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第4章:エルゼリアと無骨なエルフ騎士編
第4話:キアラの金銭感覚
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換金を終えて、充分な資金が作れたので宿に戻る。
食堂で、少し早い夕食をみんなで取っていた。
「かなり所持金が潤ったね!」
「だな。こんなに稼げるとは思わなかったよ」
ホクホク顔のリズに同調する。
なにせ、俺の方も所持金が約110万Gに膨れ上がったのだ。
ギルドで納品依頼を受ける手もあったが、残念なことに深淵の魔物素材で大口の納品依頼は無かった。
なぜなら、ルクシアでそこまで多くの深淵の魔物を狩れる冒険者がいないからだ。
ここでも、俺たちのレベルがもはやルクシアでは過剰になっていることを示していた。
「良かったな、みんな上手く金策ができて」
「ああ。これで十日後のエルゼリアへの諸々の経費も捻出できただろう」
キアラがニコニコしながら言う。
とりあえず、金銭的な心配をしなくてよくなったので、かなり気分的に楽だ。
「えっと……エルゼリアへの交通費が2万G、途中の食費とかエルゼリアに着いた後の宿代とかを考えたら一人10万Gは欲しいよね」
リズが言うとキアラの目が急に点になる。
「じ、10万……? そ、そんなに要るのか!?」
キアラが急に慌てたように言う。
「うん。エルゼリアはここより都会だからね。宿代とか食費も高いのよ。旅行ツアーのパンフレット見てても、結構値が張ってたし。なんといっても、ルクシアは辺境のど田舎だからね。多分、行ったらビックリするよ?」
何も感づいていないリズの言葉に、どんどんと表情が曇りだすキアラ。
冷や汗までかいている。
まさかとは思うが……。
「キアラ? キアラの今の所持金はいくらだ?」
失礼かもしれないが確認のために訊いてみる。
キアラは目を伏せて、指をモジモジさせながら小さく呟いた。
「ご、5万G……」
やはりか。
「ええっ!? それじゃあ全然足りないよ!? これから長い旅をするっていうのに、5万Gしか持ってこなかったの!?」
「し、仕方ないだろう!? これが私の全財産なのだ!! そ、それに、前にルクシアに来たときは1万Gもあれば充分足りたぞ!? ど、どうしよう!? い、今からガラテアに戻り、女王様に頼み込むか? いや、それは恰好悪すぎる」
リズの言葉に、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言い返すキアラ。
そうか、失念していた。
エルフは基本的に自給自足をしている、いわば質素倹約な種族。
お金の面に対してもかなり疎いのだったな。
リズとキアラがあたふたと慌てているのをむしゃむしゃとミートパイを頬張りながら眺めているシレイド。
すると、突然シレイドが言い放つ。
「問題ない……キアラもご主人様の奴隷になればいい……!!」
俺もリズもキアラもその言葉に固まる。
当の本人は「むふー……♪」と胸を張って得意げだ。
「ど、どういう……ことだ?」
キアラが耐えきれなくなったのか聞き返す。
「冒険者は基本、自分のことは自分でするのが決まり……だけど、奴隷になれば、ご主人様に養ってもらえる……すごく経済的……」
呆気に取られる俺たち三人。
シレイドは言うだけ言うと、またミートパイに夢中になっている。
「き、キアラ……とりあえず、心配するな。当分の間はかかるお金は全部、俺が出すから」
「ほ、本当にいいのか……?」
「ああ、構わない。冒険する間に、きちんとした金銭感覚を身につけていこう」
「あ、ああ。ありがとう、レオ」
奴隷になればいいというぶっ飛び発言を聴いた後だからか、キアラが俯いたままで申し訳なさそうに言う。
まあ、仕方ないだろう。
当面は俺が面倒を見よう。
食事が終わり、それぞれの部屋に戻る。
今日の相部屋はシレイドだ。
と思ったら、シレイドと何かを話していたキアラが俺の元に来る。
「今日は私と相部屋だ……。よろしく頼む……」
「え?」
頬を染めて目を逸らすキアラ。
な、なんだ? なんなんだ、この空気……?
