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第6章:灼炎の祠と銀狼獣人編
第11話:変なオルガ
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翌日、依頼の品を渡すためにオルガ工房に向かう俺たち。
この間の俺の毒騒動や、昨日のキアラの怪我や装備の破損などもあり、一週間ほど冒険を休むことにした。
「本当に宿で休んでなくても良かったの? キアラ」
「ああ。セーラが夜通し看病してくれていたからな。体調的には問題ない」
「良かったです。キアラさんが元気になって」
リズたちが隣で話し合っている。
俺の時と同じように、セーラは一晩中、何重にも回復魔法をかけてキアラを看護していたらしい。
高位の回復魔法なら一発で全快するらしいが、セーラは俺と同じく中級までの魔法しか使えないようだ。
そのため、時間を空けながら回復魔法を何度もかけて、全快まで持っていく必要がある。
回復薬であるポーションの場合は、飲み過ぎによる中毒症状というものがあるらしいが、回復魔法には副作用がない。
回復魔法に属するのは光魔法か、上級以上の水魔法だけになるらしい。
上級以上の水魔法の使い手ともなれば、すでにベテラン冒険者で、パーティを組んでいることが多く、どこのパーティも新規のヒーラー役を探すのは苦労するのだそうだ。
よって、ランクが低くても初めから回復魔法の使える光魔法の使い手の需要は大きいらしい。
そんな中でセーラがうちに来てくれたのは、幸運という他ないだろう。
オルガ工房に到着すると、オルガが誰かと話している。
「誰だろう……お客さんかな?」
「みたいだな。少し待っていようか」
首をかしげるリズに応える。
オルガの様子を見ていると、なんだか普段の彼女とは違う感じだ。
妙にきゃぴきゃぴしているというか、目がハートマークというか。
胸の前で指を組んだりして、頬を赤らめている。
なるほど。そういうことらしいな。
「ねえ。あれって、ひょっとして……♪」
「ああ。オルガも可愛い顔をするではないか」
「恋する女性は素敵ですね♪」
リズやキアラ、セーラも気づいたようで普段の彼女とのギャップから、苦笑交じりに微笑まし気に見ていた。
そんな時、オルガがこちらに気づいた。
「おお! 噂をすれば!! みんな! こっちに来なよ!」
オルガが手招きをする。
俺たちが向かうとオルガの前にいた白いローブを着たイケメン風の青年がぺこりと頭を下げてくる。
「紹介するよ! こちらが今回依頼を受けてくれたレオのパーティ! で、こっちのお兄さんが今回、素材を御所望だった魔導士ルトさんだよ!」
「どうも、ルトです。依頼を受けてくれて助かりました。素材が足りなくて、どうしようかと思っていたのですよ」
糸目に眼鏡、若草色の髪の好青年風の高身長男性。
うむむ……イケメンだ。オルガもお目が高い。
おまけにすごく良い匂いがする。
これは……花のコロンだろうか。どこかで嗅いだ気もするが……。
何を使っているのか教えてほしいものだ。
「いえいえ、お役に立てて何よりです。それよりも依頼の品の方を。オルガ、ルトさんにそのまま渡しても?」
「ああ。せっかく会ったんだ。構わないさ」
俺の言葉にキラキラした目で首肯するオルガ。
「どれ……うん、確かに。流石はオルガさんイチオシの冒険者さんだ。ここまで早く依頼を完遂してくれるとは。工房に在庫が無いと聞いた時はどうしようかと思っていたんですが、ギルドを使ってまで素材を調達してくれるとは。ありがとう、オルガさん」
「いえいえー♪ あたしもお譲りできなくて歯がゆかったですからー♪」
『地獄犀の毛皮』を確認して、ニッコリと微笑むルトさん。
うむ、イケメンだ。
オルガもくねくねと身体をよじらせている。
「それでは、また来ますね。オルガさん」
「は、はうぅ~。はい♪ お待ちしてます♪」
頭を撫でられて恍惚の表情を浮かべるオルガ。
ルトさんの姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた。
「はっ! そうだ、レオ。報酬の方を……はい!」
「確かに。というか、この報酬はルトさんが出したものだよな?」
「ううん、違うよ。在庫が無かったのはこちらの落ち度だし、これはあたしの懐から出したものだよ」
あっけらかんとした顔で答えるオルガ。
ん? ということは、ルトさんは無償で『地獄犀の毛皮』三枚をゲットしたってことか。
落ち度といっても、鍛冶屋にそこまでの責任は無いと思うが。
俺が不思議に思っていると、リズたちが割り込んでくる。
「いやー、オルガさんも隅に置けないねー。あんな『いい人』がいるなんてさ!」
「そうだぞ! なかなかの好青年だったではないか」
「レオ様には敵いませんけど、それでも感じのいい御仁でしたよね♪」
三人とも興奮気味にオルガに詰め寄る。
「よ、よしてよー♪ 『いい人』だなんてー、そんなんじゃないってばぁ♪」
彼女の方もまんざらではない様子だ。
恋の話になったら女の子は皆、たくましいな。
「まあ、シレイドは興味ないか……な?」
そう思い、シレイドの方を見ると鼻をつまみ、毛を逆立て、鬼のようなすごい形相をしている。
「ど、どうした? シレイド?」
「……ご主人様。……今日の夜……シレイド、ご主人様の部屋に行く……オルガの依頼書を見た時から思ってた『おかしさ』の中身がようやく解った……」
