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第十七章 光の神子
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「よくわからない。ひどく苦しんでいるようにも見えるけど、冷静に落ちついて見てみるなにかと必死になって闘っているようにも見える」
「‥‥‥」
「それにこれは眼の錯覚じゃないと言い切れるけど、どうしてかわからないけど、髪の色が一瞬だけ元の色に戻ったんだよ」
「黒髪に?」
重い問いに頷いた。
「それも以前より色が濃くなってた。ボクにわかるのはこれだけだよ。とにかく今は君は近付かないほうがいいよ、一樹。これはボクの予測だけど、おそらく亜樹は記憶が戻ったんだと思う」
「‥‥‥」
「力はどうか知らないけど、記憶は完全に戻ったんだと思う。だから、今の自分の状態が理解できるし、それが何を招くかもわかる。でなければ 君が危険だから呼ぶななんて言えないと思うからね」
これて納得してくれないかと思う。納得して退いてくれないから。
もちろん亜樹の様子を見ればそれを望んでも無理だろう。
だから見られないように体でかくしているが。
でも、事態はそう甘くはなかった。
「マルスっ!」
「エルダ? どうしたんだ?おまえがそんなに慌ててるところなんて初めてだけど?」
「落ちついている場合じゃないんだ、一樹っ! 窓の外を見てほしいっ!」
「アレス?」
後ろを見ていたかすかが怪訝そうな顔でリオネスを振り向いた。
「リオン。ちょっと身体の位置をずらしてくれないか? 窓の外が見たいんだ。なんだか知らないけどエルダもアレスも泡を食ってるし」
「亜樹の様子を見ても近付かないと約束できる?」
「そんなにひどいのか?」
一樹は断言しなかった。約束もしてくれない。
これは無駄だとわかってしまう。
伊達に義理の親は各乗っていないのだから。
言われたとおり身体をずらすと一樹が絶句した。
「亜掛っ! どうなってるんだ、一体?」
「え?」
愕然とした声に背後を振り返り、リオネスも同じ表情になった。
今や亜樹の外見は金髪になったり黒髪になったり、目まぐるしく変化している。
だけど、それを繰り返すたびに、亜樹の呼吸は荒くなるようだった。
そして、一樹と一緒に窓の外を見て、また絶句した。
「なに、あれ?」
「なにがどうなればああなるんだ?」
さすがの水神マルスも茫然自失である。
何故なら窓の外はひどい状態だったからだ。
今まで真屋だったかと思うと、いきなり変わったかと思うと夕方。また変わって早朝。
まるで時間の流れがバラバラ。
「わたしも目の当たりにしたときは絶句したものだ。他の兄弟たちむすぐにここへくるだろう。一体世界はどうなっているんだ?」
「いつ、始まったんだ、エルダ?」
風神エルダを振りいた一樹が問いかける。
リオネスもなんとなくそちらを向いていた。
「ついきっきだ。マルスが食事を届けると言って姿を消した直後だったと思う」
「もしかして」
一樹を放って、リオネスはゆっくり亜樹を振り返ってみた。
やはり目まぐるしく外見が変わっている。
まるで世界そのもののように。
「それ、亜樹の外見が狂いだしたときと一致してる」
「一樹が食事を運んでくる直前と言えば、ボクが初めて亜樹の変化を目の当たりにしたころだよ、おそらくね。世界の異変に関係がある?」
後になって思えは言ってはいけない一言だった。
一樹はこの言葉で覚悟を決めて部屋入ったのだから。
「一樹! 近づいたらダメだってっ!」
「こうしてダメなのか、ついてみないとわからんねえだろっ? この状態で放っておけるかよっ! 大体リオンの言ったことが本当なら、早く亜樹をなんとかしないと、世界はバランスを崩したままじゃねえかっ!」
リオネスは外見では一樹より年下である。しかも相手は同じ細身とはいえ、比較にならない長身。
頑張っても足止めなんてできるはずがなかった。
「一樹!」
振り切られたリオネスが名を呼ぶ。
寝台まで近付いたとき、いきなり一樹が崩れ落ちた。
「マルス!」
エルダがきょっとして近寄ろうとしたが、それより亜樹が働く方が早かった。
今まであれだけ苦しんでいたというのに、いきなり起き上がったのである。
呼吸はまだ荒かったし外見だって目茶苦茶だったが、その黄金の臓は強い意思を讃えていた。
「我が力の化身セシル、召喚!」
三人とも唖然としていたが、その命に従うように一樹の傍らに、いつか見た大賢者が立っていた。
『人使いが荒いね、亜樹は。年寄りは大事にしないといけないよ?』
「おちょくってる暇があったら一樹をなんとかしてくれよっ! できないなんて言ったら消滅させるからなっ!」
『またそういうことを言って。まあいいけどね。ガーターは無茶をする。さて。なんとかできるかな?』
そうきさやいてセシルは屈み込んだ。
そっと顔に手を翳す。
淡い光が注ぎ込まれ、やが
て一樹が目覚めた。
「あれ、おれどうしてセシル?」