俺が戸惑っていると、キアラが俺の手を引いて部屋の中に入っていく。
「ど、どういうことだ? キアラが相部屋って」
俺が尋ねると、キアラは少し息を吐いて答える。
「シレイドに変わってもらったのだ……ちょうど、話したいこともあったしな、あ、あと、私も経験は無いが作法も知っているから安心しろ」
キアラは何か、重大な勘違いをしていると思う。
「さ、作法って、何を言って……むぐっ!?」
いきなり唇を奪われる。
いや、顔面を顔面で激突されたと言った方が正しいか。
少し痛いが、すぐに柔らかくほのかに甘い香りのキアラの唇が感じられた。
唇をついばむように吸ってくるキアラ。
そのまま流されていたい気持ちを押し殺し、俺はキアラを離した。
「ど、どういうことだ?」
「はぁっ、はぁっ、こ、こうするのが、人間の作法ではないのか?」
キアラは荒い息をあげながら、じっと俺を見つめる。
「人間というのは、男が女を助けた時に、その、こういった色事的な施しを受けると本で読んだのだ……それも、女も頬を赤らめて乗り気になって……」
どんな本だよ、と思いながらキアラに尋ねる。
「な、なんて名前の本だ?」
「『イケメン英雄の世直し道中』という本だ。冒険活劇だ」
なるほど、話がうっすら読めてきた。
おそらく、イケメンの英雄が女の子を冒険の途中で助けて惚れられる、もしくは見返りにイチャコラするという本だろう。
「キアラ、残念なお知らせだ。その物語の女は多分、お礼とは関係なく、その英雄に惚れている。何か理由をつけて、そういう行為をしたかっただけだ」
俺が言うと、キョトンとした表情を浮かべるキアラだったが、すぐに表情を戻して言う。
「な、ならば問題はない。どうやら、本の女と私は同じ気持ちのようだからな」
え? どういうことだ?
聞き返す前に、俺はベッドに押し倒される。
「き、キアラ!?」
「冒険を通じて散々強さと誠実さを見せつけられ、レッドオークに襲われそうになっていたのを助けられ、挙げ句、途方に暮れていると『俺が面倒を見る』と言われる。これで、君に惹かれない理由はないだろう?」
顔を赤く上気させて、覆いかぶさったまま潤んだ瞳で見つめてくるキアラ。
渾身の勇気を込めた言葉だったのだろう、キアラの肩は少し震えていた。
俺は、何も言わずにそっとキアラを引き寄せた。
「無理しなくていい。慣れてないんだろう? こういった事に」
俺は、キアラをなだめるように頭を撫でる。
キアラは、俺の腕の中で小さくコクリと頷いた。
「本当は……知識も少ない……だから、レオが教えてくれ……優しく、ゆっくりと」
俺はキアラの頭を撫でて、優しく抱きしめた。
食堂で、少し早い夕食をみんなで取っていた。
「かなり所持金が潤ったね!」
「だな。こんなに稼げるとは思わなかったよ」
ホクホク顔のリズに同調する。
なにせ、俺の方も所持金が約110万Gに膨れ上がったのだ。
ギルドで納品依頼を受ける手もあったが、残念なことに深淵の魔物素材で大口の納品依頼は無かった。
なぜなら、ルクシアでそこまで多くの深淵の魔物を狩れる冒険者がいないからだ。
ここでも、俺たちのレベルがもはやルクシアでは過剰になっていることを示していた。
「良かったな、みんな上手く金策ができて」
「ああ。これで十日後のエルゼリアへの諸々の経費も捻出できただろう」
キアラがニコニコしながら言う。
とりあえず、金銭的な心配をしなくてよくなったので、かなり気分的に楽だ。
「えっと……エルゼリアへの交通費が2万G、途中の食費とかエルゼリアに着いた後の宿代とかを考えたら一人10万Gは欲しいよね」
リズが言うとキアラの目が急に点になる。
「じ、10万……? そ、そんなに要るのか!?」
キアラが急に慌てたように言う。
「うん。エルゼリアはここより都会だからね。宿代とか食費も高いのよ。旅行ツアーのパンフレット見てても、結構値が張ってたし。なんといっても、ルクシアは辺境のど田舎だからね。多分、行ったらビックリするよ?」
何も感づいていないリズの言葉に、どんどんと表情が曇りだすキアラ。
冷や汗までかいている。
まさかとは思うが……。
「キアラ? キアラの今の所持金はいくらだ?」
失礼かもしれないが確認のために訊いてみる。
キアラは目を伏せて、指をモジモジさせながら小さく呟いた。
「ご、5万G……」
やはりか。
「ええっ!? それじゃあ全然足りないよ!? これから長い旅をするっていうのに、5万Gしか持ってこなかったの!?」
