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第3章:エルフの国と優しい女王編
第2話:適性武器
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「じゃあ、次はあたしね! お願いします!」
リズが緊張した面持ちで、ラズベリーにジョブチェンジを頼む。
ラズベリーは同じ要領で、下級職のジョブ候補を表示させる。
『スナイパー』『暗殺者』『研究者』『採集名人』など様々なジョブがある。
どうやら聞いていた通り、冒険者と採集者では派生する上位ジョブがまるっきり違うようだ。
冒険者の派生は近接戦闘ジョブが多かったが、採集者の派生は遠距離戦闘ジョブと素材採集系のジョブみたいだ。
「あたしは……これにしようかなぁ」
リズが選んだのは下級ジョブ『探検家』だった。
「そのジョブは、ダンジョンなどを探索する時に便利なスキルを覚えるジョブですね。採集だけじゃなく場合によっては戦いに転じることも可能です」
「うん、これにするわ。あはは……やっぱり、レオやシレイドと戦いたいからさ……」
頭を掻きながら、苦笑いするリズ。
やっぱり、現状の自分の立場に気まずさを感じているようだ。
そんなリズを見て、俺は密かに決心する。
「分かりました」
ラズベリーがリズのジョブをチェンジさせた。
名前:リズ・オレイア
年齢:19歳
ジョブ:探検家Lv1
能力:剣適性D、短剣適性E、突剣適性E、双剣適性E、大剣適性E、槍適性E、斧適性E、大斧適性E、弓適性D、魔法適性E
スキル:『鑑定』『探査』『マッピング』『エネミーカウント』
「スキルが三つも増えた! これであたし、もっと役に立てる……!」
隠れて何度もガッツポーズをするリズ。
そんな彼女にもっと自信を与えたいと思った。
ラズベリーにお礼を言い、ギルドを後にした俺はある場所に向かう。
「どこ行くの? レオ?」
「ん? ちょっとな、まあついてきてくれ」
リズの問いかけをはぐらかし、ついた先は……。
「鍛冶屋……?」
リズが首をひねる。
「ご主人様……何か武器を作るの?」
「鋭いな、シレイド」
シレイドの問いに、やんわり答える。
「らっしゃい! おや、この間、コボルトの素材を売りに来たあんちゃんじゃないか。今日はどうしたんだい?」
「ああ、武器を作ってもらいたくてな。適性が無い者でも扱える武器は何かないだろうか。多少高くついてもいい」
「れ、レオ!?」
俺の言葉に驚くリズ。
俺が考えたのはオーダーメイドの武器だ。
その人に合った世界で一つの武器を作るなら、一般的な武器適性などある程度無視して高い適性を得られると考えたからだ。
「……オーダーメイドの武器かい……? あんた、金と素材はあるんだろうな……」
奥からのっそり、顔中毛むくじゃらのおじさんが出てくる。
ドワーフ族だろうか、背がすごく低い。
「ああ、この子に……オーダーメイドの武器を作ってもらいたい」
俺は、リズの肩を持って、前につきだした。
眉毛で目が隠れている鍛冶屋が、ジロジロとリズを見る。
「あんた……適性が絶望的にねえな……」
「う……は、はい。情けないことに……どの武器もしっくりこなくて……」
「たーっはっは! 大抵はそこまで武器を試してダメだったら、諦めるもんなんだがな」
多分『鑑定』でリズの適性を見たのだろう。
鍛冶屋のおじさんの大笑いに、しゅんと肩を落とすリズ。
「それでも諦めずに冒険者をしてるなんて、大した玉じゃねえか。気に入ったぜ……何が問題なのかズバリと言い当ててやろう」
「ええっ!?」
おじさんの言葉にリズの目が輝く。
「それはな……『力』がねぇのよ。あんたには」
「『力』?」
「ああ、敵をぶった切り、仕留めるだけの威力を生み出す『力』だ。ほとんどの奴は『適性』とは動きや立ち回りなどの感覚的能力のことだと思いがちだが、それだけじゃねえ。敵の首ねっこをぶった切るだけの『力』が大前提に必要なのよ」
「なるほど……」
リズはおじさんの話を真剣に聴いている。
「それでだ……見たところ剣と弓が適性Dと一番高い。特に弓が高いのは僥倖だ。対処のしようがある」
「と言いますと?」
「クロスボウだよ」
俺たちに向かっておじさんがキラリと歯を光らせて笑った。
「クロス……ボウ……」
