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第2章:ルクシアの森と奴隷暗殺者編
第1話:ショッピング
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サマンサの家からルクシアの町の宿に帰り、数日間のんびりリズと過ごした。
転生してからここまで休みという休みを取ってなかった上、先の依頼で死にかけたこともあり、ゆっくり休もうとリズと決めたのである。
サマンサの依頼の報酬金は少なかったものの、幸い5000Gほど持ち金があったので、宿に泊まり、街中で買い食いをするくらいは軽くできた。
その間、リズとの生活は実に甘いものだった。
もともと『世話焼き』で『尽くすタイプ』の彼女は甲斐甲斐しく身の回りの世話をしてくれたり、話し相手になってくれたり。
もちろん、アバンチュールの方も付き合ってくれる。
『浮気』という概念は薄いものの『嫉妬』という概念はきちんとあるようだ。
リズは、なまじ負けず嫌いなため、自分が一番になろうと必死なのもあった。
それだけ好かれているのかと、俺自身、心が熱くなった。
ある朝、二人でしこたまベッドでゴロゴロした後、朝の支度をする。
そろそろ休暇も終わろうかと昨晩話し合ったのだ。
今日からまた、冒険者稼業に勤しむことにしよう。
「新しい防具を買わなきゃいけないわね」
リズは、ボロボロに裂かれた俺の皮の服を見て言った。
「武器もだな」
鉄の剣を抜いてみると、刃が見事に欠けている。
シルバーウルフと鍔競り合った時に欠けたのだろう。
ちゃんと手入れはしていた。
リズに習いながら、油で拭き上げ、砥石を買って磨いていた。
より良い武具を持たないと、強い魔物には勝てない。
危険度Dのシルバーウルフには鉄の剣では不足だったというわけだ。
「よし。リズ、武器屋と防具屋に行こう。剣と胴装備を買う。ついでに服屋にも」
普段着は、転生してきた時に着ていた服一着しかない。
宿の寝間着があるとはいえ、休みが続くと着る服が無くなる。
「うん! じゃあ、行きましょう?」
俺とリズは町に繰り出した。
歩いていると、あたたかい風が吹いてくる。
「そういえば、この世界の日付や季節ってどうなってるんだ? 俺の世界では春・夏・秋・冬に分かれていて、一年は十二ヵ月だったんだが」
「えっと、基本的にアルティナでも同じね。春・夏・秋・冬に分かれているわ。一年は十二ヵ月。一ヵ月は三十日で、それぞれ、四月は『ブロッサムの月』、七月は『オーシャンの月』みたいに各月に名称があるの。今は四月、ブロッサムの月の二十六日よ」
なるほど、一年は三百六十日ってことか、閏年みたいなものはないみたいだ。
月の数え方や、春夏秋冬に分かれているのも同じみたいだな。
考えてみれば、転生してから生活費を稼ぐことで手一杯で、この世界の常識的なところはすっ飛ばしてきた部分が多い。
まあ、これから少しずつ知っていけばいいか。
転生した当初に、鉄の剣をリズに買ってもらった武器屋に着いた。
「いらっしゃいませ! レオ様、リズ様」
髭面の店長が、手を揉みながら近づいてくる。
さすがは商売人と言うべきだろうか、一度しか来ていない俺の顔と名前まで覚えているとは。
「聞きましたよ! シルバーウルフを討伐されたとか! いやはや、まだ冒険者になって間もないでしょうに素晴らしいご活躍ですね!」
そこまで知っているのか。
まあ、ギルドでも大変な噂になっているようだったから、ある程度広まるのは覚悟していた。
ましてや、冒険者が多く来店する武器屋だ。知っているのが普通だろう。
「まあな。だが、その戦いで剣をやられてしまってな……」
前はリズに全てを任せてしまっていたが、今回は俺が対応する。
これまでの戦いを通して、剣の良し悪しはそれなりに理解できるようになってきた。
欠けた鉄の剣を差し出すと、店主はじっとそれを見る。
「なるほど……相当の激闘だったのでしょうね。これは鍛冶屋で直すより、新しい武器を買った方が良いと思いますね」
営業トーク丸出しだが、もとよりこちらもそのつもりだ。
「この『鉄の剣』より良い剣はあるか?」
「それなら、ワンランク上の『鋼の剣』はどうでしょうか?」
店長が棚から取り出した『鋼の剣』を手に取る。
鋼というから、大層重い剣なのかと思っていたが、思いのほか軽い。
武器として扱うのだから、重すぎるのも駄目なのだろう。
鞘から抜き、振ってみる。
悪くない。
「こちらの商品なら、たとえシルバーウルフとの戦いでも欠けることはもう無いかと」
営業トークを続ける店主。
「この鋼の剣、値段はいくらだ?」
「750Gとなります」
「よし。貰おう」
俺は鋼の剣を買って、店を出た。
「よかったわね! 良い剣が見つかって!」
リズが笑顔で話しかけてくる。
「ああ、そうだな。次は防具屋だ」
防具屋に着くと、中年の女店主が声をかけてくる。
「おや、リズちゃんじゃないか。それにレオさんも。今日はどうしたんだい?」
「レオの皮の服が破れちゃって。良い防具無いかなって探しに来たの」
「そうかい。そっちの棚が初級冒険者用の防具だね。軽いのは服や衣、重いのは鎧で分別してあるから自由に見なよ」
武器屋より商売っ気の薄い話し方で、実に話しやすい。
いや、商人としてはそれでは生きていけないのか?
