますね。こちらは、アリアム。私の友人であり、良き相談相手でもあります」

「アリアムと申します。何かありましたら、私にお申し付けください」

 エリオネルさんより少し歳上かな?薄紫色の髪をした、髪色以外落ち着いてる人が頭を下げてくる。
 こちらも負けじと頭を下げる。いや、日本人のさがというか……

「こちらは、ウィラ。態度が悪いようだったら、近くでの同行は控えさせます」

 エリオネルさんの笑顔が怖い。ウィラちゃんは泣きそうになりながら謝ってる。

「いや、あの急に同行させてもらうことになったので、受け入れてもらえるよう頑張ります」

 取り成すつもりで口を出したら、余計に睨まれてしまった。

 えー……どうしたらいいんだよ。

「他には、十五人同行者がいますが、皆従者ですので、出発時に紹介しますね。そちらは、ビオルナさんですか?」

 エリオネルさん何でビオルナさんの名前知ってるんだろう?と思ったが、俺やビオルナさんが同行することもわかってるみたいだし、神父さまが先に連絡を取っておいたんだろう。

「はい、隣国オーケンの王都まで同行させていただくことになりました。片腕ですが、護衛などで微力を尽くしたいと思います。よろしくお願いします」

「マリヤさんの友人として、気負わず同行してください」

 あれか、エリオネルさんに俺が地球の話をする方が重きなのかな。俺、話上手くないけど。

「マリヤさんも、旅の資金は潤沢ですし、気負わずに居てくださいね」

 エリオネルさんイケメンかよ。

 本当、何かできないか、俺も探り探りいこう。とりあえずは、地球の話でいいみたいだし、エリオネルさんが気に入ってくれるといいな。

 エリオネルさん自身は、お金もあるみたいだし、何故賢者を探してるんだろうか。

「えと、地球での話をすることになってますし、俺の事情を伝えておきますね」

「座ってお話しましょうか、お茶お入れしますね」

 アイシャさんがパッと台所に行く。やっぱり有能だよな。

 ビオルナさんの事を話すのはどうかなと思ったので、とりあえず席に着いてから、ビオルナさんと白い搭のことは伏せて、こちらに知らず知らずのうちに来たこと、黒髪であること、地球に帰りたくて、その方法が知りたいことを話した。

 ビオルナさんからは、例の化け物と、白い搭で俺を助けた事が伝えられた。

「他に対処できる機関もないですからね、ビオルナさんの判断は正しかったと思います。ただ、他言はしない方が良さそうですね。隣国との軋轢あつれきが生じるかもしれませんから」

「本当に、グラムの方には申し訳ないです」

「私の理由は……正直に言うとお教えできないのです。本当に申し訳ないのですが……」

「いえいえ、色々と事情ありますもんね。同行させてもらえるだけありがたいです」

「マリヤさん。いつか、きっとお話しします」

 うん、エリオネルさんの話はいいんだけど、何故俺の手を握ってるんですか?
 あまりに自然に握られたから、されるがままになったけども。何でだよ。

 とりあえず、ゆっくり手を離してもらう。この人なんか距離が近いんだよな。


 一抹の不安を抱えながら、明日が出発ということで、三人とは一旦別れた。
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