「引き金を引けば自動的に矢が発射されるクロスボウなら、姉ちゃんでも扱える。幸い同じ系統の弓適性はD。弦を引く『力』が要らないクロスボウなら、さらに良い適性を叩きだせると思うぜ。まあ、どれだけ適性が高くなるかは女神のみぞ知る……だがな」
「ホントに……? ホントに、あたし、戦えるの……? レオやシレイドみたいに……」
リズはまだ信じられないといった表情で、放心している。
「おじさん、代金と必要素材は?」
「言っておくが、クロスボウは特殊な武器だ。この町のなまくら武器屋では絶対に置いてねえ。特に今回は嬢ちゃんに合わせて武器を作る。安くねえぞ。15万Gだ」
「ああ。今後への投資としたら安い物だ」
俺が即決すると、隣でシレイドが「シレイドより高い……」と渋い顔をして呟いた。
「太っ腹だな、気に入ったぜ。素材は……そうさなぁ、この辺りで採れる素材だと岩芋虫の素材が最適だな『ロックバグクロスボウ』ってのが作れる」
おじさんの言葉に、俺たちは顔を見合わせて微笑む。
「ちょうど手持ちが大量にある。いくらいる?」
「『岩芋虫の甲殻』が二十個ほど……『岩芋虫の糸』が五本ほどだな。後は『鉄鉱石』が三つほど欲しいところだが」
「あ! 鉄鉱石ならあたし持ってるよ!」
フィールドで採取した鉄鉱石を差し出すリズ。
俺も言われたロッククロウラーの素材を取り出す。
『岩芋虫の糸』はレア素材だったが『ロッククロウラーの雨』で手に入れた分でギリギリ足りた。
「ほう……。必要材料をこうも簡単にポンポン出すのはこの片田舎の冒険者では珍しいな、将来有望って事か、たーはっはっは!」
おじさんは上機嫌に笑っている。
その後、鍛冶屋のおばさんが、リズの腕の長さや握力、手の大きさなんかを測っていく。
全ての測定が終わると、鍛冶屋のおじさんがパンと手を打つ。
「よし! 必要な物は揃ったな。十日で完成させてやる。代金はその時に貰うぜ。用意しときな」
「あの……よろしくお願いします!」
リズが深々とお辞儀をする。
俺とシレイドも、続けて頭を下げる。
「頭を上げな、嬢ちゃん。鍛冶屋ダグラスの名に懸けて、あんたをしっかり戦えるようにしてやるよ」
ぶっきらぼうにそう言ったダグラスさんは、素材を担いで奥の工場に入っていった。
「それじゃあ、十日後にね! 忘れずに取りに来るんだよ!」
おばさんがニッコリと見送ってくれた。
リズが緊張した面持ちで、ラズベリーにジョブチェンジを頼む。
ラズベリーは同じ要領で、下級職のジョブ候補を表示させる。
『スナイパー』『暗殺者』『研究者』『採集名人』など様々なジョブがある。
どうやら聞いていた通り、冒険者と採集者では派生する上位ジョブがまるっきり違うようだ。
冒険者の派生は近接戦闘ジョブが多かったが、採集者の派生は遠距離戦闘ジョブと素材採集系のジョブみたいだ。
「あたしは……これにしようかなぁ」
リズが選んだのは下級ジョブ『探検家』だった。
「そのジョブは、ダンジョンなどを探索する時に便利なスキルを覚えるジョブですね。採集だけじゃなく場合によっては戦いに転じることも可能です」
「うん、これにするわ。あはは……やっぱり、レオやシレイドと戦いたいからさ……」
頭を掻きながら、苦笑いするリズ。
やっぱり、現状の自分の立場に気まずさを感じているようだ。
そんなリズを見て、俺は密かに決心する。
「分かりました」
ラズベリーがリズのジョブをチェンジさせた。
名前:リズ・オレイア
年齢:19歳
ジョブ:探検家Lv1
能力:剣適性D、短剣適性E、突剣適性E、双剣適性E、大剣適性E、槍適性E、斧適性E、大斧適性E、弓適性D、魔法適性E
スキル:『鑑定』『探査』『マッピング』『エネミーカウント』
「スキルが三つも増えた! これであたし、もっと役に立てる……!」
隠れて何度もガッツポーズをするリズ。
そんな彼女にもっと自信を与えたいと思った。
ラズベリーにお礼を言い、ギルドを後にした俺はある場所に向かう。
「どこ行くの? レオ?」
「ん? ちょっとな、まあついてきてくれ」
リズの問いかけをはぐらかし、ついた先は……。
「鍛冶屋……?」
リズが首をひねる。
「ご主人様……何か武器を作るの?」
「鋭いな、シレイド」
シレイドの問いに、やんわり答える。
「らっしゃい! おや、この間、コボルトの素材を売りに来たあんちゃんじゃないか。今日はどうしたんだい?」
