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乙女ゲームは二次元だから恋できる
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私はどうしたらいいのだろう?
飯テロを止めればいいとフェリシア様から助言をもらったのだが、それは私のポリシーに反する。
厨房は私のパラダイス。
私から料理を取ったら、骨と皮しか残らないじゃないか。
飯テロを止めるのいう選択だけは出来ない……。
イケメンをはべらしお姫様のようにチヤホヤされるのも楽しそうだが、倫理観というものがある。
や、本物の姫は姫なんだが。
冗談はさておき例えばこのまま3人の攻略者の誰かを選んだとして、それは本当に恋愛という意味で好きなのだろうか?
3人とも乙女ゲームの攻略者と言うに相応しいほどの美貌の持ち主だが、二次元に恋するのとは違いここは現実だ。
何が正解?
気持ちがモヤモヤしてため息をついていると、食堂の常連さんが声をかけてきた。
「おや、どうしたんだい?サラちゃん。
元気ないようだが。」
「あらスーさん、いらっしゃい!
なんでもないのよ?
今日もいつもの唐揚げ定食?」
「頼むよ。
サラちゃん特製の唐揚げは絶品だからな!」
「おだてても何も出ないわよ!」
通称遊び人のスーさん。
爵位も仕事も謎の正体不明なスーさんは、唐揚げの虜となり毎日通ってくれるナイスミドルなオッチャンだ。
「もしかして恋の悩みかい?」
んーー………。
ちょっと違うような。
「違うの。
なんか急にモテちゃって、どうしていいか分からないの。」
「サラちゃんは可愛いもんなぁ。」
「あらやだスーさん、視力悪かったでしょ?」
「バレたか!」
調子のいいオッチャンである。
「そうか、サラちゃんは無責任な恋愛は出来ない子なんだね。」
「え?」
「だってとりあえず付き合ってみようとか、全員手玉に取っちゃおうとか思ってないんだろ?」
そんなの当たり前だ。
イケメンは好きだが、付き合うモノではなく遠くからソッと愛でるモノだと思ってる。
「相手は焦らずゆっくり探せばいいさ。
その時がきたら、この人だ!ってすぐに分かるから。」
「そんなもんなの?」
「そうだよ、そんなもんさ。
政略結婚の相手でも、ひょっとしたら運命の相手かもしれないよ?」
不思議とモヤモヤした気持ちが少し晴れた。
そうだよね、ここは乙女ゲームに酷似していても現実の世界だ。
なにも私がヒロインになる必要などない。
初志貫徹、私は一度故郷に帰り政略結婚をし、未来の夫を愛する努力をすればいいのだ。
攻略対象のお三方には悪いが、きっぱりフッて諦めてもらおう!
私がやりたいことは変わらないじゃないか。
「スーさん、ありがと!」
「どういたしまして。
スッキリした顔してるじゃないか。」
「へへっ。」
いい加減なオッチャンでも、たまにはいい事を言うもんだ。
「サラちゃん、お客様だよ……。」
気持ちを切り替えて厨房でせっせと料理を作っていると、料理長が私に声をかけてきた。
真面目な彼はアレクシス様の"サラちゃん面会謝絶命令"をシッカリ守ってくれている人なのだが……いったいどうした?
心なしか顔が青ざめている。
「とりあえず求婚者ではないし、危険はないから……。」
「はい、分かりました……。」
料理長は厨房のボスだ。
ボスが面会を許可したなら会わなければいけないだろう。
リナは……お花摘みかな?
ボスが危険はないと言っていたし、1人でも大丈夫かな?
恐る恐る控え室に行くと、極上のイケメンが現れた。
→戦う
逃げる
様子を見る
とりあえず握手をしてもらう
選択肢はどれだ?
握手はイケメンに対する当然の礼儀だ。
余分な選択肢など入れていない!
ん?
私の顔見て固まっている?
私はこんな極上イケメンは知らないが。
小さく「こんなところにいる訳ないか……。」と言っている。
人違い?
「貴女が食堂の料理をより美味しくしてくれたシェフか?」
「は、はい!」
ビックリした!声までイケボだ!
「そんなに畏まらなくていい。
俺は権力を振りかざすような真似はしない。
いつも美味しい料理をありかとう。」
あぁ、お偉いさんかな?
