弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

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第十四章 たったひとつの真実

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 叩かれた一樹は唖然としている。

「オレだってそう簡単に死ぬ気はないよ。あくまでも最悪の場合だ、最悪の。言い換えるならそこまでの覚悟があるって言いたいんだよ、オレは。勿論。そうなったらそうなったで仕方ないとは思うけど。約束は約束だから。おまえだってそうして世界を救ったんだろ? マルス?」

「でも、おれはおまえを失いたくない。もう二度と!」

「だったら協力してくれよ?」

「え?」

「最強なんだろ、水神マルス?」

「亜樹」

「オレが伝説通りの力を発揮できるなら、オレたちが協力すれば、大抵のことは切け抜けられるよ。週去にオレが死んだのは、おそらく転生するために選んだ手段だと思う。そのためにおまえを傷つけたのなら謝るよ。でも、それがなかったら今オしたちは出逢ってないだろ? 正気に返れよ、一樹。そうならないためにやるべきここと、できること。探せば沢山あるんじゃないのか? やる前から諦めるなんて、おまえらしくないよ」

 今度はあやすようにぽんぽんと肩を叩いて亜樹が笑った。

「できることを精一杯やって、それてもダメなら、そのときに諦めよう?」

「亜樹!」

「尤もオレに諦める気はないんだけど。おまえちょっと悲観的になりすぎ。それにもし」

「なんだよ?」

「もしもオレが約束を果たすために死んだとき、おまえにそれでも生きていろなんて残酷な遺言はしないよ。条件はおまえの自由だって言っただろ? 選択権はお前にあるって。諦めるのはそれからでも遅くないんじゃないか? 上手くいけばオレもお前も自由になるし」

 大きなため息をついて、一樹は亜樹を抱きしめた。
 
 人前だということも忘れて。

「ちょっと力抜けよっ!!痛いし苦しいってば」

「ひとりで死ぬなよ。誓えるな?」

「うん」

 それから亜樹を解放して、一樹は、エルダを振り向いた。

「条件を呑むよ、エルダ。その代わり今回の危機を救ったら、おれの行動に一々指図するなよ。神殿にはいるけどなにをしようとおれの自由だ。神殿にいるんだから、取引の条件は守っているからな」

「もうダメかと思った」

「なんだよ、その反応。おまえらしくない」

 苦笑した一樹にエルダは呆れたように問いかけた。

「どれだけ冷静さを欠いていたか自覚がないのか、マルス? 最悪、封じられた力が暴走したらどうしようか」

「ああ。それなら。亜樹がいるかぎり暴走しないよ」

「なぜだ?」

「こいつ、無意識におれの力が暴走しないように制御してるから」

 信じられないと凝視されて亜樹は困ってしまった。

「おれが守護聖獣だったことは、炎の精霊から聞いてるはずだろ?」

「一応」

「じゃあそのときにおれが大勢の人間を殺したことは?」

 これは知らなかった神々が、唖然として一樹を見た。

 やっぱり言わなかったかと一樹は肩を震わせた。
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