「ああ、武器を作ってもらいたくてな。適性が無い者でも扱える武器は何かないだろうか。多少高くついてもいい」
「れ、レオ!?」
俺の言葉に驚くリズ。
俺が考えたのはオーダーメイドの武器だ。
その人に合った世界で一つの武器を作るなら、一般的な武器適性などある程度無視して高い適性を得られると考えたからだ。
「……オーダーメイドの武器かい……? あんた、金と素材はあるんだろうな……」
奥からのっそり、顔中毛むくじゃらのおじさんが出てくる。
ドワーフ族だろうか、背がすごく低い。
「ああ、この子に……オーダーメイドの武器を作ってもらいたい」
俺は、リズの肩を持って、前につきだした。
眉毛で目が隠れている鍛冶屋が、ジロジロとリズを見る。
「あんた……適性が絶望的にねえな……」
「う……は、はい。情けないことに……どの武器もしっくりこなくて……」
「たーっはっは! 大抵はそこまで武器を試してダメだったら、諦めるもんなんだがな」
多分『鑑定』でリズの適性を見たのだろう。
鍛冶屋のおじさんの大笑いに、しゅんと肩を落とすリズ。
「それでも諦めずに冒険者をしてるなんて、大した玉じゃねえか。気に入ったぜ……何が問題なのかズバリと言い当ててやろう」
「ええっ!?」
おじさんの言葉にリズの目が輝く。
「それはな……『力』がねぇのよ。あんたには」
「『力』?」
「ああ、敵をぶった切り、仕留めるだけの威力を生み出す『力』だ。ほとんどの奴は『適性』とは動きや立ち回りなどの感覚的能力のことだと思いがちだが、それだけじゃねえ。敵の首ねっこをぶった切るだけの『力』が大前提に必要なのよ」
「なるほど……」
リズはおじさんの話を真剣に聴いている。
「それでだ……見たところ剣と弓が適性Dと一番高い。特に弓が高いのは僥倖だ。対処のしようがある」
「と言いますと?」
「クロスボウだよ」
俺たちに向かっておじさんがキラリと歯を光らせて笑った。
「クロス……ボウ……」
「引き金を引けば自動的に矢が発射されるクロスボウなら、姉ちゃんでも扱える。幸い同じ系統の弓適性はD。弦を引く『力』が要らないクロスボウなら、さらに良い適性を叩きだせると思うぜ。まあ、どれだけ適性が高くなるかは女神のみぞ知る……だがな」
「ホントに……? ホントに、あたし、戦えるの……? レオやシレイドみたいに……」
リズはまだ信じられないといった表情で、放心している。
「おじさん、代金と必要素材は?」
「言っておくが、クロスボウは特殊な武器だ。この町のなまくら武器屋では絶対に置いてねえ。特に今回は嬢ちゃんに合わせて武器を作る。安くねえぞ。15万Gだ」
「ああ。今後への投資としたら安い物だ」
俺が即決すると、隣でシレイドが「シレイドより高い……」と渋い顔をして呟いた。
「太っ腹だな、気に入ったぜ。素材は……そうさなぁ、この辺りで採れる素材だと岩芋虫の素材が最適だな『ロックバグクロスボウ』ってのが作れる」
おじさんの言葉に、俺たちは顔を見合わせて微笑む。
「ちょうど手持ちが大量にある。いくらいる?」
「『岩芋虫の甲殻』が二十個ほど……『岩芋虫の糸』が五本ほどだな。後は『鉄鉱石』が三つほど欲しいところだが」
「あ! 鉄鉱石ならあたし持ってるよ!」
フィールドで採取した鉄鉱石を差し出すリズ。
俺も言われたロッククロウラーの素材を取り出す。
『岩芋虫の糸』はレア素材だったが『ロッククロウラーの雨』で手に入れた分でギリギリ足りた。
「ほう……。必要材料をこうも簡単にポンポン出すのはこの片田舎の冒険者では珍しいな、将来有望って事か、たーはっはっは!」
おじさんは上機嫌に笑っている。
その後、鍛冶屋のおばさんが、リズの腕の長さや握力、手の大きさなんかを測っていく。
全ての測定が終わると、鍛冶屋のおじさんがパンと手を打つ。
「よし! 必要な物は揃ったな。十日で完成させてやる。代金はその時に貰うぜ。用意しときな」
「あの……よろしくお願いします!」
リズが深々とお辞儀をする。
俺とシレイドも、続けて頭を下げる。
「頭を上げな、嬢ちゃん。鍛冶屋ダグラスの名に懸けて、あんたをしっかり戦えるようにしてやるよ」
ぶっきらぼうにそう言ったダグラスさんは、素材を担いで奥の工場に入っていった。
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