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第一章【出会い】
第六話 初めてのポーション
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神父さまによると、一行が来るのは明々後日以降になるそうで、明後日開かれるお祭りにアイシャさんと行くことになった。
神父さまは教会を長く離れられないらしく、アイシャさんもお祭りに行くのは初めてなんだそうだ。
「楽しみですね!行ったことなくて、気になってたんです!」
あの後、アイシャさんはいつも以上に普通に接してくれた。
少し寂しさを感じるのは、身勝手だろうか……
「どういったお祭りなんですか?」
「イシス様をお祭りする、豊穣のお祭りで、ここエリアシスでは一番大きなお祭りなんですよ」
「へぇー」
この国はどうやら複数の神様が居て、その神様たちと生活が密接に繋がっているらしい。
教会での暮らしは、特に魔法など使ったりせず、少し不便なこともあるが、思ったよりも快適だった。
電気が無い生活に慣れるのに少しかかったが、水道もあるし、別段問題はない。
「あの、マリヤさん……、お祭りで何かあるといけないので、髪の色を変えるポーションを飲んでいただけませんか?!」
一気にそう言ったアイシャさんは、ものすごく申し訳なさそうにしている。
「はい、そういうのがあるならぜひ」
アイシャさんと神父さまは、俺が黒髪だと知っても捕まえたり何かしようとはしなかった。
ここまでお世話になっておいて、今さら信用しないもないと思うし。
「ごめんなさい……、でも、どうしてだかお祭りに行けば解ると思いますので……」
「?」
黒髪を教会が捕まえるという話が本当なら、捕まえてない神父さまたちにご迷惑がかかるだろうし、当然だと思う。
でも、お祭りで何が解るんだろ?
俺の小さな疑問は、祭り当日最悪な形で解けることになる。
この世界の人じゃない俺がポーション、薬みたいな物を飲むことに一抹の不安が残る。
食べ物で異変はないから、大丈夫だと思うけど……
スマホのカメラで見ながら飲もう!多分、電池は持つはず。
スマホの起動音に何故だかすごい焦りながら、内カメラで自分を映した。
「よし!」
ぐいっとポーションを煽り、画面を凝視する。
髪のてっぺんから異変が現れる。
ヤバい、まじで変わり始めた……
青というか、水色のような色に変わっていく髪。浸食するように変わっていく様は、本当に異世界に居るんだという実感になった。
前髪を摘まんで、直接見てみると、陽に輝いてキラキラした水色だった。
「お、終わりました」
ドアの前で待ってくれていたアイシャさんに声をかける。
「わー!準属性、水なんですね!マリヤさん!」
「準属性……?」
「主属性が自分が一番持っている魔法の属性で、準属性が二番目の属性です。あのポーションは、準属性の色が発現するようになっていて、自分の準属性を調べるために使ったりもするんですよ」
「え……ということは、俺……魔法使えるんですか?」
「使えると思いますよ!」
マジかよ……
「アイシャさんは、何属性なんですか?」
「私は、土です……」
「それって、どんな魔法が使えるんですか?」
「私の場合は、植物との相性が良くて、上手に……育て……られ、るとか……」
「ほう、今のお仕事にすごく向いてますね!」
ここ数日で、自給自足といかないまでも、この教会ではたくさんの野菜を育てていることがわかった。
その仕事は、ほとんどアイシャさんが担っている。
神父さまは毎日のように教会に来る患者さんを治癒しているようだった。神父さまは、ここでは医者のような役割なのだと思う。病院が無いって言っていたし。
アイシャさんは、神父さまのサポートや窓口などをしながら、野菜を育てている。
どう見ても働きすぎだと思うのだが、本人は自分が役立たずだと思っているらしく、たまに自信なさげな表情を浮かべていた。
「や、あの……野菜は趣味なので……」
「え、趣味であの量育ててるんですか!?