この国では有名な人なのかもしれない。
あ、だから料理長も逆らえなかったのか。
「ハンバーグといったか?
あれは最高に美味いな!
サラダも正直野菜は得意ではなかったのだが、マヨネーズで美味しくいただいている。」
極上イケメンは嬉しそうに料理を褒めてくれた。
その笑顔、嬉しいなぁ。
彼は艶やかな黒髪と漆黒の瞳を持つ、妖艶系イケメンだ。
でも話した感じ、無邪気でとても優しげな印象を受けた。
「ありがとうございます。
そう言っていただけると嬉しいです!」
「アレクに聞いたのだが、貴女はさすらいの料理人なのだそうだな?
どうだ?この国に留まる気はないか?」
んんん?何故?
「貴女の料理は素晴らしい。
俺はこの国を豊かにしたい。
民が飢えることのないよう、経済の発展の為に政策を打ち出してきたが、それでも飢えに苦しむ民はいる。
貴女が力を貸してくれないだろうか?」
立派な志しを持つ方だと思った。
私は飢えることがとても怖い。
前世の記憶も関係しているが、常に死と隣り合わせだからだ。
だからこそ王女の地位や前世の知識をフルに使い、貧しい民を救う活動をしてきた。
この方は私の理想の国を目指している。
「ありがたいお言葉、勿体無いないです。
ですが残念ながら、あと2ヶ月ほどで故郷に帰ることになってまして……。」
そうなのだ。
王太子がマーシャを正式に妃に迎える準備ができたら、私は故郷に帰るのだ。
力になりたい気持ちはあるが、それはマーシャの仕事になるだろう。
「そうか、残念だな。
では故郷に帰るまででいい、この国の者に美味しい料理を沢山教えていってやってくれ。」
本当に偉ぶらない人だ。
私を庶民だと思ってるだろうに、権力で無理矢理従わせることをしない。
こんな優しい人が護る国なら、きっと理想は実現するだろう。
それはそうと。
アレクシス様はさすらいの料理人というネタを本気にしてたのね。
確かに最初厨房に入るさい身分はどうするのかと聞かれて、ついついウケ狙いで"さすらいの料理人"と答えたんだけど……。
本気にされると恥ずかしいじゃないか。
自業自得だろう。
飯テロを止めればいいとフェリシア様から助言をもらったのだが、それは私のポリシーに反する。
厨房は私のパラダイス。
私から料理を取ったら、骨と皮しか残らないじゃないか。
飯テロを止めるのいう選択だけは出来ない……。
イケメンをはべらしお姫様のようにチヤホヤされるのも楽しそうだが、倫理観というものがある。
や、本物の姫は姫なんだが。
冗談はさておき例えばこのまま3人の攻略者の誰かを選んだとして、それは本当に恋愛という意味で好きなのだろうか?
3人とも乙女ゲームの攻略者と言うに相応しいほどの美貌の持ち主だが、二次元に恋するのとは違いここは現実だ。
何が正解?
気持ちがモヤモヤしてため息をついていると、食堂の常連さんが声をかけてきた。
「おや、どうしたんだい?サラちゃん。
元気ないようだが。」
「あらスーさん、いらっしゃい!
なんでもないのよ?
今日もいつもの唐揚げ定食?」
「頼むよ。
サラちゃん特製の唐揚げは絶品だからな!」
「おだてても何も出ないわよ!」
通称遊び人のスーさん。
爵位も仕事も謎の正体不明なスーさんは、唐揚げの虜となり毎日通ってくれるナイスミドルなオッチャンだ。
「もしかして恋の悩みかい?」
んーー………。
ちょっと違うような。
「違うの。
なんか急にモテちゃって、どうしていいか分からないの。」
「サラちゃんは可愛いもんなぁ。」
「あらやだスーさん、視力悪かったでしょ?」
「バレたか!」
調子のいいオッチャンである。
「そうか、サラちゃんは無責任な恋愛は出来ない子なんだね。」
「え?」
「だってとりあえず付き合ってみようとか、全員手玉に取っちゃおうとか思ってないんだろ?」
そんなの当たり前だ。
イケメンは好きだが、付き合うモノではなく遠くからソッと愛でるモノだと思ってる。
「相手は焦らずゆっくり探せばいいさ。
その時がきたら、この人だ!ってすぐに分かるから。」
「そんなもんなの?」
「そうだよ、そんなもんさ。
政略結婚の相手でも、ひょっとしたら運命の相手かもしれないよ?」
不思議とモヤモヤした気持ちが少し晴れた。
そうだよね、ここは乙女ゲームに酷似していても現実の世界だ。
なにも私がヒロインになる必要などない。
初志貫徹、私は一度故郷に帰り政略結婚をし、未来の夫を愛する努力をすればいいのだ。
攻略対象のお三方には悪いが、きっぱりフッて諦めてもらおう!
