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パッケージ詐欺
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明けて翌日、宿を出立した。
道中馬車の中で何故かジーク様やカイザー様がやたら菓子を与えてくれるので本気で遠足気分だったのだが、あれは一体何だったのだろう?
孫を甘やかすお爺ちゃん的な?
今世では初めて甘いものを食べた。
飴ちゃんやパウンドケーキなどがこの世界の貴族向けの高級菓子なんだそうな。
ドライフルーツとクルミが入ったパウンドケーキを貰ったのだが、ドライフルーツの甘酸っぱい酸味とクルミのサクサク感が堪らなく、スポンジもシットリしていて鳥肌が立つほど美味だった!
なんて幸せな味だろう!
しかしそんな高級品を買ってもらって本当によかったのだろうか?
因みに私の座右の銘は「タダより怖いモノはない」だ。
お二人共とても優しい方でご好意でお菓子を買ってくれたのだが、お返しできるものが私には何もない。
苦肉の策として肩たたき券を渡したら「お気持ちだけ」とそっと涙ぐまれた。
何故だ。
夕方になり王都の屋敷に到着すると、数年ぶりに見る父が猛ダッシュでかけてきてギュウギュウと抱きしめられた。
羽交い締めと紙一重だ。
「あぁクリスティナ!!長いこと不憫な生活を強いてしまってゴメンよぉ!!」
大の大人が大号泣である。
見た目は凛々しく優しげ美中年の父の若い頃はそれは大変モテたらしいが、こうして見ると娘馬鹿な残念おじさんにしか見えない。
いえお父様、私は鞭以外は楽しく幸せに暮らしてましたよ?
鞭だけは痛くていただけないが。
「もう心配いらない。
跡取り問題があったから致し方なくあれを後妻に娶ったが、君をこんな目にあわせたミザリーとは離縁して家に帰すことにするよ。」
「弟のミシェルはどうなるのですか?」
「あの子は公爵家の跡取りだ。
このまま領地で育て、然るべき教育を受けることになる。」
「それだけはいけません!」
「な、何故だい?」
父はまるで分かっていない。
「公爵家に跡取りは必要です。
貴族なのだから政略結婚も仕方ない事は存じております。
ですが女性は子供を産む道具ではないのです。
自分がお腹を痛めて命懸けで産んだ子供と引き離されるのは身を引き裂かれるより辛いことなのです。」
私には子供を産んだ経験こそないが、子供がいたら死ぬほど可愛いがるだろう。
血を分けた実の子ほど愛しい者はない。
男性は産む苦しみを経験しないから実感が湧きにくいのだという。
ミザリー様もとてもミシェルを可愛がっていた。
ミザリー様が私を受け入れられない気持ちも何となく分かる。
同じ女性だからね。
これは想像なのだが、ミザリー様は父を愛していて、だからこそ他の女性の子供を受け入れられなかったのではないかと思う。
死んだ者は生き返らない。
なのに父は母をいつまでも引きずっていたから許せなかったのだろう。
父はもっとミザリー様と向き合って、話し合わなければいけなかったのだ。
ミザリー様1人が悪いわけではない。
離縁してしまえば私は鞭で打たれることもなくなり問題は解決したかのように見えるが、ミザリー様は更に私を憎むようになるだろう。
それは負の連鎖を生むだけだ。
それを伝えると父は泣きそうな、それでいて嬉しそうな複雑は表情をみせた。
「そうだね、私が彼女にちゃんと向き合わなかったせいで彼女を追い詰めてしまったのかもしれない。
一度しっかり話しあったほうがいいのかもね。
君にも迷惑をかけた。」
私が領地で最後に見た父は、いつも悲しげでお酒で気を紛らわせていたが、王宮使えで仕事に没頭することで立ち直ってくれたようだった。
寂しかったけど、王都に送り出して良かった!
「それにしても……。」
ホッと息をつき父は私を見つめた。
「君はいつの間にこんな素敵なレディになってしまったんだろう。
君の成長をちゃんと見てこなくて損したなぁ。」
お父様、残念ながらスタート時からプラス25歳上乗せの精神年齢なので、可愛らしい少女期は無かったかと…。
成長過程を見られなくてかえって良かったのかもしれない…。
パッケージ(見た目)と中身は別のモノなのです。
しみじみと感慨深げに娘を見つめる父と、父の感慨を裏切ってるようで申し訳ない娘の温度差はなかなか激しかった。
道中馬車の中で何故かジーク様やカイザー様がやたら菓子を与えてくれるので本気で遠足気分だったのだが、あれは一体何だったのだろう?
