弟妹たちよ、おれは今前世からの愛する人を手に入れて幸せに生きている〜おれに頼らないでお前たちで努力して生きてくれ〜

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第十四章 たったひとつの真実

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 数えきれないほどたくさんの人が死んで、世界の大部分が砂漠になって。

 もしかした海だって干上がってしまうかもしれない。

 それはこの世界の人間に死んでくれっていうのと同じことだ。

 オレさえ。

「亜樹? なに考えてる?」

「あれ? 眠ってたんじゃないのか?」

 驚いて振り向くと一樹は眠そうに眼をこすっていた。

「今目が覚めた。なんとなく不安になって。なに考えてたんだ? どうせ思い詰めていたんだろ? なんとなくだけどそんな気がする」

「違うって。セシルのこと考えてただけだよ」

 笑って言うと一樹は疑わしそうな顔はしてたけど、それ以上追求してはこなかった。

「夜が明けるな、一樹」

 窓の外を見ると太陽が昇るところだった。

「そうだな。すぐにでもやってくるだろうな、災難が」

「前世の話とはいえ兄弟相手にきついぞ、その言葉」

「だって本音だから」

 肩を竦める一樹にちょっとため息をついた。

「ほんと正体を言われて納得するくらい、一樹って水そのものだな」

「そうか?」

「気づいてないのか?、気まぐれて気分でおまけに一度こうと決めたら引かない頑固者」

「おい。亜樹。それ褒めてないっ!」

「でも水ってそういうものだろ? 天気がころころ変わるのと同じだよ。水はすべての源なんだから」

「そうだけど」

 なんだか一樹は憮然としてたけど、それ以上はなにも言わなかった。

 今は間が悪いとでも思ったんだろうか?

 すこし笑えるな。

「おまえのほうこそ光そのものだよ」

「それはセシルだろ?」

「亜樹もだよ」

 断言されてちょっと困った。

 一樹の眼には亜樹の個性はそう映っているということ?

 なんだかちょっと照れくさい。

 でも、光、か。

 なんだろ?

 心の何処かでなにかが引っかかる。なにが引っかかるのかわからないけど。

「どうするかなぁ」

 無意識らしい一樹の独自に苦い気分で彼を見た。




 一樹が亜樹にすべてを打ち明けたことは、朝食の席で一樹本人がエルシアたちに打ち明けていた。

 彼の育ての親たちは、なんだか知らないけど満足そうな顔してたけど。

「それでどうするか決めたのかい、一樹?」

「いや。正直なところ、八方塞がりっていうのが本音だな。どう考えても今のおれにはできるとは思えない。でも、正直に言ったところでエルダたちは退かないだろうし。さすがに無視するには事態が大きすぎる。世界規模の水不足じゃあな」

 エルシアの問いにそう答えた一樹に、自分なりに文献を調べて水について知った。

 リオネスが割り込んだ。

「水神としての君の意見はどうなの? 世界規模の水不足。言葉で言えば一言で済むけど、実際のところ、どういう意味になるのかな? ただ人間が飲み水とか、生活に関する水に困るだけ? それとももっと深刻なのかな?」

 この問いに一樹は小首を傾げ、考えながら答えた。

「実際のところは神殿に戻って神力で調査しないことには、おれにも詳しいことは言えない。エルダたちから聞いただけだからな。ただあれだけ熱心におれを呼び戻すってことは、ただの水不足じゃないような気はする。まあ人間が飲み水とか生活に使う水を制限しないといけない事態っていうのも、かなり厄介ではあるけど。その上をいく可能性だって否定できないし」

「その上をいく可能性?」

「ひとつ。今リオネスが言ったように人間だけが困るだけの水不足という可能性。ふたつ動植物を含めてかなり大規模で深刻な水不足。ただしこれも生きていくために必要な量に対してのものな。みっつ。世界が地殻変動を起こすほどの、取り返しのつかない水不足」

「一言で水不足って言ってもいろいろいろあるんだね」

 気が重いといったように呟いたのは、エルシアだった。

 まあ彼らは公国の守護をしているから、水不足が深刻になってきたら、彼らにも関わってくる問題だからしかたないか。

「大小様々って感じだけど」

「確かにあのときエルダは大規模な水不足としか言わなかったからね。その一言だけならのどちらの意味にも取れるよ、兄さん」

「そうだね。リーンに知らせたら青くなるだろうね」

「言葉の意味を問うてから答えるっていう方法もあるよね」

 意外と言えば意外。

 当たり前と言えば当たり前の指摘をしたのはリオネスだった。

 一樹までびっくりしてリオネスを見てる。

「なに? みんな気づいてなかったの? あのとき、事態を告げただけで詳しい説明をしなかったんだから、一樹に帰還を強いて、しかもいくら水神マルスとはいえ、かなり強大な力を発動しなければならない事態を飲めというのなら、その意味を確かめる権利くらいあるんじゃないの? でなかったら言われて戻ってみたら大したことのない事態だったって可能性だってあるんだよ? あの様子だと水神マルスを、自分たちの長を取り戻すためなら、なにをしても不思議はないし」

「大もだ。気づいてなかったおれがどうかしてたよ」

 初めて隠さずに展開される会話に、しばらく驚いていたけど、気になったので訊いてみた。
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