「し、仕方ないだろう!? これが私の全財産なのだ!! そ、それに、前にルクシアに来たときは1万Gもあれば充分足りたぞ!? ど、どうしよう!? い、今からガラテアに戻り、女王様に頼み込むか? いや、それは恰好悪すぎる」
リズの言葉に、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言い返すキアラ。
そうか、失念していた。
エルフは基本的に自給自足をしている、いわば質素倹約な種族。
お金の面に対してもかなり疎いのだったな。
リズとキアラがあたふたと慌てているのをむしゃむしゃとミートパイを頬張りながら眺めているシレイド。
すると、突然シレイドが言い放つ。
「問題ない……キアラもご主人様の奴隷になればいい……!!」
俺もリズもキアラもその言葉に固まる。
当の本人は「むふー……♪」と胸を張って得意げだ。
「ど、どういう……ことだ?」
キアラが耐えきれなくなったのか聞き返す。
「冒険者は基本、自分のことは自分でするのが決まり……だけど、奴隷になれば、ご主人様に養ってもらえる……すごく経済的……」
呆気に取られる俺たち三人。
シレイドは言うだけ言うと、またミートパイに夢中になっている。
「き、キアラ……とりあえず、心配するな。当分の間はかかるお金は全部、俺が出すから」
「ほ、本当にいいのか……?」
「ああ、構わない。冒険する間に、きちんとした金銭感覚を身につけていこう」
「あ、ああ。ありがとう、レオ」
奴隷になればいいというぶっ飛び発言を聴いた後だからか、キアラが俯いたままで申し訳なさそうに言う。
まあ、仕方ないだろう。
当面は俺が面倒を見よう。
食事が終わり、それぞれの部屋に戻る。
今日の相部屋はシレイドだ。
と思ったら、シレイドと何かを話していたキアラが俺の元に来る。
「今日は私と相部屋だ……。よろしく頼む……」
「え?」
頬を染めて目を逸らすキアラ。
な、なんだ? なんなんだ、この空気……?
俺が戸惑っていると、キアラが俺の手を引いて部屋の中に入っていく。
「ど、どういうことだ? キアラが相部屋って」
俺が尋ねると、キアラは少し息を吐いて答える。
「シレイドに変わってもらったのだ……ちょうど、話したいこともあったしな、あ、あと、私も経験は無いが作法も知っているから安心しろ」
キアラは何か、重大な勘違いをしていると思う。
「さ、作法って、何を言って……むぐっ!?」
いきなり唇を奪われる。
いや、顔面を顔面で激突されたと言った方が正しいか。
少し痛いが、すぐに柔らかくほのかに甘い香りのキアラの唇が感じられた。
唇をついばむように吸ってくるキアラ。
そのまま流されていたい気持ちを押し殺し、俺はキアラを離した。
「ど、どういうことだ?」
「はぁっ、はぁっ、こ、こうするのが、人間の作法ではないのか?」
キアラは荒い息をあげながら、じっと俺を見つめる。
「人間というのは、男が女を助けた時に、その、こういった色事的な施しを受けると本で読んだのだ……それも、女も頬を赤らめて乗り気になって……」
どんな本だよ、と思いながらキアラに尋ねる。
「な、なんて名前の本だ?」
「『イケメン英雄の世直し道中』という本だ。冒険活劇だ」
なるほど、話がうっすら読めてきた。
おそらく、イケメンの英雄が女の子を冒険の途中で助けて惚れられる、もしくは見返りにイチャコラするという本だろう。
「キアラ、残念なお知らせだ。その物語の女は多分、お礼とは関係なく、その英雄に惚れている。何か理由をつけて、そういう行為をしたかっただけだ」
俺が言うと、キョトンとした表情を浮かべるキアラだったが、すぐに表情を戻して言う。
「な、ならば問題はない。どうやら、本の女と私は同じ気持ちのようだからな」
え? どういうことだ?
聞き返す前に、俺はベッドに押し倒される。
「き、キアラ!?」
「冒険を通じて散々強さと誠実さを見せつけられ、レッドオークに襲われそうになっていたのを助けられ、挙げ句、途方に暮れていると『俺が面倒を見る』と言われる。これで、君に惹かれない理由はないだろう?」
顔を赤く上気させて、覆いかぶさったまま潤んだ瞳で見つめてくるキアラ。
渾身の勇気を込めた言葉だったのだろう、キアラの肩は少し震えていた。
俺は、何も言わずにそっとキアラを引き寄せた。
「無理しなくていい。慣れてないんだろう? こういった事に」
俺は、キアラをなだめるように頭を撫でる。
キアラは、俺の腕の中で小さくコクリと頷いた。
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