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第5章:傲慢貴族と白衣の聖女編
第20話:ささやきの洞窟【☆】
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「むふー♪」
その日は朝からシレイドが上機嫌だった。
オルガに頼んでいた防具がようやく完成したようで、朝一番で宿に知らせが届いていた。
セーラの仲間が眠る洞窟に行く前に、オルガ工房に寄るつもりだ。
セーラの話では全一階層の広い洞窟らしい。
リズのマッピングを使えば、迷わずに仲間の眠る場所まで行けるだろう。
宿で朝食を食べて、早速オルガ工房に向かった。
「お、来たね! おや、新顔もいるじゃないか」
「セーラと言います。レオ様のパーティに加わることになりました」
「ハッハッハ、そうかい。冒険は人数が多い方が楽しいからね」
オルガが豪快に笑う。
「オルガ……!! 早く、早く……!!」
そんな彼女を見て、堪えきれなくなったシレイドが服の裾を引っ張って急かす。
「お、悪い悪い、ちょっと待ってね」
店の奥から布で包まれた服を持ってくる。
布を丁寧に取ると、そこには深い紫色のマント付きの革のスーツが出てくる。
「これが『幻想熊の毛皮』で作った。『ファントムベアスーツ』さ。手触りの良い毛皮をそのままマントに、毛を剥いで鞣した革をピッチリフィットするスーツにしたのさ。本当なら毛皮が二枚くらいほしい所だったけど、シレイドちゃんはたっぱが小さいから一枚で充分足りたよ」
「おおおぉぉー……♪」
高級感あふれるシックな色合いのスーツに、シレイドの目が輝く。
「ふふ、シレイド嬉しそうだね♪」
リズが俺にこっそり耳打ちしてくる。
「早速着てごらんよ」
俺の言葉に、シレイドは大きく頷いた。
オルガと共に店の試着室に引っ込んで数分。
満面の笑みでシレイドが出てくる。
「ご主人様ー……♪ シレイド、新しくなったー……♪」
クルクルと回ってポーズを決めるシレイド。
「おお! 凄く似合っているぞ! シレイド!」
「ホントホント、可愛いよ!」
「うむ、いい感じではないか」
「うふふ、とってもお似合いですよ、シレイドさん」
俺たちが感想を述べると満足そうに「むふー♪」と顔を綻ばす。
実に可愛い。
「それじゃあ、代金を頂こうかね」
「ああ、いい仕事をしてくれてありがとう」
「ははは、ありがとう。また来てくれよ」
オルガに礼を言い代金2万Gを支払い、店を後にする。
歩いているときも、シレイドはずっと上機嫌だ。
思えば、シレイドが加入してから、ずっと初期に買った安い『黒の衣』で凌いできた。
本人は、あまり自分の要望を言わないタイプだから、気にするのが随分と遅くなってしまったけど、こんなに喜んでくれるならもっと早めに防具を新調してあげればよかったと少し後悔した。
「さて、じゃあ、さっそくセーラの仲間が眠っている洞窟に行くか! 案内は任せるぞ、セーラ」
「はい! お任せください!」
セーラが背筋をピンと伸ばし、胸を張ると大きな二つの果実がぶるんと震える。
いかんいかん、メンバーになった直後のセーラに欲情するなど……。
煩悩を振り払い、目的地を目指した。
エルゼリアの町を出て、十五分ほど北に進んだ岩肌にその洞窟はあった。
「これが……『ささやきの洞窟』」
昨日、セーラから聞いていた全一階層の大きな洞窟。
「はい。出現する魔物は三種類。『インプ』『リトルゴーレム』『ホールウルフ』です。」
「インプは知ってるけど、あとは知らないな」
「リトルゴーレムは子供くらいのサイズの動く岩の兵士です。物理が効きにくく、魔法が有効です。水魔法が最も効きやすいですが、私の光魔法でも倒せるので心配はないかと。ホールウルフは洞窟など暗い場所に住む茶色い狼の魔物です。目は退化してますが、その分、耳と鼻が良く、素早いので油断しているとすぐに背後を取られます。こちらは物理、魔法共に有効なので普通に戦えば勝てるかと」
