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第4章:エルゼリアと無骨なエルフ騎士編

第1話:これからの予定

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 昼頃、ガラテアを出発して、ルクシアに帰ると辺りはすっかり日が暮れていた。
 森の魔物との戦いも修行のうちということで、ワープは使わなかった。
 まあ、あまり使いすぎると、怠け癖がついてしまいそうになる危険な魔法だからな。
 少し遅いが、まずはギルドに向かうこととなった。
 ギルドに入ると、一斉に中の者たちの視線がこちらに向けられる。
 冒険者たちが俺たちをジロジロと見ている。
 酒場のおっさんたちも、話をするのをやめて俺たちを見つめている。
 心なしか、みんなキラキラした瞳というか、憧れでも見るようなまなざしをしているが。
「あはは……なんか、めっちゃ見られてるね。あたしたち」
「ん……なんか、気持ち悪い……」
「私がエルフだからだろうか……?」
 みんなも不思議そうだ。
 そうこうしていると、グレゴが寄ってくる。
「おう! エルフの国の英雄様! みんな、お前さんたちの噂をしてたんだぜ! なにせ、この初心者の町ルクシアで、あの超危険な指名依頼を三件達成しちまうんだから! 俺も、知り合いとして鼻が高いぜ!!」
 なるほど、グレゴのおかげで解った。
 これは、注目を浴びているのだ。
 ルクシアの初級冒険者が、エルフの国を救うなんて英雄譚、聞いたことが無いのだろう。
 尊敬のまなざしを向けられて、まあ、悪い気はしなかった。
「あの野郎……ラズベリーさんだけじゃなくて、あんな美女たちを連れ立って歩きやがって……!」
「爆発しろ、爆発しろ、爆発しろ、爆発しろ」
 一部の人からは、怨念めいているまなざしを向けられているが……。
 俺はグレゴと少し会話をした後、ラズベリーの元に向かった。
「冒険者レオのパーティ、ただいまガラテアからの依頼を全て完遂し、帰還した」
「おかえりなさいませ。約三週間に渡る依頼、お疲れさまでした」
 ラズベリーが口の端を少し上げて、出迎えてくれる。
「それでは、以前報告いただいた三件の指名依頼とは別に受けて頂いていた『ガラテアの一週間半の護衛』の分の報酬を用意いたします」
 差し出されたのは少し厚めにまとめられた紙幣。
「こちら、報酬の50万Gとなります」
「ご、50万G!?」
 三件の指名依頼の報酬と同じ金額だ。
 と言っても、追加で依頼された内容はガラテアの護衛のみ。
 それも、午前中に森に出向き、近くの魔物を狩っていただけ。
 大部分は、住民と交流したり、ルクシアの彼女たちに会いに行ったり、女王様とイチャイチャしたり好き勝手していた。
「い、いや、本当に追加依頼に関しては、そんな大したことしてないぞ? 今回ばかりは、流石にそんなに貰うわけには……」
「そうなのですか? 外の者たちとして住民たちと心の触れ合いをして頂き、レオさんにおいては家臣たちではフォローできない、女王様の日々の疲れをしっかりと取って頂いた分ということで、報酬が設定されておりますが……」
 ラズベリーが、きょとんとした顔をしている。
 キアラは、何か感づいているようだ。少し目を逸らして顔を赤くしている。
「あたしたちが、住民たちに優しくしてあげたからってこと?」
「んー……シレイドも楽しかった……おあいこのはず……」
 リズもシレイドも不思議そうだ。
「ま、まあ、いいじゃないか。エルフたちは金銭に対して寛容らしいから貰っておけば!」
 このままいけば、墓穴を掘りかねん。
「それでは、お受け取りください。今日は、ゆっくり体を休めてくださいね」
 ラズベリーが何も気づいてない笑顔で労ってくれる。
 いや、気づいていて気づいていないふりをしているのか?
 その、顔がなんとも眩しく痛い。
 俺は、ありがたく報酬を受け取り、足早にギルドを後にした。

 宿に帰り食堂にて、早速、夕飯がてらこれからのことを話す。
「さて、これからのことだが『エルゼリア』への移住計画を本格的に始めようと思う」
「前に言ってた、エルゼリアを拠点にして冒険者活動するっていう話ね」
「そうだ。エルゼリアに向かって、すぐに持ち家を持つというわけにはいかないと思うが、借家や最悪宿屋に泊まるということもできる。ここにいて活動するよりは遥かに経済的にも効率が良いだろう。冒険者稼業として拠点となるエルゼリアに早く慣れておくという点においても、理にかなっている」
「なるほどね……」
「ん……シレイドは問題ない……」
 リズもシレイドも反論はなさそうだ。
「キアラはどうだ? いきなり、ガラテアを出て移動を重ねるというのは身体的にも気持ち的にも疲れるだろうが」
「私も、異論はない。もとより、私は鍛錬のためガラテアを離れた。ガラテアより周囲の魔物が弱いこのルクシアに留まっていても、大した修行にはならないだろう。それならば、より鍛錬の積める都市に出向き、己を鍛えたい」
 キアラも大丈夫そうだ。
「よし、じゃあ、まずは今日の報酬の割り振りをしよう」
 俺は、指名依頼分の50万Gを出した。
「ん……シレイドはいつも通り要らない……」
 シレイドがいつも通り辞退する。
「私もだ。今回の報酬は、いうなれば私を含むガラテアから君たちに贈られたもの。私が受け取るのは問題がある。次回から分けてもらえればいい」
 キアラも辞退する。
「それじゃあ、リズ。25万Gずつだ」
「分かった。頂戴するわ」
 結局、俺とリズの二人で分けた。
 これで、俺の所持金は65万Gとなる。
 当分は働く必要はないだろうが、動かない日の飯は動いた日より美味くないというのは、長年の貧弱生活で学んでいる。
 せっかく身体が満足に動かせられるのだ、できる限り働いておきたい。
 なにより、俺自身、この冒険者としての仕事をものすごく気に入っているのだ。
「よし。じゃあ、明日は深淵で貯めに貯めまくった素材の換金と、エルゼリアへ向かう方法と費用の調査をしよう」
「分かったわ」
「ん……」
「問題ない」
 俺の言葉に三人が首肯する。
 これで、明日の予定も決まった。
「ちょっといいかい?」
 話が一段落するのを見計らって、宿の女将さんが話しかけてくる。
「あんたたち、お仲間が一人増えたんだろう? 部屋割りはどうするんだい? 前にも言ったけど、ここは三人部屋以上の部屋は無いんだよ」
 そうだった。
 今までは三人だったから、俺が一人部屋にいればよかったが……。
 四人となれば部屋割りを考え直さなければならない。
「なら、あたしがレオと二人部屋にするよ! シレイドちゃんとキアラで二人部屋をとればいいよ!」
 グイっと腕に抱き着いてくるリズ。
「シレイドはご主人様の奴隷……奴隷はいつも一緒にいるもの……」
 シレイドがもう片方の腕をつかんでいる。
「ははは、両手に花だな」
 キアラが愉快そうに笑う。
 結局その日はリズとシレイドがじゃんけんをして勝ったリズが俺と二人部屋となった。
 言わずもがな、ガラテアにいた間に押さえつけられていた分、久しぶりの夜は激しく燃えるような夜となった。
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