頭を振りながら立ち上がる。亜樹の意識があるときにセシルがいることに一樹は混乱する。
「‥‥‥」
「それにこれは眼の錯覚じゃないと言い切れるけど、どうしてかわからないけど、髪の色が一瞬だけ元の色に戻ったんだよ」
「黒髪に?」
重い問いに頷いた。
「それも以前より色が濃くなってた。ボクにわかるのはこれだけだよ。とにかく今は君は近付かないほうがいいよ、一樹。これはボクの予測だけど、おそらく亜樹は記憶が戻ったんだと思う」
「‥‥‥」
「力はどうか知らないけど、記憶は完全に戻ったんだと思う。だから、今の自分の状態が理解できるし、それが何を招くかもわかる。でなければ 君が危険だから呼ぶななんて言えないと思うからね」
これて納得してくれないかと思う。納得して退いてくれないから。
もちろん亜樹の様子を見ればそれを望んでも無理だろう。
だから見られないように体でかくしているが。
でも、事態はそう甘くはなかった。
「マルスっ!」
「エルダ? どうしたんだ?おまえがそんなに慌ててるところなんて初めてだけど?」
「落ちついている場合じゃないんだ、一樹っ! 窓の外を見てほしいっ!」
「アレス?」
後ろを見ていたかすかが怪訝そうな顔でリオネスを振り向いた。
「リオン。ちょっと身体の位置をずらしてくれないか? 窓の外が見たいんだ。なんだか知らないけどエルダもアレスも泡を食ってるし」
「亜樹の様子を見ても近付かないと約束できる?」
「そんなにひどいのか?」
一樹は断言しなかった。約束もしてくれない。
これは無駄だとわかってしまう。
伊達に義理の親は各乗っていないのだから。
言われたとおり身体をずらすと一樹が絶句した。
「亜掛っ! どうなってるんだ、一体?」
「え?」
愕然とした声に背後を振り返り、リオネスも同じ表情になった。
今や亜樹の外見は金髪になったり黒髪になったり、目まぐるしく変化している。
だけど、それを繰り返すたびに、亜樹の呼吸は荒くなるようだった。
そして、一樹と一緒に窓の外を見て、また絶句した。
「なに、あれ?」
「なにがどうなればああなるんだ?」
さすがの水神マルスも茫然自失である。
何故なら窓の外はひどい状態だったからだ。
今まで真屋だったかと思うと、いきなり変わったかと思うと夕方。また変わって早朝。
まるで時間の流れがバラバラ。
「わたしも目の当たりにしたときは絶句したものだ。他の兄弟たちむすぐにここへくるだろう。一体世界はどうなっているんだ?」
「いつ、始まったんだ、エルダ?」
風神エルダを振りいた一樹が問いかける。
リオネスもなんとなくそちらを向いていた。
「ついきっきだ。マルスが食事を届けると言って姿を消した直後だったと思う」
「もしかして」
一樹を放って、リオネスはゆっくり亜樹を振り返ってみた。
やはり目まぐるしく外見が変わっている。
まるで世界そのもののように。
「それ、亜樹の外見が狂いだしたときと一致してる」
「一樹が食事を運んでくる直前と言えば、ボクが初めて亜樹の変化を目の当たりにしたころだよ、おそらくね。世界の異変に関係がある?」
後になって思えは言ってはいけない一言だった。
一樹はこの言葉で覚悟を決めて部屋入ったのだから。
「一樹! 近づいたらダメだってっ!」
「こうしてダメなのか、ついてみないとわからんねえだろっ? この状態で放っておけるかよっ! 大体リオンの言ったことが本当なら、早く亜樹をなんとかしないと、世界はバランスを崩したままじゃねえかっ!」
リオネスは外見では一樹より年下である。しかも相手は同じ細身とはいえ、比較にならない長身。
頑張っても足止めなんてできるはずがなかった。
「一樹!」
振り切られたリオネスが名を呼ぶ。
寝台まで近付いたとき、いきなり一樹が崩れ落ちた。
「マルス!」
エルダがきょっとして近寄ろうとしたが、それより亜樹が働く方が早かった。
今まであれだけ苦しんでいたというのに、いきなり起き上がったのである。
呼吸はまだ荒かったし外見だって目茶苦茶だったが、その黄金の臓は強い意思を讃えていた。
「我が力の化身セシル、召喚!」
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『人使いが荒いね、亜樹は。年寄りは大事にしないといけないよ?』
「おちょくってる暇があったら一樹をなんとかしてくれよっ! できないなんて言ったら消滅させるからなっ!」
『またそういうことを言って。まあいいけどね。ガーターは無茶をする。さて。なんとかできるかな?』
そうきさやいてセシルは屈み込んだ。
そっと顔に手を翳す。
淡い光が注ぎ込まれ、やが
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「あれ、おれどうしてセシル?」
頭を振りながら立ち上がる。亜樹の意識があるときにセシルがいることに一樹は混乱する。
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