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第1章:病弱青年とある女冒険者編

第10話:平原で冒険者生活【☆】

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 ルクシアの町の武器屋と防具屋に立ち寄り、俺の装備を整えていく。
 武具の良し悪しは、まだよく分からないしリズに買ってもらうものだから、ほとんどリズと店員にお任せした。
 とりあえず450Gの鉄の剣、250Gの皮の服、150Gの皮の帽子を買ってもらった。
 皮の服はリズと同じような胴装備だ。
 着ていた服より分厚い感じはするが、よく鞣されていて着心地はなかなかいい。
 転生した時に着ていた服はやはり普段着にして、冒険に行くときはこの服でいいだろう。
 皮の帽子はあっても無くてもいいとのことだったが『初心者だから』との理由でリズに無理やりつけさせられる。
 そして、鉄の剣。
 リズが持っている銅の剣と同じでいいと言ったが『強い適性があるんだからいい武器を持たなきゃダメ』とのことで1ランク上の鉄でできた剣を買ってもらったのだった。
 買い物を通して思ったがリズはかなり『尽くすタイプ』で『世話焼き』な面があるように思える。
 言い方は悪いが、悪い男に引っかかりそうで心配になるというか。
 いや、もう他の男に渡す気など、さらさら無いが。

 装備を整えて、リズと共に平原に出る。
 さらさらとした気持ちのいい風が一面の原っぱを揺らしている。
「さてと、とりあえず今日の宿代くらいは稼がないとな」
「そうだね、この辺に生えているお金になりそうな植物や鉱物とかも拾いながらね。今日はレオがいるから、魔物から逃げなくていいし」
 昨日の戦いからなのか、俺への期待値が高い。
「魔物と戦いになったらとりあえず下がっていてくれ。色々と試したいことがあるんだ」
「うん、分かった!」
 その期待に応えるためには、まずはしっかり戦い方を組み立てないといけないだろう。

 俺とリズは他愛ない言葉を交わしながら、平原を散策する。
 平原で一年も活動してきただけあって、どこにどんなアイテムが生えているとかは、熟知しているようで、リズに任せてそのポイントを回っていく。
 数か所の採集ポイントを回ったくらいで、草むらからカサカサと音がした。
「ピギー!!」
 スライムだ。
 初めての本腰を入れての戦いということで多少緊張しているが、一匹だけなのは都合が良かった。
 思っていたことを試せる。
 俺はさっと右手をスライムに向ける。
 昨日リズに言われたように、炎をイメージ、身体の端から指先に魔力を移動させる。
 そして放つ瞬間に、蛇口を締めるように力の奔流を弱めた。

 ゴオッ!!

 バレーボールぐらいの大きさの火球がスライムに向かって飛んでいき、当たって弾ける。
「ピギャ!!」
 スライムがはじけ飛んだ。
「やったね、レオ。でも、昨日より威力が、かなり弱いような……」
「ああ、魔力をコントロールしてみた。スライム相手に昨日みたいな火力は過剰だろう? 一日に何度も魔物と戦うとなるとMPは節約したいと思ってな」
「なるほど、そうだね♪」
 MPで伝わった。
 ということは、やはりこの世界では魔力の限度が周知されているということだ。
「本当にRPGみたいだな」
「あーるぴーじー?」
 こっちは流石に伝わらない。
「そうだ、リズ。魔法にはどんな種類があるか分かるか?」
「基本的なものだと、攻撃魔法・補助魔法・回復魔法かな。それぞれの魔法に『火』『水』『土』『風』の四つの種類があるわ。あとは、属性を混ぜ合わせた『混合魔法』なんてのもあるみたいだけど」
 なるほど、ここら辺もゲームや漫画と同じような原理だ。
「さあさあ、魔物から素材を頂こう」
 リズから採集用の小瓶を貰い、粘液を入れ、転がっている綺麗な小石のようなものを拾う。
『スライムの粘液』『スライムの核』の採集完了だ。

 続いて遭遇したのはホーンラビットとビックアント二匹。
 ホーンラビットは、まさしく真っ白な兎だ。
 ただ、頭に尖った角を持っている。
 ビッグアントは巨大なアリだ。
 ちょうど赤ん坊くらいの大きさだろうか。
 キシキシという鈍い音を立てながら、顎と脚を機敏に動かしている、非常に気持ち悪い。
 リズを下がらせて、右手と左手、両方で火球を放つ。
 ボオッ!! ボォッ!!
 火球はビッグアントをそれぞれ捉えて倒す。成功だ。
 残ったホーンラビットが角を構えて突っ込んでくる。
 ぞくりと恐怖心が襲ってくるが、落ち着けと自分に言い聞かせる。
 次は硬い土の塊をイメージして魔力をこねる。
 火球を放つのと同様に力を飛ばすと、見事に硬そうな土の塊が飛んでいく。
 土の塊は見事にホーンラビットの腹部にヒットして、動かなくなった。
「すごい! すごいよ、レオ!!」
 隠れていたリズが飛び跳ねて喜んでいる。
「よし、素材を剥ぎ取るか。こいつらからは何が取れるんだ?」
「ビッグアントから採れる素材は『大蟻の顎』、ホーンラビットからは『角兎の皮』と『角兎の肉』だね」
 リズが倒した魔物からテキパキと素材を剥ぎ取っていく。
「手際が良いな」
「ギルドの冒険者ならある程度は本とかで習うから。特に採集者は、アイテムに関してはパーティの誰より詳しくなくちゃいけないし。まあ、あたしもこの辺りの魔物のことしか知らないんだけどね」
 リズが照れくさそうに答える。
「はい! あんたが倒した魔物の素材!」
「パーティなのに分けなくていいのか?」
「分けてるパーティもあるけど、基本的には自分で倒した魔物や自分で見つけたアイテムはその人のものだから、後ろめたくなる必要は無いよ」
 俺の問いかけにニッコリ微笑みながら、回収し終えた素材を俺に渡してくれる。
 再び採集ポイントを回っていく。

 本日、三戦目はスライム二匹とホーンラビットだ。
 リズを下がらせて、俺は腰に差した鉄の剣を抜く。
 魔法で戦えることは十分分かった。次は剣でどれだけ戦えるか。
「ハアアアッ!!」
 スライムに駆け寄り、頭から剣を振り下ろす。
 シュパッと半分に斬れて、動かなくなる。
 残ったスライムも、すぐさま薙ぎ払い倒す。
 そして最後、ホーンラビットが突進してくるのを寸前で避けて横から斬りつけて倒す。
 不思議な感覚だった。
 剣など、ロクに持ったことも無いのにどう動けばいいのかが感覚的に分かる。
 これが剣適性SSSの力だろうか。
 なおかつ、身体をそれに呼応するように動かすことができる。
 この辺は、転生して得た身体能力、体力といったところだろう。
 地球にいた頃とは違う『活きてる自分』に感動したのだった。

買い物スタイルのリズ
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