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第2章:ルクシアの森と奴隷暗殺者編

第18話:シレイドの身請け【☆】

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 シャロンの錬成屋と鍛冶屋を回り、所持金の合計は27万Gほどになった。
 本気で働けば、初心者の町と言われるルクシアでもこれだけ稼げるということが分かった。
 この中で、シレイドを身請けして生活用品や武具を揃えてやらなければいけないが、これだけあれば余裕だろう。

 翌日――。
 俺とリズは、奴隷商館へ向かった。
 ドアマンに中に通され、再び豪奢な部屋に通される。
 出された紅茶を飲みながら待っていると、館主のローガンが部屋に入ってきた。
「お待たせしました。本日のご用件は取り置きをしていた奴隷の身請けでございましょうか?」
「話が早いな。そうだ、お金の目途が立ったんでな。シレイドを身請けしに来た」
 俺たちが次に来る時の用件は、大方決まっていたからローガンもそれを見越していたのだろう。
「さすがは、ギルドでも有名なホープのレオ様、まさか二週間でお金をご用意くださるとは思いませんでしたよ」
 それはまあ、前回、少し低く見られていたようだったからな。
 できるというところを見せて『見返しておかないと』というところはあった。
「シレイドをこちらに」
 傍に立っていた、世話役らしきおばさんに声をかけるローガン。
 商売人らしい迅速な対応で、すぐにシレイドを部屋に招き入れる。
 シレイドは前と変わらない少し汚れた姿で部屋に入ってくる。
「では、まずは代金10万Gのお支払いをお願いします」
「ああ、分かった」
 俺は10万Gをローガンに渡す。
 シレイドはその光景を、大きく見開いたキラキラの赤い目で見ていた。
「確かに、それでは奴隷商人の最後の仕事『隷属魔法』での商品のお渡しを行います。レオ様、シレイド、手を前へ」
 俺とシレイドが手を出すと、ローガンは静かに呪文を唱える。
「奴隷連結《スレイブ・コネクト》」
 その瞬間、俺の手とシレイドの手が青白い光を放つ。
 その光はだんだん小さくなり消えていった。
「これで契約は成立です。問題はありませんでしたが、一応、ご確認いただきます。『鑑定』」
 青白い枠に表示されたシレイドのプロフィールに確かにこう書いてある。

奴隷契約:レオ(主人)

 なるほど、確かに契約は成立したらしい。
 試しに、俺のプロフィールも頭の中で鑑定してみたが奴隷契約の欄に『シレイド(奴隷)』と書かれていた。
「シレイド、ほら、挨拶しなさい」
「ん……ご主人様、仲間のお姉さん……シレイドを買ってくれて……ありがとう……役に立てるように頑張る」
 体の前で両手をぐっと握り、やる気を見せるシレイド。
「よろしく、俺はレオ。今日からシレイドの主人だ。要望があったら何でも言うんだぞ」
「あたしはリズ。レオの彼女よ! これからよろしくね、シレイドちゃん♪」
「ん……」
 俺たちの言葉に大きく首肯するシレイド。
「それでは『また』のご来店、お待ちしております」
 俺たちがまた来ることを予見しているのだろう。
 ローガンがにこやかな笑みで見送ってきくれた。

 さて、シレイドを買ったはいいが、普段着やら生活用品、なにより冒険用の武具を揃えなくてはいけない。
 まずは浅黄色のいかにも奴隷っぽい服装を何とかするため、服屋に向かった。
「よし! 女の子はおしゃれが大事! 普段着る服も気合入れなくちゃね! 行くわよ、シレイドちゃん!」
「ん……! シレイド、おしゃれする……!」
 リズとシレイドは店に入るなり、片っ端から服を広げて、あれこれ話し合いながら吟味している。
 男の俺は女の子のショッピングにおいては完全に蚊帳の外だ。
 まあ、いいか。お金だけ出せば。
 二人に任せて一時間ほど過ぎただろうか、十着ほどの普段着を買い込んだ。
 シレイドは暗い色が好きらしく、黒や紺などの服が多かった。
 そのうちの一着、紺色のワンピースをその場で着て店を後にする。

 次は防具屋だ。
 ここは、冒険に使う服なので俺も意見を言わせてもらう。
 はずだったが、シレイドが即座に一枚の黒い服を持って歩いてきた。
「ん……」
「これがいいのか?」
「ん……」
 首を大きく縦に振るシレイド。
 闇ギルドだったとはいえ腐っても冒険者。
 どうやら武具にはこだわりがありそうだ。
 一応、服を鑑定してみる。

名前:黒の衣
説明:極めて身軽に動ける軽い服。敵に気づかれにくい特性がある。

 値段は850G。
 俺の防具より少し安いくらいか。
「これでいいのか? お金はあるから、もっと良いの買ってもいいぞ?」
「奴隷は主人より良いもの持っちゃいけない……ローガンが言ってた」
 なるほど、暗黙のルール的なものか。
 見かけによらず、シレイドがそういうことに気を回すのだと分かった。
 奴隷というからには、人の目もあるし、こういったことはちゃんとルール通りにした方が良いだろう。
「分かった。じゃあ、これを買おう」
 シレイドのご要望通り、黒の衣を買ってやった。

 続いての武器屋でも、シレイドは自分で武器を手に取り、動きを確かめる。
 ナイフやダガーを手に取り、ひゅんひゅんと振り回す。
 明らかに、俺の戦いの時の動きより素早く手馴れている。
 伊達に死線は掻い潜ってきてないということか。
 主人の俺より強いのは少々困るが、まあいい、戦闘で役立ってくれることに期待しよう。
「ん……」
 シレイドが鉄のダガーを持ってきた。
 値段は500G。
 うむ、これも俺の持つ鋼の剣より安い。
 ちゃんと考えてくれている。
 可愛い奴だ。
「よし、じゃあ、これを買おう」
 頭を撫でてやると、なんとも嬉しそうに頬を緩ませる。
「むふー……♪」
 満足げだ。小動物みたいで、実に可愛い。
 そのくせ、胸はリズよりも少し大きい。
 身長が小さい分、かなりの巨乳に見える。

「あ、終わった?」
 店を出ると外に並べてある武器を見ていたリズが駆け寄ってくる。
「ああ。いい武具があったらしい」
 シレイドがコクコクと頷いている。
「そっかー、あたしも戦えたらなぁ……適性が無いから足手まといにしかならないのが苦しいところなんだけど……」
 最初に適性が無い話をした後、短剣や弓、突剣など色々な種類の武器を買い込んで適性を測ってみているが、どれもしっくりこないみたいだった。
「リズにも扱える武器が、きっとどこかにあるさ」
「シレイド、リズの分まで戦う……大丈夫……!」
「ありがとー! 二人ともー!」
 俺たちの励ましに目を輝かせて、抱きついてくるリズ。
 いいパーティになれそうで良かった。

シレイド
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