俺は、棚にある防具を見てみる。
攻撃を真正面から受けるのではなく、躱す方が多いから、軽いものが良い。
俺は、棚の中で一番高価な『騎士のマント』を手に取る。
「わぁ……! それ、カッコイイわね! レオにぴったりだよ!」
隣でリズが飛び跳ねている。
紺色を基調とした燕尾服のようなデザインの胴装備。
マントという名前だが、上着だけでなく、ちゃんとズボンまでセットになっている。
試着してみた感じ、皮の服よりも厚めの服だが、柔らかく動きやすい。
通気性も良く、野暮ったい感じもない。スタイリッシュだ。
「お目が高いね。そいつは金銭に余裕のできた初級冒険者が真っ先に買う防具だよ。防御力もあって見てくれも良いから、人気なんだ」
女店主が説明してくれる。
「それにしなよ! レオによく似合っているわよ!」
武器屋の時は意見を言わなかったリズがグイグイ推してくる。
防具などの着るものに、こだわりがあるのはいかにも女の子らしい。
「分かった。これを貰おう」
「毎度あり。1000Gだよ」
鋼の剣よりも高くついたが、リズも満足げだし、良い買い物ができただろう。
その後、服屋に行き普段着を数着買った。
ここでは、さらにリズが元気になり、完全にリズ好みの服を買わされた。
まあ、俺自身服にこだわりはあまりないからそれで良かったのだが。
ここでも250Gの消費。
この日の買い物で、合計2000Gの出費だ。
5000G近くあった所持金が、休みの間の宿代や贅沢も重なり約1000Gまで減る。
仕方ない。必要経費だ。生きている限り、金は消費するものだ。
買い物を終えて、とりあえず宿に帰った。
転生してからここまで休みという休みを取ってなかった上、先の依頼で死にかけたこともあり、ゆっくり休もうとリズと決めたのである。
サマンサの依頼の報酬金は少なかったものの、幸い5000Gほど持ち金があったので、宿に泊まり、街中で買い食いをするくらいは軽くできた。
その間、リズとの生活は実に甘いものだった。
もともと『世話焼き』で『尽くすタイプ』の彼女は甲斐甲斐しく身の回りの世話をしてくれたり、話し相手になってくれたり。
もちろん、アバンチュールの方も付き合ってくれる。
『浮気』という概念は薄いものの『嫉妬』という概念はきちんとあるようだ。
リズは、なまじ負けず嫌いなため、自分が一番になろうと必死なのもあった。
それだけ好かれているのかと、俺自身、心が熱くなった。
ある朝、二人でしこたまベッドでゴロゴロした後、朝の支度をする。
そろそろ休暇も終わろうかと昨晩話し合ったのだ。
今日からまた、冒険者稼業に勤しむことにしよう。
「新しい防具を買わなきゃいけないわね」
リズは、ボロボロに裂かれた俺の皮の服を見て言った。
「武器もだな」
鉄の剣を抜いてみると、刃が見事に欠けている。
シルバーウルフと鍔競り合った時に欠けたのだろう。
ちゃんと手入れはしていた。
リズに習いながら、油で拭き上げ、砥石を買って磨いていた。
より良い武具を持たないと、強い魔物には勝てない。
危険度Dのシルバーウルフには鉄の剣では不足だったというわけだ。
「よし。リズ、武器屋と防具屋に行こう。剣と胴装備を買う。ついでに服屋にも」
普段着は、転生してきた時に着ていた服一着しかない。
宿の寝間着があるとはいえ、休みが続くと着る服が無くなる。
「うん! じゃあ、行きましょう?」
俺とリズは町に繰り出した。
歩いていると、あたたかい風が吹いてくる。
「そういえば、この世界の日付や季節ってどうなってるんだ? 俺の世界では春・夏・秋・冬に分かれていて、一年は十二ヵ月だったんだが」
「えっと、基本的にアルティナでも同じね。春・夏・秋・冬に分かれているわ。一年は十二ヵ月。一ヵ月は三十日で、それぞれ、四月は『ブロッサムの月』、七月は『オーシャンの月』みたいに各月に名称があるの。今は四月、ブロッサムの月の二十六日よ」
なるほど、一年は三百六十日ってことか、閏年みたいなものはないみたいだ。
月の数え方や、春夏秋冬に分かれているのも同じみたいだな。
考えてみれば、転生してから生活費を稼ぐことで手一杯で、この世界の常識的なところはすっ飛ばしてきた部分が多い。
