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第4章:エルゼリアと無骨なエルフ騎士編

第28話:いざないの洞窟・三階層へ

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 ——翌日、朝。
「よし、行くか! 二階層を攻略するぞ!」
「「「おー!!」」」
 俺の号令に三人が応える。
 昨夜は、たき火に当たりながら見張りを行い、交代してテントの中で眠った。
 魔物の襲撃を警戒していたが、野生動物と同じように火が苦手なのか、はたまた運が良かったのか、襲ってくることは無かった。
 今日の目標は、二階層を突破して三階層に進むこと。
『いざないの洞窟』は全三階層のダンジョンなので、つまりは今日中に最下層に潜りたい。
 そして、ボニーに頼まれたレア素材『リザードマンの尻尾』を手に入れたい。
 色々と頭の中で整理しながら、二階層を進む。
 マッドドールとの戦闘が何回かあったが、今日は、接近戦はしない。
 水属性魔法で一撃破壊しながら進む。
 しばらく進んでいると、インプ三匹が現れる。
 マッドドール二体と一緒だ。
「そうか『いざないの洞窟』では、上層の魔物は下層でも普通に現れるんだったな」
 実際、ギルドで受けた『インプの討伐依頼』には『全階層に出現する』と書いてあったし。
「ああ。他のダンジョンでも同じだ。必然的に、出現する魔物は下層に進むにつれて段々と種類が増えることになる」
 キアラが教えてくれる。
「よし。種類が増えようが手早く済ませるぞ。まずは手っ取り早く土人形を倒す」
「じゃあ、インプの方は私たちに任せてよ!」
「分かった、じゃあ行くぞ……!」
 打ち合わせを終え、俺はマッドドール二体に向かって魔法を放つ。
「エルウェーブ!!」
 水の波動が弧を描くように飛んでいき、マッドドール二体を粉々に破壊する。
 それと同時に、リズたちがインプに突撃する。
 シレイドが一匹の喉を掻き切り、キアラが槍で一匹の腹を貫く。
 残り一匹を、リズが少し離れた場所からクロスボウで射ようとした、その時——!
「ゲギャギャー!」
 インプが指先から火球を放つ!!
「リズ! 危ない!」
 今からでは庇えない!
 そう思った瞬間、キアラがリズの前に立ち火球を受け止める!
 ボウンッ!
 直撃した。
「ふんっ!!」
 シレイドがインプとの距離を詰めてダガーで急所を斬り払う。
「ゲ……ギャ……」
 インプはその場でバタリと倒れる。
「キアラ!?」
「ケホッ、ケホッ、大丈夫だ。ちょっと熱かったが、ケガはない」
 俺が駆け寄ると、キアラはむせながら手を振る。
 心配そうなリズの頭をそっと撫でるキアラ。
「キアラぁ……大丈夫? ごめんね、あたしのせいで……」
「ははは、平気だ。この通りピンピンしている。それに、私は前衛だ。仲間を庇うのは当然だろう?」
 よかった、本当に何ともないみたいだ。
 火球が当たったであろう『セイントメイル』は傷一つ付いていない。
 うん、やはり防具を新調しておいてよかったな。
 値が張っただけあって、防御力は折り紙つきのようだ。
「曲がりなりにも危険度D+だな。魔法を撃ってくるとは」
「ん……頻度は少ないけど、注意しないといけない……」
 俺の言葉にシレイドも頷く。
 当たったのが耐久の無いリズや、安い防具のシレイドだったら、被害は少なくなかっただろう。
 俺たちは、気を引き締めなおして進む。

 その後も、何度か戦闘を行いながら三階層への道を探していく。
 頻度は多くないが、インプも現れた。
 ダメージを負わないように、疲労が溜まらないように、できるだけ早く戦闘を終わらせる。
 リズの『マッピング』により二階層の未踏部分も少なくなってきた。
 そして、遂に三階層へ続く階段を見つける。
「よし。二階層はクリアだな……」
「ええ。三階層からは新しい魔物、リザードマンも現れるよ!」
「全身が赤い、二足歩行の蜥蜴の魔物らしいな」
「ん……」
 みんなも気合が入っている。
 そうだ……あの事を話しておかねば……。
 俺はボニーから頼まれた『リザードマンの尻尾』の件を皆に話した。
「なんか……前にもこんなことなかった?」
「ああ、そうだな。俺もデジャヴのような気がしている」
「……シレイド、久しぶりにミレーユのオムライス食べたくなった……」
 すごく、苦い顔をしているリズに応える。
 そうだよなー、あの傲慢な男を思い出すよなー。
 シレイドの方は、面倒くさい貴族の記憶ではなく、食の思い出と結びついたようだ。
「なんにせよ、困っているなら助けるのみだ。世話になっている者なら尚更な!」
 正義感の強いキアラがグッと拳を握る。
 そうして、俺たちは三階層に足を踏み入れた。

 ギロリ……。
 三階層に降りた瞬間、目的の魔物はいた。
 赤い蜥蜴二匹が二足歩行でこちらを睨む。
 リザードマンだ。
 急いで鑑定を行う。

名前:リザードマン
危険度:D+
説明:二足歩行で行動する、人のような蜥蜴の魔物。長い爪を武器にして、獲物を切り裂き仕留める。肉食で凶暴。
素材:『リザードマンの爪』
レア素材:『リザードマンの尻尾』

「キシャアアアアア!」
 鋭い爪を振り上げながら、威嚇してくる。
「隙あり!! ハァ!!」
 いきなりの遭遇だったが、リズが素早く反応して二匹の喉に矢を射る。
 ズドン! ズドン!
 急所を突かれたリザードマン二匹はバタリと倒れて動かなくなる。
 倒したようだ。
「お見事だったな。リズ」
「えへへー、さあさあ、さっさと尻尾とっちゃおうよ!」
 いつも通り、魔物素材の剥ぎ取りを行う……が。
 ちょろーん。
 採取できた尻尾は何とも小さい。
「ふむ……これではステーキには出来なそうだが」
「ん……一口で食べ終わる」
 シレイドとキアラが小さな尻尾を見ながら首をかしげている。
 案の定、鑑定を行っても素材として反応しなかった。
「まあまあ、レア素材なんだし、こういうこともあるよ!」
 肩を落とす俺を、リズが励ましてくれる。
 この時は知らなかった。このレア素材『リザードマンの尻尾』の入手率の低さを……!
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