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第1章:病弱青年とある女冒険者編
第20話:決着
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「ガアアッ!?」
思わぬ方向から、火球の直撃を受けたシルバーウルフは、怯んだように少しのけぞる。
「逃してたまるか……!!」
一瞬のチャンス……!!
俺は魔力を込めた手で、シルバーウルフの喉元を鷲掴みにする。
「焼き切れ……!! 『ファイア』!!」
ゴオオオオオオオ!!
最大出力、ありったけの魔力を凝縮した火球をゼロ距離で放つ。
「ガアアアアアアアアアアアア……!!」
急所への一撃に、シルバーウルフは倒れ、苦しそうにのた打ち回る。
「悪いな……俺『たち』の勝ちだ……!!」
俺は焼けただれているシルバーウルフの喉を剣で斬り裂いた。
シルバーウルフが動かなくなる。
緊張が解けたからか、身体から力が抜け、俺はその場に座り込む。
「死ぬかと……本当に、死ぬかと思った……!!」
呆然としていると、後ろからリズが飛びついてくる。
「よかったぁああ!! よかったよぉお、レオおおお!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにさせている。
俺は、そんなリズを抱きしめる。
「ありがとう、リズ! リズのおかげだ! 本当に助かった……!!」
感謝の言葉を述べると、リズはグスグスと嗚咽を漏らしながら、俺の胸板に顔を擦り付けた。
しばらく息を整え、ようやく、俺の身体が言うことを聞き始めた。
俺にしがみついて泣いていたリズも落ち着いてきた。
「ふう……やっと力が入るようになってきた」
リズの支えも借りて、弱々しい勢いで立ち上がる。
情けないことに腰を抜かしていたらしい。
「そういえば、リズ……なんで『ファイア』を使えるんだ?」
疑問に思っていたことを尋ねる。
「レオが、あの魔導書読み終わった後、こっそり私も読んでみたの……そしたら、レオの時みたいに文字が光って……魔法適性Eだからスライムも倒せないだろうけど、使えるに越したことないかなって……レオの役に少しでも立ちたかったから……」
「偉いな……リズは……」
リズの頭をそっと撫でた。
適性が無いからといって投げ出さないリズの姿勢に今回は救われた。
コロン……。
そうこうしていると、シルバーウルフの口から水色の玉が出てきた。
「ん? なんだあれ?」
「ホントだ……何だろう……?」
リズが吐き出された玉を持ち上げた。
「うーん……なんだ、これ? 見たことも聞いたことも無いわね……こんなアイテム……『鑑定』……だめだ、魔法を使っても分からない……」
「どれ、俺にも見せてくれ」
「あ、うん」
リズから玉を受け取った瞬間――。
バキイイイイン!!
玉は粉々になって割れてしまった。
思わず二人で「ひゃいっ!?」と変な声を上げてしまった。
顔を見合わせて、苦笑する。
「ま、まあ、割れちゃったものはしょうがないわね……」
「だな……さて、討伐したはいいけど、これから何をすればいいんだ?」
「とりあえず、証拠である素材を剥ぎ取って、ギルドに提出して、依頼達成報告ね」
「分かった。じゃあ、早速剥ぎ取って、一旦、サマンサの家に行こう。そうそう、牛舎で倒した二匹のウルフも忘れずにな」
「うん!」
俺たちは、ウルフたちから素材を採って、サマンサの家に向かうのだった。
「た、ただいまーぁ……!」
「つ、疲れた……」
明け方、疲れ果てた俺とリズは倒れ込むようにして、サマンサの家に入る。
「おかえり……って、だ、大丈夫!? 二人ともボロボロだよ!?」
リズの方は、まだ外傷は無いが、俺の恰好は酷かった。
なにせ、シルバーウルフに皮の服をズタズタにされたのだから、上半身はほぼ裸だ。
その上、胸には爪で引っかかれた跡がたくさんある。
心配そうに見つめるサマンサの肩にポンと手を置く。
「安心しろ、もう大丈夫だ。悪さをするウルフは全部倒してきた」
その言葉に驚き、涙をポロポロ流しだすサマンサ。
「諦めないでよかったね! サマンサ!」
リズもサマンサの背中をさする。
「うん……! うん……! ありがとう……!! ホントにありがとう、二人とも……!!」
しばらく、泣き続けるサマンサを二人で慰めるのだった。
俺とリズは朝食をとった後、身体を拭き、夕方まで干し草ベッドで爆睡した。
起床後、依頼達成報告のためにサマンサと一緒にルクシアの町を訪れる。