まあ、これから少しずつ知っていけばいいか。
転生した当初に、鉄の剣をリズに買ってもらった武器屋に着いた。
「いらっしゃいませ! レオ様、リズ様」
髭面の店長が、手を揉みながら近づいてくる。
さすがは商売人と言うべきだろうか、一度しか来ていない俺の顔と名前まで覚えているとは。
「聞きましたよ! シルバーウルフを討伐されたとか! いやはや、まだ冒険者になって間もないでしょうに素晴らしいご活躍ですね!」
そこまで知っているのか。
まあ、ギルドでも大変な噂になっているようだったから、ある程度広まるのは覚悟していた。
ましてや、冒険者が多く来店する武器屋だ。知っているのが普通だろう。
「まあな。だが、その戦いで剣をやられてしまってな……」
前はリズに全てを任せてしまっていたが、今回は俺が対応する。
これまでの戦いを通して、剣の良し悪しはそれなりに理解できるようになってきた。
欠けた鉄の剣を差し出すと、店主はじっとそれを見る。
「なるほど……相当の激闘だったのでしょうね。これは鍛冶屋で直すより、新しい武器を買った方が良いと思いますね」
営業トーク丸出しだが、もとよりこちらもそのつもりだ。
「この『鉄の剣』より良い剣はあるか?」
「それなら、ワンランク上の『鋼の剣』はどうでしょうか?」
店長が棚から取り出した『鋼の剣』を手に取る。
鋼というから、大層重い剣なのかと思っていたが、思いのほか軽い。
武器として扱うのだから、重すぎるのも駄目なのだろう。
鞘から抜き、振ってみる。
悪くない。
「こちらの商品なら、たとえシルバーウルフとの戦いでも欠けることはもう無いかと」
営業トークを続ける店主。
「この鋼の剣、値段はいくらだ?」
「750Gとなります」
「よし。貰おう」
俺は鋼の剣を買って、店を出た。
「よかったわね! 良い剣が見つかって!」
リズが笑顔で話しかけてくる。
「ああ、そうだな。次は防具屋だ」
防具屋に着くと、中年の女店主が声をかけてくる。
「おや、リズちゃんじゃないか。それにレオさんも。今日はどうしたんだい?」
「レオの皮の服が破れちゃって。良い防具無いかなって探しに来たの」
「そうかい。そっちの棚が初級冒険者用の防具だね。軽いのは服や衣、重いのは鎧で分別してあるから自由に見なよ」
武器屋より商売っ気の薄い話し方で、実に話しやすい。
いや、商人としてはそれでは生きていけないのか?
俺は、棚にある防具を見てみる。
攻撃を真正面から受けるのではなく、躱す方が多いから、軽いものが良い。
俺は、棚の中で一番高価な『騎士のマント』を手に取る。
「わぁ……! それ、カッコイイわね! レオにぴったりだよ!」
隣でリズが飛び跳ねている。
紺色を基調とした燕尾服のようなデザインの胴装備。
マントという名前だが、上着だけでなく、ちゃんとズボンまでセットになっている。
試着してみた感じ、皮の服よりも厚めの服だが、柔らかく動きやすい。
通気性も良く、野暮ったい感じもない。スタイリッシュだ。
「お目が高いね。そいつは金銭に余裕のできた初級冒険者が真っ先に買う防具だよ。防御力もあって見てくれも良いから、人気なんだ」
女店主が説明してくれる。
「それにしなよ! レオによく似合っているわよ!」
武器屋の時は意見を言わなかったリズがグイグイ推してくる。
防具などの着るものに、こだわりがあるのはいかにも女の子らしい。
「分かった。これを貰おう」
「毎度あり。1000Gだよ」
鋼の剣よりも高くついたが、リズも満足げだし、良い買い物ができただろう。
その後、服屋に行き普段着を数着買った。
ここでは、さらにリズが元気になり、完全にリズ好みの服を買わされた。
まあ、俺自身服にこだわりはあまりないからそれで良かったのだが。
ここでも250Gの消費。
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5000G近くあった所持金が、休みの間の宿代や贅沢も重なり約1000Gまで減る。
仕方ない。必要経費だ。生きている限り、金は消費するものだ。
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