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第3章:エルフの国と優しい女王編

第30話:女神との交信・ルーティア編

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 目が覚めると俺は、女神のようなエルフの女王の胸に顔をうずめていた。
 窓から太陽が見える。
 光はもう真上から差しているようだ。
 明け方までハッスルしていたからだろうか、すでに昼前だ。
 抱きしめてくれているルーティアの腕を、起こさないようにそっとほどく。
「エルフの女王様と……カーニバルしてしまった……」
 我ながら末恐ろしくなる。
『女神の加護』の影響か。
 はたまた、ルーティアが惚れっぽかったのか。
 話では、自分を護ってくれた俺に惚れたとのことだったが、本当にファンタジーRPGによくあるような話だな。
『女王。俺は半端な気持ちではそういうことはしません。やるからにはあなたも俺の彼女になってもらいます。覚悟できてますね?(イケボ)』
「またかああああああああっ!?」
 突然、脳内にメルヴィーナの声で昨日の俺のくさい台詞が響き渡って来た。
『レオさんって案外責めたい派だったんですねえ……女王様をあんな風に追い込んじゃうなんて……ぷぷぷっ』
「俺はどっちでもいけるわ! というか、人の秘め事にケチつけるなぁ!!」
『すみません、すみません。ちょっと調子に乗っちゃいました、てへぺろ!』
 このアホ女神、絶対反省してねえな。
 あと、やけにテンションが高いな。
 機嫌がいいみたいだ。
『まあ、冗談はさておき、今回のエルフの国での働きは見事なものでした。あのままでは、ガラテアは間違いなく滅亡していました。それを救ってくれたのです。女神としてもお礼を言います。ありがとうございます』
 先ほどまでの軽い調子ではなく、深みのある声で謝意を述べてくるメルヴィーナ。
 前に言っていた、魔物や賊によって世界が少しずつ蝕まれているという関連の話だろう。
「礼を言われるようなことはしていないよ。冒険者として依頼を遂行しただけ、護るべきものを護っただけだ。俺だけの手柄じゃないしな。独りじゃ何も解決できなかっただろう」
 正直に思っていることを口にした。
 リズ、シレイド、キアラ、エルフの国の兵士たち、みんなで掴んだ勝利だ。
『それでもです。いくら『女神の加護』で耐性がついているとはいえ、地球から来た転生者は、やはり戦うことを嫌い、安全な道を通りがちですからね……』
 なるほど、俺も気持ちはわかる。
 あの平和な暮らしからいきなり転生して、魔物や賊と命を懸けて戦うのは相当な覚悟がいるだろう。
 俺は元々の性格上、最善の効率を考えて戦うことを選んだわけだが。
 まあ、俺が相手にしてきたのが魔物ばかりだというところも大きい。
 流石に、人を殺せとか言われたら躊躇するだろうしな。
 そいつが、たとえ悪人だろうと。
『まあ、とにかく、レオさんの今回の功績は称えられるべきものです。自信を持ってください』
「ああ、分かった。ありがとうな……メルヴィーナ」
『それと、もう一つ、確認したいことがあるのです。そちらでの生活……ちゃんと、充実していますか?』
 転生させたという責任を感じているのか、真剣なトーンで訊いてくる。
「ああ、この通り。美女に囲まれて、幸せにやっているよ」
 少しおどけたトーンで返してやるとメルヴィーナは『そうですか♪』とクスリと笑いながら答えてくれた。
『おやや……隣の美女がもう起きそうですね。もう! 明け方までイチャコラしてレオさんが起きるのが遅くなったからですよ! 大した話ができませんでした……ちょっと早いですが、私は退散するとしますね! ハブ・ア・ナイスライフ!!』
 メルヴィーナの声が消えていく。
 何か言うことがあったような気もするが……まあ、いいか。
 交信が終わったほぼ同時くらいに、ルーティアがムクリと起き上がる。
「ふぁあ……ん。フフフッ。おはようございます……レオ様……ちゅっ」
 ルーティアは俺をバッグハグしながら、頬に唇を落としてくる。
 巨大な神乳が俺の背中で押し潰れている。気持ちいい。
 なんとも甘い朝だ……。
 まったりと浸っていたいが、このままというわけにもいくまい。
「そろそろ起きないとな。女王がいなければ大騒ぎになるだろう」
「皆、昨日の宴で眠りこけていると思いますよ……それに、女中に『明日は起床が遅くなるからモーニングコールはしなくていいです』と伝えてありますし……」
 ルーティアが頬を赤らめて、顔を逸らす。
 なるほど、どうやっても俺とこうなる気だったというわけか。
「可愛い彼女だな……」
 抱き寄せてやると、意味を理解しているのか、していないのか。
 ルーティアはすっぽり腕に収まり、甘いため息をつく。
「そうですわ……私は、レオ様の彼女であり、母親ですもの……♡」
 満足げに答えるルーティア。
 そのまま、その柔らかい身体を抱きしめ、堪能したのだった。

 しばらくいちゃついた後で、ルーティアと廊下に出るとエルフの女中が部屋の前に立っていた。
 ルーティアは女中に「……羽目を外しすぎですよ」と小言を言われて苦笑いしていた。
 どうやら、昨日の二人きりのカーニバルは知られてしまっているようだ。
 騒ぎになっていないところを見るに、この女中が根回ししてくれていたのだろうか。
 俺は心の中で女中にお礼を言ったのだった。
 リズとシレイドと泊まっていた客間に戻ると、二人はベッドの上で眠りこけていた。
 宴に駆り出されていたということだったので、帰りは遅かったのだろう。
「んあ……ふぁああ……ん? ……レオ!? 目が覚めたの!?」
「ふぁ……ご主人様、おはよう」
 俺の目覚めに、はしゃぐリズと、いつも通りのシレイド。
 メイドさんに軽いブランチを用意してもらい、三人で食べるのだった。
「よかったよぉ……無事に目が覚めて。MPが尽きただけだってお医者さんは言ってたけど、不安で仕方なかったんだよ?」
「ああ、心配かけたな。もう大丈夫だ」
 リズが泣きそうに言ってくるので笑顔で答えてやる。
「シレイドは? ケガはもう平気なのか?」
 キングボアとレッドオークの一撃をくらっていたはずだ。
 俺はシレイドに尋ねる。
「ん……平気、シレイド、丈夫だから……あむあむ」
 野菜を頬張りながらケロッと言われた。
 全然平気そうだな。
 コンコン……!
 部屋がノックされる。
 メイドさんが部屋に入ってくる。
「失礼します。レオ様、リズ様、シレイド様、女王様が謁見をお望みです。午後に女王の間に来てください」
「そうか、分かった」
 俺が目覚めたから全員を集めて、形式的な何かをするのだろう。
「レオ? 何、笑いそうになってるの?」
「ん? い、いや、何でもない。食べたら女王の間に向かおうか」
 ルーティアの美しい艶姿を思い出し、緩みそうになる頬を引き締めるも、リズに不審がられてしまった。
 いかんいかん、謁見の最中に昨夜のことを思い出さないようにしなければ。
 二人きりの時以外は、相手は女王で、俺はただの冒険者だ。
 俺は気を引き締めて、謁見に臨んだ。
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