俺の皮の服はボロボロになってしまったので、転生した時に着ていた普段着で町を歩く。
リズとサマンサが笑顔で話しながら、隣を歩いている。
一仕事終えた後のような、晴れやかな気分だ。
ギルドの受付に向かうと、受付嬢がいつものクールな表情で、俺たちを出迎えてくれた。
「お久しぶりです。レオさん、リズさん、そしてサマンサ様も……依頼に進展はありましたか?」
「はい、依頼達成報告にきました。ウルフの巣穴を発見、及び、ウルフ六匹とシルバーウルフ一匹を討伐しました。証拠素材の確認をお願いします」
俺は魔法の袋の中から、採取した『ウルフの毛皮』六枚と、『シルバーウルフの毛皮』と『シルバーウルフの鬣』を取り出して提出する。
「し、シルバーウルフが、へ、平原に……? た、確かに出たのですね……し、しかも、それを倒されたのですか……?」
「はい、倒しました。リズと『二人で』」
俺の言葉に、遠巻きに見ていた冒険者がざわつく。
『あの平原の王女様が?』とか『あのヘンテコな依頼は本当にウルフの仕業だったのか』とか『たった二人でシルバーウルフを』とか、皆、口々に好きなことを言っている。
ギルドの奥から、お偉いさんらしき男性も出てきて、素材に目を通す。
がたいの良い男の人は、受付嬢に首肯したあと、奥に下がっていった。
「確認が取れました。今回は『ウルフの群れの討伐依頼』でしたので、こちらの『ウルフの毛皮』六枚は証拠として回収させていただきます。シルバーウルフの素材はご自由になさってください。それと、一応、巣穴の場所もお教えください。後で、ギルドの調査団を送りたいと思います。そして、こちら依頼主様から討伐報酬の500Gです」
金貨一枚が差し出される。
サマンサの方を見るとうんうんと頷いている。
「やったー!! 依頼達成よー、レオーー!!」
「ああ!! よく頑張った、ホントによく頑張った!!」
俺とリズは互いに互いを讃え合い、抱き合って喜んだ。
討伐報酬の500G金貨は、今まで稼いだどの金貨より輝いて見えた。
思わぬ方向から、火球の直撃を受けたシルバーウルフは、怯んだように少しのけぞる。
「逃してたまるか……!!」
一瞬のチャンス……!!
俺は魔力を込めた手で、シルバーウルフの喉元を鷲掴みにする。
「焼き切れ……!! 『ファイア』!!」
ゴオオオオオオオ!!
最大出力、ありったけの魔力を凝縮した火球をゼロ距離で放つ。
「ガアアアアアアアアアアアア……!!」
急所への一撃に、シルバーウルフは倒れ、苦しそうにのた打ち回る。
「悪いな……俺『たち』の勝ちだ……!!」
俺は焼けただれているシルバーウルフの喉を剣で斬り裂いた。
シルバーウルフが動かなくなる。
緊張が解けたからか、身体から力が抜け、俺はその場に座り込む。
「死ぬかと……本当に、死ぬかと思った……!!」
呆然としていると、後ろからリズが飛びついてくる。
「よかったぁああ!! よかったよぉお、レオおおお!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにさせている。
俺は、そんなリズを抱きしめる。
「ありがとう、リズ! リズのおかげだ! 本当に助かった……!!」
感謝の言葉を述べると、リズはグスグスと嗚咽を漏らしながら、俺の胸板に顔を擦り付けた。
しばらく息を整え、ようやく、俺の身体が言うことを聞き始めた。
俺にしがみついて泣いていたリズも落ち着いてきた。
「ふう……やっと力が入るようになってきた」
リズの支えも借りて、弱々しい勢いで立ち上がる。
情けないことに腰を抜かしていたらしい。
「そういえば、リズ……なんで『ファイア』を使えるんだ?」
疑問に思っていたことを尋ねる。
「レオが、あの魔導書読み終わった後、こっそり私も読んでみたの……そしたら、レオの時みたいに文字が光って……魔法適性Eだからスライムも倒せないだろうけど、使えるに越したことないかなって……レオの役に少しでも立ちたかったから……」
「偉いな……リズは……」
リズの頭をそっと撫でた。
適性が無いからといって投げ出さないリズの姿勢に今回は救われた。
コロン……。
そうこうしていると、シルバーウルフの口から水色の玉が出てきた。
「ん? なんだあれ?」
「ホントだ……何だろう……?」
リズが吐き出された玉を持ち上げた。
「うーん……なんだ、これ? 見たことも聞いたことも無いわね……こんなアイテム……『鑑定』……だめだ、魔法を使っても分からない……」
「どれ、俺にも見せてくれ」
「あ、うん」
リズから玉を受け取った瞬間――。
バキイイイイン!!
