弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

文字の大きさ
上 下
137 / 140
第十七章 光の神子

(5)

しおりを挟む
「もしオレがなにか病気とか怪我とかさ、そういうのになったら今度は、この世界だけでは済まないのかな? 至上の座を継いだら」

『オレが司っていたのはこの世界だから、影響はこの世界だけですんだ。でも、亜樹は至上の座を継ぐ者。継いだら影響はそれこそすべての世界に及ぶよ。だから、自分を大事にして言ってるわけ。わかる? はっきり言うけどかすり傷ひとつでも受けたら、絶・対・に連れ戻されるから!』

「嫌味な言い方するなよ、落ち込む」

『亜樹? 色々な物を背負わせて悪いけど、本当に自分を大事にして? ガーターが巻き込まれた以上、亜樹が連れ戻されるような事態になったら、この世界はとんでもないことになるからね。勿論が司である亜樹がいなくなったために起きる天災もあるよ? でも、同時に水神マルスもいなくなる。それはこの世界にとって滅んでくれっていうのも同じだから』

「はあ。なんて厄介な星の下に生まれたんだろ、オレって」

『ごめんね? でも、オレもずっとこの世界を護ってきたから愛着があるし、滅ぶなんてとんでもないし、そもそも連れ戻されるのもいやだから。今はオレと亜樹はこうして別々に存在しているけど、亜樹が完全にオレのすべてを継いだら、オレは亜樹の一部になる。感じるものもすべて同じだから、連れ戻されて胸が引き裂かれるような想いはしたくないね』

「セシル」

『なに?』

「おまえ、元々向こうに残ってて、素直に至上の座を継いでいたら、こんなややこしい目にあってないんじゃないのか? 至上の座を継ぐ者が、ひとつの世界の司だなんて前代未聞だよ。元々おまえは後継として存在していたんだし」

『!』

「逃げたんだろ? みんなの期待が重くて逃げ出した。違う?」

『言いにくいことズバッと言うね、亜樹も』

「まぁそれで王上の座を継ぐ者に‥‥‥ができたわけだしみんなにとっては結果オーライってところかな?」

「でも、この世界にきてよかったと思ってる。面白い世界だよね? 神々が世界を統べて世界の均衡を保っている。必ずらしい成り立ちだよ、実際』

「うん、まあね。だから、敢えて見逃したんじゃないか? セシルが選んだ世界がここだから、今の段階で敢えて言うと、こうなることを望んで賭けてみた。違うかな?」

『うん。それってあんまり嬉しくないかも』

「セシルが土壇場までいやだいやだを連発するから悪いんだよ。だから、条件なんて出されるんだ」

『痛いところを』

「どちらにしても早く力を取り戻さないと」

『そうだね。じゃあ、そろそろ消えるよ。亜樹? もう自分を犠牲にするような無茶をしたらダメだよ? 力さえ取り戻せは本質を封じることくらい、亜樹には簡単にできるんだから』

「わかってる。ちょっと落ちついて考えてみる。愚痴聞いてくれてありがと、ちょっと落ちついたよ、セシル」

『根本的に悪いのはオレだからね。それからあんまりガーターと喧嘩しないようにね!』

「セシルー」

 亜樹は恨めしそうに名を呼ぶとセシルは笑いながら消えていった。

「逃げたな。いっつも都合が悪くなると逃げるんだから。これで後継? あんな性格悪い奴が」

 ぶつぶつ呟く亜樹を、しばらくじっと見つめてから、一樹が声を投げた。

「もしかしてセシルと亜樹って、元々は別人なのか? 転生だから同一人物だと思ってたけど」

「ん? 別人っていうか。なんなんだろ? 確かに客観的にセシルのことは知ってたけど、それって同一人物とか、別人とか、そういう判断のできる次元じゃないし」

「言ってること意味不明だぞ、亜樹?」

「基本的には同一人物だよ。セシルはオレなんだ。ただ現段階では別人。セシルの意識はオレの内側に別に存在してるからね。オレが覚醒していないから。みんなのようにセシルには魂というものがない。あるのは意識」

「意識?」

「オレもそう。基本的には人とも神とも違う存在だからね。意識が重ならないとオレとセシルはひとつになれない。重なればセシルはオレでオレはセシルになる。元々オレはセシルの後継だし。後継として意識が存在したときに、セシルのことを知った。これが正しいことかな」

 なんだが亜樹の言っていることは意味不明である。

 順序立てて説明してもらわないと意味不明だ。

「セシルは何者なんだ? 至上の座を継ぐ身とか、なんか色々言ってたけど? それにおれを巻き込んだってどういう意味なんだ?」

「ごめん。その説明はしたくない」

「亜樹」

「一樹だって最初はオレに隠し事してただろ? わかってくれよ。知られたくないんだ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

処理中です...