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第十六章 水の神殿
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「ふうん。これが一樹の水の神殿なんだ? 水中にでもあるのかと思っていたけど、中にあるとはね」
感心したように呟いているのはリオネスである。
透明な柱の中を流れていく水。
床を見ても硝子のようなものが広がっていて、その下をゆっくりと水が流れている。
そのとおり水の神殿だった。
どこを見てむ水、水、水。
これで空中にあるなんて嘘みたいだ。
白い雲が飛んでいるときより間近に見える窓の外には、もうひとつの神殿が浮いている。
これこそが本物の空中神殿、風神エルダの別名、風の神殿である。
それを教えてくれたのは一樹なのだが。
白い雲が飛んでいるときより間近に見える間に見える窓の外には、もうひとつのお神殿が浮かんでいる。
それこそが本物の空中祖段、風神エルダの別名、風の神殿である。
それを教えてくれたのは一樹なのだが。
空中神殿と水の神殿は対を成すように並んで建っているのだ。
それはふしぎな光景だった。
まさかこんな物が浮かんでいようとは。
翼を持つある意味で翼人であるエルダ神族のものも、こんなに高くは飛べない。
限界はあるのだ。
だから、想像さえしなかった。
白い雲の上になにがあるかなんて。
「確かにその名のとおり水の神殿だとは思うけど、どうして空中にあるわけ、一樹?」
力と記憶に目覚めたと、あのときにセシルが言っていたが、亜樹には自覚がないらしく、あのときになにをやったのかも覚えていなければ、悲鳴をあげたことすら忘れていた。
意識を取り戻した亜樹も、唖然としているようで、キョロキョロする様子があまりに可愛くてて、つい亜樹を見ていたリオネスが驚いたような声を出した。
それを知ってからは一樹の命令で、亜樹には逆らうなという暗黙の了解ができていた。
そのせいか亜樹も驚いているようだった。
「どうした、リオン?」
「いや。気のせいかな? 亜樹が」
「だから、亜樹がどうしたんだよ?」
■どうした、リオンリいや。気のせいかな?亜樹が・・・
・」
「だから、亜慣がどうしたんだよ?」
「ボクの眼の錯覚?亜様が金しに見える」
「え?」
難いて一種が振り返る。まだ神々は揃っていたから、彼らも難いたように亜種を見
亜掛は窓辺に注づいていて、その空をじっと見上げていた。
眩しいほどの光が注意の姿を染めている。
「あれ? 嘘だろう?」
一樹が何度も眼をこする。
瞬きもやってみる。
だがそこにいる亜樹は、眩しいほどの黄金の髪をしていた。
「光のせいか? ここは確かに太陽に近い位置だし」
言いながらじっと見つめている一樹だが、自らの異変に彼自身が気づいていない。
またリオネスもアレスも、驚いて亜樹を見ていたので、一樹の異変には気づいていなかったが。
「亜樹! ちょうとこっちこいよっ!」
「うん?」
呼ばれて振り向いた亜樹は、ぎょっとした顔になった。
「わっ。一樹? どうしたんだ、それ?」
「は? なにが?」
「だって髪と瞳の色。あれ? 周囲が水だから錯覚?」
今度は亜樹が眼をごしごしこすっている。
その様子に亜樹の金髪に驚いた者たちが、怪訝そうに一樹を見た。
一斉に唖然とする。
行動に移したのは育ての親の強みなのか、リオネスひとりだった。
「一樹。きみまでいつのまに髪を染めたの?」
「染めてないって! なんだよ、それ? 大体染める暇がどこにあったっていうんだ!」
「だって君、髪と瞳の色。周囲と同じだよ?」
「へ?」
慌てて一番近くにあった鏡を覗き込むと、顔立ちこそ転生したときに得た容貌だが、のは前世のものに買っていた。
これが周囲の反射であるわけがない。
「どうなってるんだ? これじゃあ昔のままじゃないかっ」
パニックを起こしそうになった一樹だが、はたっと気がついた。
「亜樹! おまえ、ちょっとこっちにこいって!」
振り向いて怒られて、亜樹が驚いた顔になった。
「は?」
「いいからっ!」
光に包まれていては判断できない。
今では逆光で輪郭すらはっきりしないのだから。
亜樹は驚いたようだが、言われた通り近付いてきた。
神殿の中央に位置するその姿をすべての者が凝視している。
「眼の錯貨でも光の反射でもなかったんだ?」
唾然と呟いたのはやはのリオネスだった。
光が反射しない位置に移動しても、亜樹の眩いほどの黄金の髪の色は変化しなかった。
どころか光の反射がなくなったせいか、どれほ眩いをしているのか、はっきりわかる綺麗な黄金だった。
これほど純粋な黄金の髪は見たことがないというのが、すべての者の感想である。
まるで光そのもの。
「どうかした?」
小首を傾げて顔を覗き込まれて、一樹は絶句していた。
「外見が変わったら、オレの顔も通うように見えるとか?」
「違ってみえるのはおれだけじゃないから、黙って鏡を覗き込め」
「なんだよ、それ?」
怪訝そうな顔をして亜樹は鏡を覗き込もうとしたが、位置が高すぎてそもそも映らなかった。
マルスは女性としては高かったし、そのマルスに合わせているのだから、ただでさえ小柄な亜樹が自分で覗き込めるわけがない。
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