孫を甘やかすお爺ちゃん的な?
今世では初めて甘いものを食べた。
飴ちゃんやパウンドケーキなどがこの世界の貴族向けの高級菓子なんだそうな。
ドライフルーツとクルミが入ったパウンドケーキを貰ったのだが、ドライフルーツの甘酸っぱい酸味とクルミのサクサク感が堪らなく、スポンジもシットリしていて鳥肌が立つほど美味だった!
なんて幸せな味だろう!
しかしそんな高級品を買ってもらって本当によかったのだろうか?
因みに私の座右の銘は「タダより怖いモノはない」だ。
お二人共とても優しい方でご好意でお菓子を買ってくれたのだが、お返しできるものが私には何もない。
苦肉の策として肩たたき券を渡したら「お気持ちだけ」とそっと涙ぐまれた。
何故だ。
夕方になり王都の屋敷に到着すると、数年ぶりに見る父が猛ダッシュでかけてきてギュウギュウと抱きしめられた。
羽交い締めと紙一重だ。
「あぁクリスティナ!!長いこと不憫な生活を強いてしまってゴメンよぉ!!」
大の大人が大号泣である。
見た目は凛々しく優しげ美中年の父の若い頃はそれは大変モテたらしいが、こうして見ると娘馬鹿な残念おじさんにしか見えない。
いえお父様、私は鞭以外は楽しく幸せに暮らしてましたよ?
鞭だけは痛くていただけないが。
「もう心配いらない。
跡取り問題があったから致し方なくあれを後妻に娶ったが、君をこんな目にあわせたミザリーとは離縁して家に帰すことにするよ。」
「弟のミシェルはどうなるのですか?」
「あの子は公爵家の跡取りだ。
このまま領地で育て、然るべき教育を受けることになる。」
「それだけはいけません!」
「な、何故だい?」
父はまるで分かっていない。
「公爵家に跡取りは必要です。
貴族なのだから政略結婚も仕方ない事は存じております。
ですが女性は子供を産む道具ではないのです。
自分がお腹を痛めて命懸けで産んだ子供と引き離されるのは身を引き裂かれるより辛いことなのです。」
私には子供を産んだ経験こそないが、子供がいたら死ぬほど可愛いがるだろう。
血を分けた実の子ほど愛しい者はない。
男性は産む苦しみを経験しないから実感が湧きにくいのだという。
ミザリー様もとてもミシェルを可愛がっていた。
ミザリー様が私を受け入れられない気持ちも何となく分かる。
同じ女性だからね。
これは想像なのだが、ミザリー様は父を愛していて、だからこそ他の女性の子供を受け入れられなかったのではないかと思う。
死んだ者は生き返らない。
なのに父は母をいつまでも引きずっていたから許せなかったのだろう。
父はもっとミザリー様と向き合って、話し合わなければいけなかったのだ。
ミザリー様1人が悪いわけではない。
離縁してしまえば私は鞭で打たれることもなくなり問題は解決したかのように見えるが、ミザリー様は更に私を憎むようになるだろう。
それは負の連鎖を生むだけだ。
それを伝えると父は泣きそうな、それでいて嬉しそうな複雑は表情をみせた。
「そうだね、私が彼女にちゃんと向き合わなかったせいで彼女を追い詰めてしまったのかもしれない。
一度しっかり話しあったほうがいいのかもね。
君にも迷惑をかけた。」
私が領地で最後に見た父は、いつも悲しげでお酒で気を紛らわせていたが、王宮使えで仕事に没頭することで立ち直ってくれたようだった。
寂しかったけど、王都に送り出して良かった!
「それにしても……。」
ホッと息をつき父は私を見つめた。
「君はいつの間にこんな素敵なレディになってしまったんだろう。
君の成長をちゃんと見てこなくて損したなぁ。」
お父様、残念ながらスタート時からプラス25歳上乗せの精神年齢なので、可愛らしい少女期は無かったかと…。
成長過程を見られなくてかえって良かったのかもしれない…。
パッケージ(見た目)と中身は別のモノなのです。
しみじみと感慨深げに娘を見つめる父と、父の感慨を裏切ってるようで申し訳ない娘の温度差はなかなか激しかった。
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