私がやりたいことは変わらないじゃないか。
「スーさん、ありがと!」
「どういたしまして。
スッキリした顔してるじゃないか。」
「へへっ。」
いい加減なオッチャンでも、たまにはいい事を言うもんだ。
「サラちゃん、お客様だよ……。」
気持ちを切り替えて厨房でせっせと料理を作っていると、料理長が私に声をかけてきた。
真面目な彼はアレクシス様の"サラちゃん面会謝絶命令"をシッカリ守ってくれている人なのだが……いったいどうした?
心なしか顔が青ざめている。
「とりあえず求婚者ではないし、危険はないから……。」
「はい、分かりました……。」
料理長は厨房のボスだ。
ボスが面会を許可したなら会わなければいけないだろう。
リナは……お花摘みかな?
ボスが危険はないと言っていたし、1人でも大丈夫かな?
恐る恐る控え室に行くと、極上のイケメンが現れた。
→戦う
逃げる
様子を見る
とりあえず握手をしてもらう
選択肢はどれだ?
握手はイケメンに対する当然の礼儀だ。
余分な選択肢など入れていない!
ん?
私の顔見て固まっている?
私はこんな極上イケメンは知らないが。
小さく「こんなところにいる訳ないか……。」と言っている。
人違い?
「貴女が食堂の料理をより美味しくしてくれたシェフか?」
「は、はい!」
ビックリした!声までイケボだ!
「そんなに畏まらなくていい。
俺は権力を振りかざすような真似はしない。
いつも美味しい料理をありかとう。」
あぁ、お偉いさんかな?
この国では有名な人なのかもしれない。
あ、だから料理長も逆らえなかったのか。
「ハンバーグといったか?
あれは最高に美味いな!
サラダも正直野菜は得意ではなかったのだが、マヨネーズで美味しくいただいている。」
極上イケメンは嬉しそうに料理を褒めてくれた。
その笑顔、嬉しいなぁ。
彼は艶やかな黒髪と漆黒の瞳を持つ、妖艶系イケメンだ。
でも話した感じ、無邪気でとても優しげな印象を受けた。
「ありがとうございます。
そう言っていただけると嬉しいです!」
「アレクに聞いたのだが、貴女はさすらいの料理人なのだそうだな?
どうだ?この国に留まる気はないか?」
んんん?何故?
「貴女の料理は素晴らしい。
俺はこの国を豊かにしたい。
民が飢えることのないよう、経済の発展の為に政策を打ち出してきたが、それでも飢えに苦しむ民はいる。
貴女が力を貸してくれないだろうか?」
立派な志しを持つ方だと思った。
私は飢えることがとても怖い。
前世の記憶も関係しているが、常に死と隣り合わせだからだ。
だからこそ王女の地位や前世の知識をフルに使い、貧しい民を救う活動をしてきた。
この方は私の理想の国を目指している。
「ありがたいお言葉、勿体無いないです。
ですが残念ながら、あと2ヶ月ほどで故郷に帰ることになってまして……。」
そうなのだ。
王太子がマーシャを正式に妃に迎える準備ができたら、私は故郷に帰るのだ。
力になりたい気持ちはあるが、それはマーシャの仕事になるだろう。
「そうか、残念だな。
では故郷に帰るまででいい、この国の者に美味しい料理を沢山教えていってやってくれ。」
本当に偉ぶらない人だ。
私を庶民だと思ってるだろうに、権力で無理矢理従わせることをしない。
こんな優しい人が護る国なら、きっと理想は実現するだろう。
それはそうと。
アレクシス様はさすらいの料理人というネタを本気にしてたのね。
確かに最初厨房に入るさい身分はどうするのかと聞かれて、ついついウケ狙いで"さすらいの料理人"と答えたんだけど……。
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