あれ?でも、神父さまも仕事って言ってましたよ」
普通の農家くらいの野菜あったけど……
「神父さまはお優しいから……」
「いやいやいや!優しさじゃなくて、立派な仕事ですよ!」
「でも……育てるしか能がないので……」
「えー!神父さまのサポートまでしてるのに、アイシャさん自信なさすぎですって!逆に働きすぎですよ」
初めてそんなことを言われたというように、アイシャさんが顔をあげた。
「お世辞でも嬉しいです」
にっこり笑うアイシャさんに、何だかすごく悲しくなった。
「国民のほとんどが、私のような魔法が使えます。それどころか、火や水など準属性があるのが当たり前なのです」
「へぇ」
「私は、単属性の……」
アイシャさんは悲しそうな顔をして、黙ってしまった。
「この世界は大変なんですね。前に居た世界では、アイシャさんは完全に働きすぎです」
「マリヤさん……」
ニッコリ微笑むと、やっとアイシャさんが笑ってくれた。
「神父さまも、完全に働きすぎですけどね」
「そうなんです!しかも、私が来るまで一人でお仕事されてたんですよ!」
「ふぁ……!?じゃあ、余計にアイシャさんが居てよかったですね」
アイシャさんは、また驚いた顔になると、ポロポロと涙をこぼし始めた。
焦った俺は、シャツで涙をふいてあげながら、ゆっくり話を聞いた。
神父さまは教会を長く離れられないらしく、アイシャさんもお祭りに行くのは初めてなんだそうだ。
「楽しみですね!行ったことなくて、気になってたんです!」
あの後、アイシャさんはいつも以上に普通に接してくれた。
少し寂しさを感じるのは、身勝手だろうか……
「どういったお祭りなんですか?」
「イシス様をお祭りする、豊穣のお祭りで、ここエリアシスでは一番大きなお祭りなんですよ」
「へぇー」
この国はどうやら複数の神様が居て、その神様たちと生活が密接に繋がっているらしい。
教会での暮らしは、特に魔法など使ったりせず、少し不便なこともあるが、思ったよりも快適だった。
電気が無い生活に慣れるのに少しかかったが、水道もあるし、別段問題はない。
「あの、マリヤさん……、お祭りで何かあるといけないので、髪の色を変えるポーションを飲んでいただけませんか?!」
一気にそう言ったアイシャさんは、ものすごく申し訳なさそうにしている。
「はい、そういうのがあるならぜひ」
アイシャさんと神父さまは、俺が黒髪だと知っても捕まえたり何かしようとはしなかった。
ここまでお世話になっておいて、今さら信用しないもないと思うし。
「ごめんなさい……、でも、どうしてだかお祭りに行けば解ると思いますので……」
「?」
黒髪を教会が捕まえるという話が本当なら、捕まえてない神父さまたちにご迷惑がかかるだろうし、当然だと思う。
でも、お祭りで何が解るんだろ?
俺の小さな疑問は、祭り当日最悪な形で解けることになる。
この世界の人じゃない俺がポーション、薬みたいな物を飲むことに一抹の不安が残る。
食べ物で異変はないから、大丈夫だと思うけど……
スマホのカメラで見ながら飲もう!多分、電池は持つはず。
スマホの起動音に何故だかすごい焦りながら、内カメラで自分を映した。
「よし!」
ぐいっとポーションを煽り、画面を凝視する。
髪のてっぺんから異変が現れる。
ヤバい、まじで変わり始めた……
青というか、水色のような色に変わっていく髪。浸食するように変わっていく様は、本当に異世界に居るんだという実感になった。
前髪を摘まんで、直接見てみると、陽に輝いてキラキラした水色だった。
「お、終わりました」
ドアの前で待ってくれていたアイシャさんに声をかける。
「わー!準属性、水なんですね!マリヤさん!」
「準属性……?」
「主属性が自分が一番持っている魔法の属性で、準属性が二番目の属性です。あのポーションは、準属性の色が発現するようになっていて、自分の準属性を調べるために使ったりもするんですよ」
「え……ということは、俺……魔法使えるんですか?」
「使えると思いますよ!」
マジかよ……
「アイシャさんは、何属性なんですか?」
「私は、土です……」
「それって、どんな魔法が使えるんですか?」
「私の場合は、植物との相性が良くて、上手に……育て……られ、るとか……」
「ほう、今のお仕事にすごく向いてますね!」
ここ数日で、自給自足といかないまでも、この教会ではたくさんの野菜を育てていることがわかった。
その仕事は、ほとんどアイシャさんが担っている。
神父さまは毎日のように教会に来る患者さんを治癒しているようだった。神父さまは、ここでは医者のような役割なのだと思う。病院が無いって言っていたし。
アイシャさんは、神父さまのサポートや窓口などをしながら、野菜を育てている。
どう見ても働きすぎだと思うのだが、本人は自分が役立たずだと思っているらしく、たまに自信なさげな表情を浮かべていた。
「や、あの……野菜は趣味なので……」
「え、趣味であの量育ててるんですか!?
あれ?でも、神父さまも仕事って言ってましたよ」
普通の農家くらいの野菜あったけど……
「神父さまはお優しいから……」
「いやいやいや!優しさじゃなくて、立派な仕事ですよ!」
「でも……育てるしか能がないので……」
「えー!神父さまのサポートまでしてるのに、アイシャさん自信なさすぎですって!逆に働きすぎですよ」
初めてそんなことを言われたというように、アイシャさんが顔をあげた。
「お世辞でも嬉しいです」
にっこり笑うアイシャさんに、何だかすごく悲しくなった。
「国民のほとんどが、私のような魔法が使えます。それどころか、火や水など準属性があるのが当たり前なのです」
「へぇ」
「私は、単属性の……」
アイシャさんは悲しそうな顔をして、黙ってしまった。
「この世界は大変なんですね。前に居た世界では、アイシャさんは完全に働きすぎです」
「マリヤさん……」
ニッコリ微笑むと、やっとアイシャさんが笑ってくれた。
「神父さまも、完全に働きすぎですけどね」
「そうなんです!しかも、私が来るまで一人でお仕事されてたんですよ!」
「ふぁ……!?じゃあ、余計にアイシャさんが居てよかったですね」
アイシャさんは、また驚いた顔になると、ポロポロと涙をこぼし始めた。
焦った俺は、シャツで涙をふいてあげながら、ゆっくり話を聞いた。
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