玉は粉々になって割れてしまった。
思わず二人で「ひゃいっ!?」と変な声を上げてしまった。
顔を見合わせて、苦笑する。
「ま、まあ、割れちゃったものはしょうがないわね……」
「だな……さて、討伐したはいいけど、これから何をすればいいんだ?」
「とりあえず、証拠である素材を剥ぎ取って、ギルドに提出して、依頼達成報告ね」
「分かった。じゃあ、早速剥ぎ取って、一旦、サマンサの家に行こう。そうそう、牛舎で倒した二匹のウルフも忘れずにな」
「うん!」
俺たちは、ウルフたちから素材を採って、サマンサの家に向かうのだった。
「た、ただいまーぁ……!」
「つ、疲れた……」
明け方、疲れ果てた俺とリズは倒れ込むようにして、サマンサの家に入る。
「おかえり……って、だ、大丈夫!? 二人ともボロボロだよ!?」
リズの方は、まだ外傷は無いが、俺の恰好は酷かった。
なにせ、シルバーウルフに皮の服をズタズタにされたのだから、上半身はほぼ裸だ。
その上、胸には爪で引っかかれた跡がたくさんある。
心配そうに見つめるサマンサの肩にポンと手を置く。
「安心しろ、もう大丈夫だ。悪さをするウルフは全部倒してきた」
その言葉に驚き、涙をポロポロ流しだすサマンサ。
「諦めないでよかったね! サマンサ!」
リズもサマンサの背中をさする。
「うん……! うん……! ありがとう……!! ホントにありがとう、二人とも……!!」
しばらく、泣き続けるサマンサを二人で慰めるのだった。
俺とリズは朝食をとった後、身体を拭き、夕方まで干し草ベッドで爆睡した。
起床後、依頼達成報告のためにサマンサと一緒にルクシアの町を訪れる。
俺の皮の服はボロボロになってしまったので、転生した時に着ていた普段着で町を歩く。
リズとサマンサが笑顔で話しながら、隣を歩いている。
一仕事終えた後のような、晴れやかな気分だ。
ギルドの受付に向かうと、受付嬢がいつものクールな表情で、俺たちを出迎えてくれた。
「お久しぶりです。レオさん、リズさん、そしてサマンサ様も……依頼に進展はありましたか?」
「はい、依頼達成報告にきました。ウルフの巣穴を発見、及び、ウルフ六匹とシルバーウルフ一匹を討伐しました。証拠素材の確認をお願いします」
俺は魔法の袋の中から、採取した『ウルフの毛皮』六枚と、『シルバーウルフの毛皮』と『シルバーウルフの鬣』を取り出して提出する。
「し、シルバーウルフが、へ、平原に……? た、確かに出たのですね……し、しかも、それを倒されたのですか……?」
「はい、倒しました。リズと『二人で』」
俺の言葉に、遠巻きに見ていた冒険者がざわつく。
『あの平原の王女様が?』とか『あのヘンテコな依頼は本当にウルフの仕業だったのか』とか『たった二人でシルバーウルフを』とか、皆、口々に好きなことを言っている。
ギルドの奥から、お偉いさんらしき男性も出てきて、素材に目を通す。
がたいの良い男の人は、受付嬢に首肯したあと、奥に下がっていった。
「確認が取れました。今回は『ウルフの群れの討伐依頼』でしたので、こちらの『ウルフの毛皮』六枚は証拠として回収させていただきます。シルバーウルフの素材はご自由になさってください。それと、一応、巣穴の場所もお教えください。後で、ギルドの調査団を送りたいと思います。そして、こちら依頼主様から討伐報酬の500Gです」
金貨一枚が差し出される。
サマンサの方を見るとうんうんと頷いている。
「やったー!! 依頼達成よー、レオーー!!」
「ああ!! よく頑張った、ホントによく頑張った!!」
俺とリズは互いに互いを讃え合い、抱き合って喜んだ。
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