上 下
15 / 147
第一章【出会い】

第十四話 陣合わせ

しおりを挟む
 二人と合流して、お祭りの屋台に移動することになった。
 お祭りには、穀物で作ったクッキーを使った陣合わせと呼ばれるものがあるらしい。

 任意のクッキーを持つと、縁のある人と合わさるのだそうだ。クッキーには魔方陣が描かれており、2つ一組になっていて、夫婦になったり仕事のパートナーになったりと様々だそうだ。

 ほとんどは合わないのだそうだが、魔方陣が光れば自然と合わさるのだとか。
 光るクッキーかー……体に悪そう。

 とりあえず、二人はやる気らしい。特にアイシャさんが乗り気だ。

「本当は、神父さまとやりたかったんですけど、必要なくなったので、ただ純粋にお祭りを楽しもうと思って」

 俺もやるだけやるか。元の世界じゃ絶対できないし。
 三人で近くのクッキーを取る。何の変哲もない小麦色のクッキーだ。

 魔方陣が描かれているということもない。

 クッキーを見ていると、たくさんの人の中からおおっと歓声が上がった。

「陣が合ったみたいですね」

 え、気になる。と思っていたら、俺の持ってたクッキーが光りだした。

「えっ……」

 この世界に俺と縁のある人いるの?全くと言っていいほど知り合い居ないんだけど。

「マリヤさん!!すごいですよ!さっき合った人が居たばかりなのに」

 アイシャさんは興奮しているが、ビオルナさんは怪訝けげんな顔をしている。
 どういう原理で縁のある人が見つかるのかわからないが、そんな人に出会ってしまって、地球に帰れなくならないだろうか。

 群衆の中から、黄色い声が上がる。喧騒けんそうの中でも、やたらに高い女の人の声が耳に入った。

 何だろうと思っていると、さっきの王子様が人垣からパッと現れた。沢山の人がその人から一歩離れて注目している。

 本当にまた会えたな、と思っていると、王子様の右手を見てギョッとなった。


 クッキー光ってんですけど……


「やっぱり」

 こちらに、甘い笑みを浮かべながら近づいてくる。

 何故か危険を感じて一歩下がる。

 それに気づいたのか、困ったような表情をした王子に、周りからすごい声が上がった。え、倒れた女の人いたけど……

 イケメンの威力の凄さにビックリしていると、王子のクッキーと俺のクッキーが一際ひときわ光って、一緒のタイミングで光が消えた。

「場所、変えましょうか」

「いやー、記念にやってみただけなので……」

 何故か逃げ出したくなって、じりじりと後退る。

 すると、王子の左後ろにに立ってたらしい女の子が、前に出てきて怒り出した。

「エリオネル様に誘われて、断るなんて!!」

 頭がピンク色してる!

 淡いピンク色の髪を、2つに結んでフリフリしたシャツを着ている。

 顔は可愛い系なのに、目を吊り上げているからか、キツい第一印象になった。

「ウィラ、やめなさい」

 王子がジロリと一瞥いちべつすると、ウィラと呼ばれた子が悔しそうに黙った。

 え、ごめん。女の子にそんな表情をさせてしまったことに少し罪悪感を感じる。

「私達はこの後、西方せいほう教会へ行くのですが、一緒にいかがですか?」

「あ!私、西方教会の者です」

 アイシャさんの一言にビックリする。え、陣合わせで合った人がピンチに助けてくれて、しかもお世話になってる教会にピンポイントで用事があるとか……

 まさか……

 俺の勘は、教会に戻って合ってた事を知る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

ようこそ異世界縁結び結婚相談所~神様が導く運命の出会い~

てんつぶ
BL
「異世界……縁結び結婚相談所?」 仕事帰りに力なく見上げたそこには、そんなおかしな看板が出ていた。 フラフラと中に入ると、そこにいた自称「神様」が俺を運命の相手がいるという異世界へと飛ばしたのだ。 銀髪のテイルと赤毛のシヴァン。 愛を司るという神様は、世界を超えた先にある運命の相手と出会わせる。 それにより神の力が高まるのだという。そして彼らの目的の先にあるものは――。 オムニバス形式で進む物語。六組のカップルと神様たちのお話です。 イラスト:imooo様 【二日に一回0時更新】 手元のデータは完結済みです。 ・・・・・・・・・・・・・・ ※以下、各CPのネタバレあらすじです ①竜人✕社畜   異世界へと飛ばされた先では奴隷商人に捕まって――? ②魔人✕学生   日本のようで日本と違う、魔物と魔人が現われるようになった世界で、平凡な「僕」がアイドルにならないと死ぬ!? ③王子・魔王✕平凡学生  召喚された先では王子サマに愛される。魔王を倒すべく王子と旅をするけれど、愛されている喜びと一緒にどこか心に穴が開いているのは何故――? 総愛されの3P。 ④獣人✕社会人 案内された世界にいたのは、ぐうたら亭主の見本のようなライオン獣人のレイ。顔が獣だけど身体は人間と同じ。気の良い町の人たちと、和風ファンタジーな世界を謳歌していると――? ⑤神様✕○○ テイルとシヴァン。この話のナビゲーターであり中心人物。

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

ヒリスの最後の願い

志子
BL
気付けば小説の中の傲慢な王の子どもに生まれ変わっていた。 どうせ主人公に殺される運命なんだ。少しぐらいわがままを言ってもいいだろ? なぁ?神様よ? BL小説/R-15/流血・暴力・性暴力・欠損表現有 誤字脱字あったらすみません。

処理中です...