「なるほど、ありがとう」
俺の疑問に、すぐに詳しく答えてくれるセーラ。
「それじゃあ、早速、洞窟に入るか」
ランタンに火をつけようとした時、ふと足元が明るくなる。
見上げると、丸い光の球が浮いて、周囲を照らしてくれている。
「あ、驚かせてしまいましたか? 『ランプボール』という光魔法です。自動で私たちに追従してくれるので、洞窟や夜の冒険などに非常に便利なんですよ」
セーラがニッコリと笑う。
うむ、実に頼もしい。
「ふぇ~、光魔法って便利だねぇ」
「ああ、これなら、手が塞がらなくて済むな」
「……セーラ、すごい……!!」
「い、いえ……それほどでも……」
みんなも感嘆の声を漏らしている。
セーラは少し照れ臭そうに、はにかんでいた。
洞窟をしばらく進むと、前方に組み合わさった岩が人の形を成して三体動いているのが見えた。
「あれがリトルゴーレムか……よし!」
鑑定を行う。
名前:リトルゴーレム
危険度:D+
説明:瘴気を纏った岩が組み合わさって魔物化したもの。他のゴーレム種と比べて小型で危険度も低いが、繰り出される攻撃は重いため接近戦は注意が必要。
素材:『小岩兵の欠片』
レア素材:『ゴーレム石』
俺は、魔力を溜めて一気に解き放つ。
「エルウェーブ!!」
大きな水の波動が、岩の兵士に直撃する。
リトルゴーレムたちはバラバラと崩れ、動かなくなった。
「反応消滅……うん、倒せてるよ!」
リズが教えてくれる。
「ふぅむ、レオの魔法で一撃ということはマッドドールと同じような感じか。過度な警戒はしなくていいかもしれないな」
キアラが分析している。
リトルゴーレムの残骸を漁って、素材を頂く。
どう見ても尖った石にしか見えない『小岩兵の欠片』三つと、やけに丸くて少し銀色を帯びた『ゴーレム石』。
ううむ、これは……換金しても安そうだな。
「流石です、レオ様!」
肩を落とす俺を、セーラが熱い眼差しで見つめてくる。
まあ、格好つけれたからいいか。
俗物的な自分自身に少し苦笑する。
そして、気を引き締めて洞窟を進んでいった。
ファントムベアスーツを装備したシレイド
その日は朝からシレイドが上機嫌だった。
オルガに頼んでいた防具がようやく完成したようで、朝一番で宿に知らせが届いていた。
セーラの仲間が眠る洞窟に行く前に、オルガ工房に寄るつもりだ。
セーラの話では全一階層の広い洞窟らしい。
リズのマッピングを使えば、迷わずに仲間の眠る場所まで行けるだろう。
宿で朝食を食べて、早速オルガ工房に向かった。
「お、来たね! おや、新顔もいるじゃないか」
「セーラと言います。レオ様のパーティに加わることになりました」
「ハッハッハ、そうかい。冒険は人数が多い方が楽しいからね」
オルガが豪快に笑う。
「オルガ……!! 早く、早く……!!」
そんな彼女を見て、堪えきれなくなったシレイドが服の裾を引っ張って急かす。
「お、悪い悪い、ちょっと待ってね」
店の奥から布で包まれた服を持ってくる。
布を丁寧に取ると、そこには深い紫色のマント付きの革のスーツが出てくる。
「これが『幻想熊の毛皮』で作った。『ファントムベアスーツ』さ。手触りの良い毛皮をそのままマントに、毛を剥いで鞣した革をピッチリフィットするスーツにしたのさ。本当なら毛皮が二枚くらいほしい所だったけど、シレイドちゃんはたっぱが小さいから一枚で充分足りたよ」
「おおおぉぉー……♪」
高級感あふれるシックな色合いのスーツに、シレイドの目が輝く。
「ふふ、シレイド嬉しそうだね♪」
リズが俺にこっそり耳打ちしてくる。
「早速着てごらんよ」
俺の言葉に、シレイドは大きく頷いた。
オルガと共に店の試着室に引っ込んで数分。
満面の笑みでシレイドが出てくる。
「ご主人様ー……♪ シレイド、新しくなったー……♪」
クルクルと回ってポーズを決めるシレイド。
「おお! 凄く似合っているぞ! シレイド!」
「ホントホント、可愛いよ!」
「うむ、いい感じではないか」
