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沸念
しおりを挟む今でもその人のことは鮮明に覚えている、自分自身あまり物覚えがよく無い方で、話した内容や聞いた内容をすぐ忘れ、同じ話をしたり聞き直しをする機会が多い中、その場面だけは鮮明に思い出すことができる。
彼女との関係が始まった午前8時32分、今となってはこの関係が自身の人生をここまで左右するとは思っても見なかった。
私が初めて彼女に出会ったのが今から3年ほど前、相席ラウンジで働いていた時、月に1回ほどの頻度で見かける彼女に対する第一印象は、容姿が整った子だなとおもうくらいだった、それは他のバイトの面々も同じ感想で彼女がくるたびに、誰が彼女の席に飲み物を持っていくかで言い争うほどだった、しかし、あくまで店員とお客さんという立場の壁を越えることは決してなく、ただ私は遠巻きに彼女のことの容姿に目を奪われるばかりだった。
その後私が、そこのアルバイトを辞めてからは彼女との接点は全くなくなり、日常的に存在を思い出すことは無くなった。
アルバイトを辞めて2ヶ月ほど、何もしない時期が続いたある日、知り合いが経営しているボーイズバーで働かないかと打診を受けた、何もすることのない私にこれを断る理由もなく、そのバーで働くことになった私は来る日も来る日もお酒を飲んではつぶれを繰り返し、仕事のこと以外考えないようになっていた。
そんな惰性のような日常の中に、彼女は再び現れた、それが、彼女との再会であり、彼女からすると私との初対面である。
今考えれば全てが運命のように感じるが、あまりにも楽観的に考えすぎな気もする、だがそう思わざるを得ないほどに彼女に再会できた喜びは大きかったのだ。
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