「お、おう。分かった。じゃあ、今日、待ってるな……」
いつもとは違う彼女の表情に、少し戸惑いを覚えつつ、そう約束したのだった。
この間の俺の毒騒動や、昨日のキアラの怪我や装備の破損などもあり、一週間ほど冒険を休むことにした。
「本当に宿で休んでなくても良かったの? キアラ」
「ああ。セーラが夜通し看病してくれていたからな。体調的には問題ない」
「良かったです。キアラさんが元気になって」
リズたちが隣で話し合っている。
俺の時と同じように、セーラは一晩中、何重にも回復魔法をかけてキアラを看護していたらしい。
高位の回復魔法なら一発で全快するらしいが、セーラは俺と同じく中級までの魔法しか使えないようだ。
そのため、時間を空けながら回復魔法を何度もかけて、全快まで持っていく必要がある。
回復薬であるポーションの場合は、飲み過ぎによる中毒症状というものがあるらしいが、回復魔法には副作用がない。
回復魔法に属するのは光魔法か、上級以上の水魔法だけになるらしい。
上級以上の水魔法の使い手ともなれば、すでにベテラン冒険者で、パーティを組んでいることが多く、どこのパーティも新規のヒーラー役を探すのは苦労するのだそうだ。
よって、ランクが低くても初めから回復魔法の使える光魔法の使い手の需要は大きいらしい。
そんな中でセーラがうちに来てくれたのは、幸運という他ないだろう。
オルガ工房に到着すると、オルガが誰かと話している。
「誰だろう……お客さんかな?」
「みたいだな。少し待っていようか」
首をかしげるリズに応える。
オルガの様子を見ていると、なんだか普段の彼女とは違う感じだ。
妙にきゃぴきゃぴしているというか、目がハートマークというか。
胸の前で指を組んだりして、頬を赤らめている。
なるほど。そういうことらしいな。
「ねえ。あれって、ひょっとして……♪」
「ああ。オルガも可愛い顔をするではないか」
「恋する女性は素敵ですね♪」
リズやキアラ、セーラも気づいたようで普段の彼女とのギャップから、苦笑交じりに微笑まし気に見ていた。
そんな時、オルガがこちらに気づいた。
「おお! 噂をすれば!! みんな! こっちに来なよ!」
オルガが手招きをする。
俺たちが向かうとオルガの前にいた白いローブを着たイケメン風の青年がぺこりと頭を下げてくる。
「紹介するよ! こちらが今回依頼を受けてくれたレオのパーティ! で、こっちのお兄さんが今回、素材を御所望だった魔導士ルトさんだよ!」
「どうも、ルトです。依頼を受けてくれて助かりました。素材が足りなくて、どうしようかと思っていたのですよ」
糸目に眼鏡、若草色の髪の好青年風の高身長男性。
うむむ……イケメンだ。オルガもお目が高い。
おまけにすごく良い匂いがする。
これは……花のコロンだろうか。どこかで嗅いだ気もするが……。
何を使っているのか教えてほしいものだ。
「いえいえ、お役に立てて何よりです。それよりも依頼の品の方を。オルガ、ルトさんにそのまま渡しても?」
「ああ。せっかく会ったんだ。構わないさ」
俺の言葉にキラキラした目で首肯するオルガ。
「どれ……うん、確かに。流石はオルガさんイチオシの冒険者さんだ。ここまで早く依頼を完遂してくれるとは。工房に在庫が無いと聞いた時はどうしようかと思っていたんですが、ギルドを使ってまで素材を調達してくれるとは。ありがとう、オルガさん」
「いえいえー♪ あたしもお譲りできなくて歯がゆかったですからー♪」
『地獄犀の毛皮』を確認して、ニッコリと微笑むルトさん。
うむ、イケメンだ。
オルガもくねくねと身体をよじらせている。
「それでは、また来ますね。オルガさん」
「は、はうぅ~。はい♪ お待ちしてます♪」
頭を撫でられて恍惚の表情を浮かべるオルガ。
ルトさんの姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた。
「はっ! そうだ、レオ。報酬の方を……はい!」
「確かに。というか、この報酬はルトさんが出したものだよな?」
「ううん、違うよ。在庫が無かったのはこちらの落ち度だし、これはあたしの懐から出したものだよ」
あっけらかんとした顔で答えるオルガ。
ん? ということは、ルトさんは無償で『地獄犀の毛皮』三枚をゲットしたってことか。
落ち度といっても、鍛冶屋にそこまでの責任は無いと思うが。
俺が不思議に思っていると、リズたちが割り込んでくる。
「いやー、オルガさんも隅に置けないねー。あんな『いい人』がいるなんてさ!」
「そうだぞ! なかなかの好青年だったではないか」
「レオ様には敵いませんけど、それでも感じのいい御仁でしたよね♪」
三人とも興奮気味にオルガに詰め寄る。
「よ、よしてよー♪ 『いい人』だなんてー、そんなんじゃないってばぁ♪」
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「まあ、シレイドは興味ないか……な?」
そう思い、シレイドの方を見ると鼻をつまみ、毛を逆立て、鬼のようなすごい形相をしている。
「ど、どうした? シレイド?」
「……ご主人様。……今日の夜……シレイド、ご主人様の部屋に行く……オルガの依頼書を見た時から思ってた『おかしさ』の中身がようやく解った……」
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