「うふふ、とってもお似合いですよ、シレイドさん」
俺たちが感想を述べると満足そうに「むふー♪」と顔を綻ばす。
実に可愛い。
「それじゃあ、代金を頂こうかね」
「ああ、いい仕事をしてくれてありがとう」
「ははは、ありがとう。また来てくれよ」
オルガに礼を言い代金2万Gを支払い、店を後にする。
歩いているときも、シレイドはずっと上機嫌だ。
思えば、シレイドが加入してから、ずっと初期に買った安い『黒の衣』で凌いできた。
本人は、あまり自分の要望を言わないタイプだから、気にするのが随分と遅くなってしまったけど、こんなに喜んでくれるならもっと早めに防具を新調してあげればよかったと少し後悔した。
「さて、じゃあ、さっそくセーラの仲間が眠っている洞窟に行くか! 案内は任せるぞ、セーラ」
「はい! お任せください!」
セーラが背筋をピンと伸ばし、胸を張ると大きな二つの果実がぶるんと震える。
いかんいかん、メンバーになった直後のセーラに欲情するなど……。
煩悩を振り払い、目的地を目指した。
エルゼリアの町を出て、十五分ほど北に進んだ岩肌にその洞窟はあった。
「これが……『ささやきの洞窟』」
昨日、セーラから聞いていた全一階層の大きな洞窟。
「はい。出現する魔物は三種類。『インプ』『リトルゴーレム』『ホールウルフ』です。」
「インプは知ってるけど、あとは知らないな」
「リトルゴーレムは子供くらいのサイズの動く岩の兵士です。物理が効きにくく、魔法が有効です。水魔法が最も効きやすいですが、私の光魔法でも倒せるので心配はないかと。ホールウルフは洞窟など暗い場所に住む茶色い狼の魔物です。目は退化してますが、その分、耳と鼻が良く、素早いので油断しているとすぐに背後を取られます。こちらは物理、魔法共に有効なので普通に戦えば勝てるかと」
「なるほど、ありがとう」
俺の疑問に、すぐに詳しく答えてくれるセーラ。
「それじゃあ、早速、洞窟に入るか」
ランタンに火をつけようとした時、ふと足元が明るくなる。
見上げると、丸い光の球が浮いて、周囲を照らしてくれている。
「あ、驚かせてしまいましたか? 『ランプボール』という光魔法です。自動で私たちに追従してくれるので、洞窟や夜の冒険などに非常に便利なんですよ」
セーラがニッコリと笑う。
うむ、実に頼もしい。
「ふぇ~、光魔法って便利だねぇ」
「ああ、これなら、手が塞がらなくて済むな」
「……セーラ、すごい……!!」
「い、いえ……それほどでも……」
みんなも感嘆の声を漏らしている。
セーラは少し照れ臭そうに、はにかんでいた。
洞窟をしばらく進むと、前方に組み合わさった岩が人の形を成して三体動いているのが見えた。
「あれがリトルゴーレムか……よし!」
鑑定を行う。
名前:リトルゴーレム
危険度:D+
説明:瘴気を纏った岩が組み合わさって魔物化したもの。他のゴーレム種と比べて小型で危険度も低いが、繰り出される攻撃は重いため接近戦は注意が必要。
素材:『小岩兵の欠片』
レア素材:『ゴーレム石』
俺は、魔力を溜めて一気に解き放つ。
「エルウェーブ!!」
大きな水の波動が、岩の兵士に直撃する。
リトルゴーレムたちはバラバラと崩れ、動かなくなった。
「反応消滅……うん、倒せてるよ!」
リズが教えてくれる。
「ふぅむ、レオの魔法で一撃ということはマッドドールと同じような感じか。過度な警戒はしなくていいかもしれないな」
キアラが分析している。
リトルゴーレムの残骸を漁って、素材を頂く。
どう見ても尖った石にしか見えない『小岩兵の欠片』三つと、やけに丸くて少し銀色を帯びた『ゴーレム石』。
ううむ、これは……換金しても安そうだな。
「流石です、レオ様!」
肩を落とす俺を、セーラが熱い眼差しで見つめてくる。
まあ、格好つけれたからいいか。
俗物的な自分自身に少し苦笑する。
そして、気を引き締めて洞窟を進んでいった。
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